クレイン・テクノロジー|技術をもっと、分かりやすく。|畑谷成郎 -7ページ目

第19回「飲むトウモロコシ」-澱粉から果糖を造る

最近、トウモロコシ価格が高騰して話題になりましたね。トウモロコシは家畜の主要な飼料なので、肉類の値上げに結びつくことをご存知の方も多いと思います。


さて、そのトウモロコシ。われわれ人間も、結構な量を「飲んで」いることにお気づきだったでしょうか?


清涼飲料水や炭酸飲料の成分表示で「果糖ぶどう糖液糖」というのをよく見かけると思います。どこかに「・」とか「、」を忘れたみたいな不思議な名称ですが、日本農林規格(JAS)で定められた正式名称です。


「果糖ぶどう糖液糖」は、澱粉(でんぷん)から造られる液糖(シロップ)です。戦後の日本は食糧難への対応からイモ類の増産体制が整いましたが、砂糖は輸入に頼っていました。そこで、余ったイモ類の澱粉からシロップを造る技術が強く求められ盛んに研究されました。


1960年代後半に通産省工業技術院(当時)で開発された技術により[1,2]、複数の酵素を組み合わせて澱粉からぶどう糖と果糖のシロップが造れるようになりました。ぶどう糖を果糖へ変換するプロセスを化学の用語で「異性化」ということから、造られたシロップは「異性化糖」と呼ばれます。


ちなみにJASでは糖の比率によって異性化糖の名称が変わります。果糖の比率が50%未満のものを「ぶどう糖果糖液糖」、50%以上90%未満のものを「果糖ぶどう糖液糖」と呼び、多いほうを先に書くきまりだそうです。


果糖は低温で甘味が増すことから[3]、冷やして飲まれることの多い清涼飲料水は果糖が多めの「果糖ぶどう糖液糖」が使われることが多いようです[4]。一方、商品によっては「ぶどう糖果糖液糖」が使われています[5]。いつもの飲み物にはどちらが使われているか、チェックしてみてはいかがでしょうか。


異性化糖の原料にする澱粉はトウモロコシのものに限りませんが、価格や貯蔵性等の観点からトウモロコシが使われることが多いそうです。トウモロコシの中でも家畜の飼料や澱粉用のデントコーン種が使われます[6]。


この品種は甘さの代わりにしっかり澱粉を蓄えていて粒の約2/3が澱粉です。筆者は茹でたものを中国で食べましたが、日本で売られているスイートコーン種と違って甘くはなく、澱粉が水を含んでモチモチした食感でした。


「コーンスターチ」という名称を聞いたことがあると思いますが、それがまさにトウモロコシの澱粉のこと、そしてコーンスターチから造られた異性化糖が「コーンシロップ」です。こちらも聞いたことがあるのではないでしょうか?


異性化糖は砂糖よりコストが安く、液体で取扱いも簡単なため食品工業界で幅広く使われています。日本では国内生産される砂糖と同程度の量の異性化糖が使われています[7,8]。


500mlのペットボトルの清涼飲料水や飲料に含まれる炭水化物は約50g、商品によっては甘さのほとんどがトウモロコシ由来の「果糖ぶどう糖液糖」によるものです。


トウモロコシって家畜だけが食べているのではなく、じつはわれわれ人間も、飲料としてたくさん「飲んで」いたんですね。


<関連リンク等>
[1]ブドウ糖を果糖に変えるグルコースイソメラーゼ
http://www.aist.go.jp/aist_j/information/result/1965_001/index.html
[2]特許出願公告 昭41-7431「グルコースイソメラーゼの製造法」
[3]クレイン五感通信 第16回「冷やすともっと甘くなる」
http://crane-corp.jp/cranenews/cranenews_16_taste.html
http://ameblo.jp/crane-tech/entry-10132096300.html
[4]コカ・コーラ 原材料名(「果糖ぶどう糖液糖」使用の例)
http://www.cocacola.co.jp/products/lineup/cocacola.html
[5]ポカリスエット 原材料(「ぶどう糖果糖液糖」使用の例)
http://www.otsuka.co.jp/product/pocarisweat/
[6]日本澱粉工業株式会社
http://www.sunus.co.jp/corn.html
http://www.sunus.co.jp/corn2.htm
[7]平成20砂糖年度10月-12月期における砂糖及び異性化糖の需給見通し
http://www.maff.go.jp/j/press/seisan/ryutu/080919.html
[8]独立行政法人農畜産業振興機構 砂糖統計資料
http://sugar.lin.go.jp/japan/data/jd_data.htm
○ 関連キーワード:高果糖液糖、HFCS、イソグルコース、異性化液糖、液糖