「たとえ外国人には奇異に見えようとも、

生きている都市には固有の伝統が存在する。

 

それを無視して都市を切り売りすることはできない。

(中略)これがわれわれの街なのだ。

 

(中略)これがわれわれの伝統であり、われわれの街なのだ。

われわれは長い間共産主義者の独裁のもとで生きてきたが、

 

実業家の独裁のもとで暮らすようになっても

生活はいっこうに良くならない。

 

彼らは自分たちがいる国のことなど

まったく気にしていないのだ」

グレゴリー・ゴーリン

 

 

 

「真理を広めなければならない。経済学の法則は工学の法則と同じである。

ある一連の法則があらゆるところに当てはまるのだ」

ローレンス・サマーズ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

経済プログラムは一般のロシア人に過酷な影響をもたらし

そのプロセスは明らかに不正まみれだったため

 

 

エリツィンの支持率は一桁台にまで落ち込んでいたことが、

新自由主義革命者たちの唯一の懸念だった。

 

 

彼が失脚して、反憲法的な政治状況のもとで分配された資産の多くを

再国有化すべきとの主張を、恐れていた。

 

 

1994年12月エリツィンは、サッチャーと同じことを始めた、戦争である。

 

オレグ・ロボフ安全保障会議書記

「大統領の支持率を上げるために、

ちょっとした戦争をして勝つ必要がある」

 

 

チェチェンの独立運動を部分的に鎮圧、

すでに放棄された大統領官邸を占拠、エリツィンは勝利を宣言する。

 

 

 

しかし1996年の大統領選挙でもエリツィンの支持率は低迷し続け、

顧問たちは、選挙の中止を考えたほどだった。

 

 

Vsevolod Vilchek ,"Ultimatum on Bended Knees ,"

Moscow News ,May 2,1996

 

 

アナトリー・チュバイス(民営化担当大臣、サックス曰く「自由の戦士」)

「社会に民主主義を根付かせるためには、独裁的権力が必要だ」

 

 

Passell ,"Dr .Jeffrey Sachs , Shock Therapist."

http://www.acamedia.info/politics/ukraine/jeffrey_sachs/What_I_did_in_Russia.pdf

 

 

David Hoffman ,"Yeltsin's 'Ruthless' Bureaucrat ,"

Washington Post ,November 22,1996.

 

The Oligarchs: Wealth And Power In The New Russia (English Edition)

 

 

けっきょく選挙は実施され、オリガルヒから受けた

約1億ドルの資金(合法的な金額の33倍)と

 

 

オリガルヒ傘下のテレビ局で対立候補より800回も多く報道されたおかげで、

エリツィンは、ロシア大統領再選を果たす。

 

 

Svetlana P.Glinkina et al ,"Crime and Corruption ,"

 in Klein and Pomer ,eds,The New Russia ,241

 

Russian and Post-Soviet Organized Crime - 1st Edition - Mark ...

 

 

Matt Bivens and Jonas Bernstein ,"The Russia You Never Met ,"

Demokratizatsiya :The Journal of Psot-Soviet Democracy 6,no.4

(Fall 1998);630,www.demokratizatsiya.org.

https://demokratizatsiya.pub/archives/06-4_bivens.pdf

 

Naomi Klein - Doctrina Socului | PDF

 

 

 

権力の確保ができたので、レーニンが「管制高地」(経済のもっとも重要な部分)と

呼んだ、もっともお金になる部分、国営企業の売却に着手する。

 

 

 

フランスのトタル社と同規模のある石油企業は、

その40%が、8800万ドルで売却された。

トタル社の2006年度売上高は、1930億ドル以上

 

 

世界のニッケル生産高の5分の1を生産するノリリスク・ニッケル社は

1億7000万ドルで売却されたが

その後間もなく年間収益は、15億ドルに

 

 

 

 

 

 

 

 

クウェートより多くの石油を生産する巨大石油企業ユコスは

3億900万ドルで売却され、現在の収益は年間30億ドルを超える。

(ショック・ドクトリン執筆時)

 

 

 

ユコス事件のためにベルギーとフランスで差し押さえられるロシア ...

