入院経験者の多くは病院ご飯についての記事を書いている事が多い…中の人に感謝を伝える者もあれば、感情に任せその不味さを糾弾する者もいる。
私の場合は「(自称)病院ご飯評論家」なので良いところも悪いところも両方書くようにしている。
今回の入院…あまりにも暇すぎて色々なことを考えていた。
そのうちの一つが「どうして病院ご飯はマズくなってしまうのか?」ということ。
マズいと文句を言うだけなら簡単だけど、一応病院ご飯を作っていた事がある立場からすると「何をどうするとこんなにマズい食事が作れるのだろうか?」とその理由を考えてみたくなる。
何事にも理由があるのならば、病院ご飯がマズい理由だってあるはずだ。
考えられる理由は
- 味が薄いor無い
- 同じ味付けの物が多い
- メニューバリエーションが少ない
- 作る人の問題
- 食材セレクトや処理の問題
- 全体の組み合わせ
- 精神的に満たされない
- 体調の関係
- 調理法や工程の問題
- 食事をする環境
- 温度の問題
これらの要因の詳細をこれから書いていこうと思うけど、かなり長くなるので覚悟して欲しい…。
「味が薄いor無い」
病院ご飯がマズいと言われる原因の第1位…病院ご飯の塩分量は通常食でだいたい1日あたり約7g程度が相場、高血圧などで塩分制限があるともっと少なくなります、今回入院していた病院では逆に食塩を追加されている人もいました(治療上の理由で)。
普段から濃いめの味付けの食事を好む人には通常食の塩分量でも味が薄いと感じるかもしれない。
私の場合、市販の冷凍食品やレトルトでもしょっぱいと感じることがあるので特に味が薄いとか無いと感じることはほとんどありませんでした。
「同じ味付けの物が多い」
今回入院して感じたことは病院ご飯って和食とかそれに準ずる物が多い。
となると、どうしても醤油味などに偏る…病院ご飯だとどうしても辛い系のスパイスは刺激物だから使えないし、中華だからといって五香粉をふんだんに使うのも無理な話。
今回入院した病院はやたら白身魚が出てくるところだったので余計醤油に偏っていた。
「メニューバリエーションが少ない」
今回入院したところは3週間分で組まれた献立が2パターン存在し、それを交互に繰り返して使用している。
ここまでひどくなくてもメニューの使い回しはどこの病院でも日常茶飯事なので、似たような物が一定期間で出てくることは多い。
そもそも急性期病院の場合、長期滞在する方が珍しいのでそういう人のことはあまり考慮されていない…そして、食に興味関心の薄い人なら特に気にならないと思われる。
私の入院していた病院では週3回、昼・夜のメインのおかずが選べたが、どっちも微妙な場合は消去法で選ばざるおえなかった。
「作る人の問題」
実際に調理する人の腕云々もあるかもしれないけど、メニュー考案者の責任の方が遥かに大きい。
「栄養学に精通している≠料理に精通している」なので、病院ご飯に限らず給食ではメシマズもビックリするレベルの「トンデモ飯」が爆誕してしまうことは多々ある。
「食材のセレクトや処理の問題」
必要最低限の下処理がきちんと行われていない、逆に必要ない処理までやっちゃう。
冷凍品や加工品の使用頻度も多い、野菜類も基本的に必要以上に加熱されていたり素材を殺しているレベル…和食が多い割には出汁も取り方が適当なのか?それとも粉末出汁でも使ってるのか?変な臭いがしていた。
「全体の組み合わせ」
栄養価の事しか考えていないのか?病院ご飯でも「米飯+牛乳」の組み合わせは普通に出てくる(特に朝に出てきがち)…味の組み合わせ、色彩バランス、食感のバランスを考慮するという感覚は欠落していると言ってもよい。
単品ごとではそこまで不味くない物でも、組み合わせた時の相性が悪いとマズくなってしまう。
「精神的に満たされない」
マズい食事は心が満たされない、とにかく栄養価の事しか考えられていないので「生身の人間が食べている」ということを忘れているのかも?マズい食事は精神衛生上にも良くない。
通常食なら1食ごとの栄養価ではなく、1日のトータルバランスで考えてもいいのでは?と思う…普段の食事で1食毎にきっちり考えないでしょう、某食事管理アプリでも「1日、あるいは1週間のトータルで調整取れていればよし」ですし。
「体調の関係」
元気がない、あるいは運動量の低下でお腹が空きにくくなっている…あるいはストレスも食欲の低下につながる。
「調理法や工程の問題」
3桁人数分の食事を一気に作るので美味しくない、この量で作って美味しいのは「カレー・豚汁・芋煮」くらい。
大量に調理するための設備(スチームオーブン)などで効率だけを重視して調理するから必然的に味が落ちる…やたら煮魚が出てきたが、家で作るような煮魚とは全くの別物でマズい上に魚臭かった。
卵焼きも私の口には合わなかった…卵焼きなのに”す”が入っていて食感が気持ち悪かった。
「食事をする環境」
デイルームや食堂のある病院もあると、寝る場所と食べる場所は別にできるけど…例の病院はそんな気の利いた設備なかったのでずっとベッドの上だったので、なんだか惨めな気持ちになりました。
でも、環境が整っててもマズいもんはマズい。
「温度の問題」
よほど設備投資ケチなところでなければ今は保温・保冷の出来る配膳ワゴンを使っていますが…温度と味はあまり関連性はあるのかな?ないのかな?
