第21回「おいしさ、いつまでも」-冷凍食品と賞味期限
昨今、話題になることが多い「冷凍食品」と「賞味期限」。冷凍は食品を長期保存する代表的な方法ですが、冷凍食品にも賞味期限があることをご存知でしょうか?
冷凍食品は0℃以下の冷凍庫に入れている限り劣化しないように思われがちですが、凍った状態であっても徐々に劣化が進みます。
劣化の速度は温度に依存します。0℃以下であっても比較的高めの温度に晒されると品質が低下します。逆に、-18℃以下が維持されていれば約1年間は品質が保持されるとされています[1]。
余談ですが、このときの基準温度が-18℃と中途半端な値なのは、冷凍食品に関する初期の研究が華氏の0度を基準に行われたためで、華氏0度が約-18℃(摂氏-18度)に相当することから来ているそうです。
さらに余談ですが、日本で広く使われている摂氏・華氏という呼び方は考案者名の中国語表記から来ています。中国語では摂氏はCelsius氏(摂爾修斯氏)、華氏はFahrenheit氏(華倫海特氏)と表記するため、その頭文字をとっています。
さて、上記は既に製造された冷凍食品の保存温度についてですが、冷凍食品の製造時にも温度は重要な要素です。冷凍時の温度変化が急速か緩慢かによって解凍後の食品の品質が大きく変わります。
食品が凍るとき、食品の中の水分は徐々に集まって大きな結晶になろうとする性質があります。冷凍食品の製造時にこのような水分の移動が起こってしまうと細胞内で大きな氷の結晶ができて食品の細胞を傷つけてしまいます。そして、傷ついた細胞からは解凍時に水分がドリップとなって流れ出てしまいます。
このような水分の移動と氷結晶の成長は0度より少し下くらいの温度帯の時に顕著に発生します。この温度帯は最大氷結晶生成帯と呼ばれ、その温度範囲については諸説がありますが、例えば、0℃~-5℃や、-2℃~-7℃など、-10℃までの温度とされています。逆に-10℃よりも低い温度では温度が下がるほど水分の移動や氷結晶の成長は起こりにくくなります。
つまり、この最大氷結晶生成帯を短時間で越えてしまう急速冷凍を行えば冷凍時の問題の発生を抑えることができます。逆にこの温度帯が長く維持される緩慢冷凍を行えば水分移動の問題が出てきます。「一旦解凍した冷凍食品の再凍結は避けること」と言われるのは、家庭用の一般の冷凍庫では能力的に緩慢冷凍しか行えないことが理由です。
冷凍食品を製造するための業務用の冷凍庫は非常に温度の低い冷気を大量に吹き付けて急速に冷やすものが一般的ですが、新しい方法としては真空パックした食品を-110℃前後の液体アルコールに浸けて急速に熱を奪う方法があります。人間が100度のお湯(液体)には入れないが100度のサウナ(気体)には入れるのと同じで、同じ温度でも液体の方が気体よりも急速に熱交換が進むことを利用した方法です。
最近では過冷却という物理現象を利用して瞬間的に水分を氷結晶化させ、大きな氷結晶の成長を抑える方法を利用する冷凍装置も開発されています。家庭用冷蔵庫にも過冷却を利用した冷凍ができることを謳うものが出てきています[2]。
さて、冷凍庫の中に入っているものといえば、冷凍食品の他にアイスクリームもありますね。ここまでは冷凍食品の賞味期限に関して話してきましたが、アイスクリームにはなんと賞味期限がないのだそうですね。
アイスクリームは冷凍食品よりも原料が単純で安定しているので、温度さえ-18℃以下に保たれていればいつまでも美味しさが保持されるのだそうです。そのため省令においても賞味期限の表示は必要ないとされているそうです[3]。
アイスクリームの食感は、中に含まれたたくさんの小さな気泡(空気)が重要な役割を果たしているそうです[4]。一度溶けて空気が抜けてしまうと再凍結しても食感は元には戻りません。つまりおいしさが維持されるのは低温が維持されたとき。アイスクリームの場合も温度管理は必要ですね。
<関連リンク等>
[1] 社団法人日本冷凍食品協会 冷凍食品Q&A
http://www.reishokukyo.or.jp/del-sft/qanda/qa_05.html
[2] 三菱電機「瞬冷凍」
http://www.mitsubishielectric.co.jp/home/reizouko/series/feature1.html
[3] 日本アイスクリーム協会 アイスクリームの賞味期限表示
http://www.icecream.or.jp/data/basic10.html
[4] 日本アイスクリーム協会 アイスクリームのおいしさの秘密