 

 
 

 

清水昭男/狩谷ゆきひで マンガ 世界屈指の石油会社ユコス

 

 

 

 

 

石油大手シダンコは51%が1億3000万ドルで売却されたが、

わずが2年後には、その株式価値が国際市場で28億ドルと評価される。

 

 

https://oilgas-info.jogmec.go.jp/_res/projects/default_project/_project_/pdf/0/82/200006_059a.pdf

(ロシア破産法の現状ーシダンコの倒産手続きを素材としてー)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大規模な兵器工場は、300万ドルで売却され、

コロラド州アスペンの別荘価格にほぼ匹敵する。(当時)

 

 

 

 

Bivens and Bernstein ,"The Russia You Never Met ," 627-28 ; Total ,Factbook 1998-2006 ,April 2006 ,page,2,www.total.com ; The profit figure is for 2000 

The Russia You Never Met - Demokratizatsiya

 

 

Marshall I.Gordman , The Piratization of Russia : Russian Reform Goes Away

(New York : Routledge ,2003),120

ロシアの民営化:歪められた改革<br>The Piratization of Russia : Russian Reform Goes Awry

 

[マーシャル・I.ゴールドマン『強奪されたロシア経済』

鈴木博信訳 (日本放送出版協会)、2003]

 

強奪されたロシア経済

 

"Yukos Offiers 12.5 Percent Stake against Debts to State-Owned Former Unit,"

Associated Press ,June 5,2006

 

28億ドルという数字は、1997年にブリティッシュ・ペトロリアム社が

5億7100万ドルでシダンコ社の10%の株を取得したことに基づいて、

51%が28億ドル強に相当すると計算したもの。

 

Freeland ,Sale of the Century ,183

 

 

 

 

Stanislav Lunev ,"Russia Organized Crime Spreads Beyond Russia's Borders ,"

Prizm 3, no.8(May 30,1997)

https://web.archive.org/web/20070930185517/http://www.jamestown.org/publications_details.php?search=1&volume_id=4&issue_id=199&article_id=2330

 

 

 

ロシアの国家資産が本来の何分の一という値段で競売に

かけられたが、それは公的資金で購入された。

 

 

マット・ビジェンズ、ジョナス・バーンスタイン記者『モスクワ・タイムズ』

 

「ごく少数の選ばれた者だけが、ロシアの国家が

開発した油田を無料で自分のものにした」

 

「すべては政府の一部門が、別の部門に

金を払うという大がかりな詐欺」

 

 

国営企業を売る政治家とそれを買う実業家が協力し合った。

 

エリツィン政権の閣僚数人が、国営銀行や国庫に入るはずだった巨額の公的資金を

オリガルヒが即座に法人化した民間銀行に移した。

 

メナテプ銀行 ミハイル・ホドルスキー経営

 

 

オネクシム銀行 ウラジミール・ポターニン経営

 

 

 

国は、これらの銀行と油田や炭鉱を

民営化するための競売を行う契約を結ぶ。

 

 

競売は、銀行が取り仕切り、銀行自身も入札に参加、オリガルヒが

所有する銀行が、国家資産の新しい所有者になった。

 

 

国営銀行の株式購入にあてた資産は、エリツィン政権の閣僚たちが

そこに預けた公金と言われている。

 

 

ロシア国民は、自分たちの国を略奪されるためのお金を

自ら提供したのかもしれない。

 

Bivens and Bernstein ,"The Russia You Never Met ," 629

 

 

ロシアの「若き改革者」

ロシアの共産主義者は、ソ連の崩壊を決めた時、「権力と財産を交換した」

(実際には、ロシアとイスラエルの二重国籍者とハーバードの連中)

 

Reddaway and Glinski , The Tragedy of Russia's Reforms ,254

 

 

エリツィンの親族も巨万の富を手にし、彼の子どもや配偶者は

民営化された大企業の幹部のポストに就任した。

 

 

 

オリガルヒは、ロシアのだいたいの国家資産を盗んで、

新しい会社を優良多国籍企業に向けて公開、すぐさま買い上げられる。

 

 

1997年ロイヤル・ダッチ・シュルとブリティッシュ・ペトロリアム(BP)は

二大石油企業ガスプロムとシダンコと提携。

 

Freeland ,Sale of the Century,299

 

 

 

 

 

ロシア株:ガスプロム『GAZP』の銘柄分析 | 全世界まるっと投資

 

 

ロシア株:ガスプロム『GAZP』の銘柄分析 | 全世界まるっと投資

 

 

 

 

 

 

 

ウェイン・メリー(1990年~94年モスクワ米大使館、主任政治アナリスト)

 