と…これらの要因が複数絡み合って、その結果「病院ご飯はマズい」という現象が起こるものと思われる。
では「ご飯がおいしい病院」って存在するの?と疑問に思った人もいるのではないだろうか?
これはあくまでも、聞いた話だけど…「回復期リハビリテーション病院」と呼ばれるところや、病院とは違いますが「老人保健施設」は比較的食事が美味しいところが多いと言われています(どちらも急性期病院と比べて比較的長期間滞在することを前提とした施設です)。
あとは、よく知られているのは産科(ただし、私立の小規模病院もしくは単科診療所に限る)。
ここは私も行ったことがないのであくまでも想像の域ですが…
- ベッド数が少ない…入院してる人が少ないので凝った料理が作りやすい
- 費用が高い…自費診療なので取ろうと思えばいくらでも取れる
- 個人経営…院長の裁量でなんでもやりやすい
- 単科でやってる…基本的に出産が目的で入院する人がほとんど
- 健康面で問題の無い人がほとんど…「食事の質の高さや設備の豪華さ」を売りにしている産院は健康面の管理が異様に厳しく、少しでも基準を外れるとすぐに追い出される事が多い(らしい)
- 病院によっては本当に料理人がいたところがあったとか?
- 医療面以外の「付加価値」を売りにしている
とかだと思います。
実際に入院していた時に1ヶ月くらい産婦人科病棟(他に乳腺外科と整形外科で生物学上の女性はここに入れられる)にいたんですが、中の人が「うちは出産の入院でもTomokoさんが食べてるのと同じ食事(ご飯の量が増えるくらい)が出る」とか「公立の病院だと設備面での付加価値を高める事もできない」と話していて、だからうちは開店休業…とこぼしていました。
今回入院していたところに限らず、大きい病院だと設備面や食事面での付加価値をつける事は難しいでしょうね…歯を抜いた時の病院は「お祝い特別メニュー」とかあったような気がするけど、永山の例の病院ではそんなもの無さそうだし…そもそもここは結構ハイリスクな人や上記のような「キラキラ産院」の厳しすぎる基準から外れた人たちが飛ばされて来るようなケースが多いようなので。
入院中に書いたこの記事に出てくる「近隣の病院」も単科の産婦人科ではないけれど、ベッド数も私が入院していた所の3分の1程度と結構こじんまりした規模で、しかも私立なのでわりかし自由に出来るんでしょうね…しかもこちらも全面建て替えされてとても綺麗だし(建て替え前はどこぞの永山の病院よりも悲惨でした)。
ちなみに私はひどい腹痛と下痢でココの救急外来を受診した時、カルテを外国語で記入するおじいちゃん先生に謎の”黄色い点滴”を打たれた事があります(ここの看護師さんは左腕の手首~肘の間からルート確保した数少ない人です)。
でも、ここ…昔から住んでる人の間では「あそこの産婦人科は元々堕胎専門で設立された」とかあまりいい話聞かないんだよな。
今は違うのかもしれないけど。
結論 「急性期病院でご飯が美味しいのはかなり稀、急性期病院に入院する時は病院ご飯に期待しないこと」