http://www.icecream.or.jp/data/basic03.html
○ 関連キーワード:過冷却、氷温冷蔵、チルド
冷凍食品は0℃以下の冷凍庫に入れている限り劣化しないように思われがちですが、凍った状態であっても徐々に劣化が進みます。
劣化の速度は温度に依存します。0℃以下であっても比較的高めの温度に晒されると品質が低下します。逆に、-18℃以下が維持されていれば約1年間は品質が保持されるとされています[1]。
余談ですが、このときの基準温度が-18℃と中途半端な値なのは、冷凍食品に関する初期の研究が華氏の0度を基準に行われたためで、華氏0度が約-18℃(摂氏-18度)に相当することから来ているそうです。
さらに余談ですが、日本で広く使われている摂氏・華氏という呼び方は考案者名の中国語表記から来ています。中国語では摂氏はCelsius氏(摂爾修斯氏)、華氏はFahrenheit氏(華倫海特氏)と表記するため、その頭文字をとっています。
さて、上記は既に製造された冷凍食品の保存温度についてですが、冷凍食品の製造時にも温度は重要な要素です。冷凍時の温度変化が急速か緩慢かによって解凍後の食品の品質が大きく変わります。
食品が凍るとき、食品の中の水分は徐々に集まって大きな結晶になろうとする性質があります。冷凍食品の製造時にこのような水分の移動が起こってしまうと細胞内で大きな氷の結晶ができて食品の細胞を傷つけてしまいます。そして、傷ついた細胞からは解凍時に水分がドリップとなって流れ出てしまいます。
このような水分の移動と氷結晶の成長は0度より少し下くらいの温度帯の時に顕著に発生します。この温度帯は最大氷結晶生成帯と呼ばれ、その温度範囲については諸説がありますが、例えば、0℃~-5℃や、-2℃~-7℃など、-10℃までの温度とされています。逆に-10℃よりも低い温度では温度が下がるほど水分の移動や氷結晶の成長は起こりにくくなります。
つまり、この最大氷結晶生成帯を短時間で越えてしまう急速冷凍を行えば冷凍時の問題の発生を抑えることができます。逆にこの温度帯が長く維持される緩慢冷凍を行えば水分移動の問題が出てきます。「一旦解凍した冷凍食品の再凍結は避けること」と言われるのは、家庭用の一般の冷凍庫では能力的に緩慢冷凍しか行えないことが理由です。
冷凍食品を製造するための業務用の冷凍庫は非常に温度の低い冷気を大量に吹き付けて急速に冷やすものが一般的ですが、新しい方法としては真空パックした食品を-110℃前後の液体アルコールに浸けて急速に熱を奪う方法があります。人間が100度のお湯(液体)には入れないが100度のサウナ(気体)には入れるのと同じで、同じ温度でも液体の方が気体よりも急速に熱交換が進むことを利用した方法です。
最近では過冷却という物理現象を利用して瞬間的に水分を氷結晶化させ、大きな氷結晶の成長を抑える方法を利用する冷凍装置も開発されています。家庭用冷蔵庫にも過冷却を利用した冷凍ができることを謳うものが出てきています[2]。
さて、冷凍庫の中に入っているものといえば、冷凍食品の他にアイスクリームもありますね。ここまでは冷凍食品の賞味期限に関して話してきましたが、アイスクリームにはなんと賞味期限がないのだそうですね。
アイスクリームは冷凍食品よりも原料が単純で安定しているので、温度さえ-18℃以下に保たれていればいつまでも美味しさが保持されるのだそうです。そのため省令においても賞味期限の表示は必要ないとされているそうです[3]。
アイスクリームの食感は、中に含まれたたくさんの小さな気泡(空気)が重要な役割を果たしているそうです[4]。一度溶けて空気が抜けてしまうと再凍結しても食感は元には戻りません。つまりおいしさが維持されるのは低温が維持されたとき。アイスクリームの場合も温度管理は必要ですね。
<関連リンク等>
[1] 社団法人日本冷凍食品協会 冷凍食品Q&A
http://www.reishokukyo.or.jp/del-sft/qanda/qa_05.html
[2] 三菱電機「瞬冷凍」
http://www.mitsubishielectric.co.jp/home/reizouko/series/feature1.html
[3] 日本アイスクリーム協会 アイスクリームの賞味期限表示
http://www.icecream.or.jp/data/basic10.html
[4] 日本アイスクリーム協会 アイスクリームのおいしさの秘密
http://www.icecream.or.jp/data/basic03.html
○ 関連キーワード:過冷却、氷温冷蔵、チルド