「米政府は、政治より経済を優先すべきだと考えていました。

価格自由化や国営企業の民営化は、

何にも規制されない自由な資本主義の創出を優先し、

 

 

法治国家や市民社会、議会制民主主義などは、その結果として

自然に発達するように望むというのが基本的なスタンスだった。

 

(中略)

不幸なことに、この選択によって民意を無視し、

政府の政策を強引に進めることになってしまったのです」

 

Return of Czar

 

 

世界を不幸にしたグローバリズムの正体

 

P209~P211より抜粋

 

スティグリッツ

IMFの戦略は機能せず、1989年以後のロシアのGDPは

年ごとに縮小するばかりだった。

 

 

移行による一時的な景気後退は10年以上もつづくことになった。

底はまったく見えなかった、

 

 

GDPの減少は、ロシアが第二次世界大戦でこうむった打撃より深刻だった。

1940年から46年にかけてのソ連の工業生産高の落ち込みは、24%だった。

 

 

1990年から99年にかけての落ち込みは、およそ60%におよび、

GDPの落ち込み(54%)より深刻だった。

 

 

安定化、自由化、民営化計画は、言うまでもなく経済成長を目的とした計画ではない

(略)ところが、それは衰退の前提条件となってしまった。

 

 

投資がなされなかったばかりではなく、貯蓄はインフレによって無価値となり、

民営化による収益は大半が横領されて資本が枯渇した。

 

 

資本市場の解放をともなう民営化は、

富の創出ばかりでなく、資産の略奪をももたらした。 理の当然だった。

 

 

オリガルヒ(新興財閥)は、数十億ドルもの財力を

背景として政治的影響力を行使できるため

 

 

わずかばかりの費用をかけて、

当然のように資産を国外に移そうとした。

 

 

ロシアに資産をとどめておくのは、

資産を深刻な不況下にある国内に投資し

危険をおかすことにほかならなかったからだ。

 

 

収益が落ち込むばかりではなく

次期政権が資産を凍結する危険もある。

 

 

さらに民営化の過程でおかした自らの「違法」については

なんの言い訳もできなかった。

 

 

民営化のレースで勝者になるほど抜け目のない者は、

にわか景気にわくアメリカの株式市場に投資をしたり、

 

 

国外の秘密口座という安全な保管場所に

預けたりするだけの抜け目のなさも備えていた。

(略)

数十億ドルが国外に流出したのは当然だった。

 

(略)

もちろん民営化のプロセス、ことに貴重な国有財産を

縁故者に与えるようなプロセスに目を光らせる者がいなければ、

迅速に民営化を進めることは容易だったろう。

 

 

しかも、政府はそうすることで莫大な利益を手にすることができる。

現金収入もしくは政治献金のかたちでリベートがころげこむからだ。

 

(略)

ロシアのGDPと投資の弱さは、国家財政の弱さを反映していた。

ロシア政府は多重債務をかかえていた。

 

 

予算の帳尻を合わせるのが困難だったにもかかわらず、

ロシア政府はアメリカと世界銀行およびIMFから

 

 

すみやかに民営化を進めるよう圧力をかけられたため。

低額で国有資産を売却したが、このとき税制はまだ十分に機能していなかった。

 

 

ロシア政府がつくりだしたオリガルヒや実業家階級は

大きな財力をもつようになっていたが、

 

 

自己の資産に対する税金はほんのしるしほどしか払わず、

しかもその税額は他のどの国で課せられるよりも少なかった。

 

(略)

ロシアには豊富な天然資源があったにもかかわらず、政府は貧しかった。

 

政府は貴重な国家資産を売却したが、老齢者に年金を支払ったり

貧しい者に福祉の恩恵を施したりすることができなかった。

 

政府はIMFから数十億ドルの資金援助を受け、

そのために借入額はふくらむ一方だったが、

 

 

政府から大いに優遇されていたオリガルヒは

国外に数十億ドルもの蓄財をしていた。

 

 

IMFはロシア政府にたいし、資本市場を自由化し、

外国資本の流入に門戸を開くように進言した。

 

(略)

だが実際にはそれは、ロシアからの資金の流出をうながす

一方通行の門戸となったのである。

 

 

 

書き出していると、スティグリッツも結構おかしなことを言っている。

 

続く

 

(P327~P330 抜粋・要約・脚色)

 

 

新しい階級闘争 大都市エリートから民主主義を守る/マイケル・リンド/施光恒/寺下滝郎

視点は、リンドから。