クレイン・テクノロジー|技術をもっと、分かりやすく。|畑谷成郎 -8ページ目

第18回「見えない物を音で観る」-反射を利用したマッピング

スイカを丸ごと買うとき指で弾いて音を聞いたりしますね。そうなんです、切らずに中の様子を探るのに音を使うのは伝統的な手法なのです。でも、最新の計測技術を組み合わせるともっといろんなことが分かるのです。

病院で「エコー」と呼ばれる超音波画像診断をやったことがあるでしょうか。

切らなくてもお腹の断面の画像を見たり、胎児の様子を画像として観察できる方法、といえば思い当たる方も多いでしょう。超音波という音を使ってお腹の中を画像化する技術です。この画期的な技術ついて、しくみを紹介しましょう。

エコーで重要なのは音の反射と減衰です。前回、やまびこ(反射音)の話を少ししましたが、手前に小さな山、遠くに大きな山があると、やまびこはどんなふうに返ってくるでしょうか?

この場合やまびこは2回聞こえます。1回目のやまびこは手前の小さな山からの反射、2回目は遠くの大きな山からの反射によるものです。距離の違いから返ってくるタイミングがずれます。

やまびこの大きさはどうでしょうか?1回目は大きく、2回目は小さいはず。距離が長いと減衰が大きいからです。山が音を吸収・透過する性質を持っている場合には反射音はもっと小さくなります。

エコーでは発射する超音波のタイミングと大きさを正確に測ります。そして、帰ってくる反射音のタイミングと大きさも正確に測ります。反射音のタイミングから反射物の位置(深さ)の情報を、反射音の大きさから、反射時にどの程度音が吸収・透過されたかという情報(反射物の固さ等に関連)を割り出します。

超音波は直進性に優れていて、1回の測定で超音波が進行する1つの方向の反射物の情報が得られます。次に、音の発生源の位置をそのままに超音波の発射方向を少しずつ変えながら測定するとどうでしょう。時計の針で例えると、1時の位置から3時の位置へ短針の方向を60度分徐々にスキャンするイメージですね。

超音波の発射方向を変えて測定すれば各方向の情報が集まります。1時の位置から3時の位置まで、例えば2.5度ずつずらしながらだと24回の測定を行うことになります。この結果を順次プロットしていけば60度の扇形の「画像」を作ることができます。

エコーのしくみがまさにこれです。内臓や腫瘍、胎児の存在によって超音波の反射が起こることを利用し、複数回に分けて扇状に超音波を発射して反射音を分析することでお腹の断面を画像化したり、胎児の様子を画像として観察することができるのです[1]。1回の測定で得られる1次元情報を複数組み合わせることで、「画像」という2次元情報が得られるのが画期的ですね。

エコーのように、測定点から離れた物の位置を音波を使って画像で取得するしくみをソナーといいます[2]。魚群探知機も同じ仕組みです。魚が超音波を反射することから魚の群れの位置を画像化します[3]。ソナーは魚の群れだけでなく、海中の潜水艦の位置や動きを監視するのにも使われています。

同様の技術にレーダーがあります[4]。気象レーダーは天気予報でもおなじみですね。これは雨や雪によって電波が反射されることを利用して、雨や雪の降っている位置をマップで示します[5]。ソナーとの違いは、音波ではなく電波を使うことです。

空港では様々なレーダー装置が使われています[6]。数メートル径の白いボール状の構造物(レドームといいます)を見かけるかもしれませんが、それはレーダーです。内部ではパラボラアンテナなどの指向性の高いアンテナがぐるぐる回転していて周囲の気候等の情報を絶えず画像として取得しているのです[7]。

最新鋭の「見えない物を観る」技術は、意外に単純なやまびこ(反射)の原理を使って実現されているのですね。

<関連リンク等>
[1]東芝メディカルシステムズ、Dr.SONOの公開講座「超音波の基礎」
http://www.toshiba-medical.co.jp/tmd/library/lecture/index.html
[2]SONAR: SOund Navigation And Ranging (音のナビゲーションと測距)
[3]古野電気、魚群探知機の仕組み
http://www.furuno.co.jp/technology/about/fishfinder1.html
[4]RADAR: RAdio Detection And Ranging (電波の検知と測距)
[5]気象庁、気象レーダーによる観測について
http://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/radar/kaisetsu.html
[6]総務省東海総合通信局、中部国際空港(セントレア)の無線システム
http://www.tokai-bt.soumu.go.jp/musen/tyuubukokusai/index.html
[7]中部航空地方気象台、空港気象ドップラーレーダー
http://www.tokyo-jma.go.jp/home/chubu/draw.htm
○ 関連キーワード:ドップラーレーダー、エコーロケーション、ASR