フェラーリなど、車載工具としてのコンビレンチ

 

【2021年5月30日追記】

フェラーリとメルセデスのコンビレンチ実物がやっとアメリカから届きましたので、写真を差し替えました。

 

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待望だったフェラーリのコンビレンチを手に入れました。

自動車会社名または車名入りの専用コンビレンチを車載工具として採用しているのは今のところ世界で3社しか見つかっておらず、非常に珍しい存在です。(対象は商用車を含む4輪)

もう2社は、日産(インフィニティー&プレジデント)とメルセデスベンツで、後半で触れます。


1.商品解説

 ① 360モデナ (1999-2005) 

・フェラーリ360モデナの車載工具に入っている純正コンビレンチです。

・同時期の550マラネロにも同じ車載工具が採用されていました。

・凹丸パネル内に"Ferrari"と黒くシルク印刷されています。

・車載工具セットは高級な作りの革製カバンになっていて、さすがフェラーリです。

・製造国の刻印が無く、コンビレンチはどこ製なのか不明ですが、365デイトナ/Everestの例よりインド製と考えるのが素直です。(光沢梨地がインド製の雰囲気)

・ただし、インドの代表的な工具メーカーの2社、EverestとEastmanの凹丸パネルはフェラーリモデルとは異なっています。

・どこ製であろうと、フェラーリの純正コンビレンチを手に入れることが出来て満足しています。(これで私のコンビレンチ・コレクションの車載工具編は完成です)

*①、②ともにebayで手に入れた現物がアメリカから届いたら写真を差し替えます。

 

 

 

 ② 250GT/2+2 ? (1960-1967) 

・”Ferrari"が浮き出し刻印されています。

・イタリア工具メーカー"KRAVM"の刻印が裏面に入っていますので、KRAVM製と分かります。

・テスタロッサ(1984-1992)にも、スパナですが、KRAVMが車載工具として採用されています。

・アメリカで父親が250GT/2+2を持っていた人からガレージにあった工具として入手しました。

・250GT/2+2はテスタロッサから20年遡りますので、このKRAVMコンビレンチが250GT/2+2の車載工具だったかどうかは何とも言えません。

・KRAVMコンビレンチがいつ登場したかが分かれば検証出来ますが、残念ながらKRAVMの情報が少ないためコンビレンチの登場時期は不明です。

・KRAVMは2013年に光学機器を得意とするLTF SpAの傘下に入っていて、ブランドとしては残っていますが、今はコンビレンチやスパナの販売はしていません。

 

★スパナの車載例(275GTB/1964-1966)

・アメリカ向けだった250GT/2+2と同時代、本国向けの本命275GTBの車載工具です。

・BetaのスパナでNo.55が採用されています。

・これを見ると、前述のKRAVMコンビレンチが同時代の250GT 2+2に搭載されていた可能性もありえると感じます。

 

2.車載工具とコンビレンチについて

ほとんどのメーカーが車載工具としてスパナを採用しており、コンビレンチの例はほとんどありません。

なぜなら、コンビレンチはメガネ部の12PT加工のため高価になり、車両原価を下げたいメーカーは加工が簡単で安価なスパナを採用するのが普通だからです。

また、最近は車載工具を使う人はほとんどおらず、使ったとしてもスパナで充分なのも理由の1つでしょう。

さらに、スパナは2サイズに対応しますので、車載本数がコンビレンチの半分で済みます。

車載工具としてのコンビレンチは珍しい中で、特に社名または車名が刻印されたものを取り上げます。

なお、工具メーカー名だけの刻印、または何の刻印も無い無印のものでも、コンビレンチの車載工具はほとんど無いと理解しています。

 

社名/車名の入った車載コンビレンチは、日本では日産のプレジデントとインフィニティーの2例だけです。(KTC製、後述)

無限NSXの車載工具用に同じくKTCで生産されたコンビレンチがありますが、車両販売計画自体が消滅しているので対象外にします。(後述)

ちなみに、レクサスもスパナです。(Lexusロゴ入りはアメリカ向けのみ)

アメ車では私が知る限りコンビレンチはありません。

戦前の機械加工精度が低かった時代はドライバーも車載工具を日常的に使う必要があったでしょうから、PLOMB以降のコンビレンチが採用されていた可能性はあると思っています。

但し、当時のコンビレンチは価格がスパナの3倍もしていたことから、車載工具にはなりづらかったと推測しています。

ヨーロッパでも専用コンビレンチはフェラーリとメルセデスベンツの2社だけだと理解しています。(英ロールスロイスや独BMWもスパナ)

もっとも、フェラーリもスパナが主流です。

前述のように、360モデナと同時期の550マラネロと、もう一車種(250GT/2+2?)だけがコンビレンチを採用していたと思います。(スパナの例は365デイトナで紹介済み)

そして、メルセデスベンツもスパナが主流ですが、W124にコンビレンチが採用されています。(後述)

つまり、車載工具で専用のコンビレンチは、今のところフェラーリとメルセデスベンツ、そして日産の3社だけと言うことになります。

もし他にもあることをご存じの方がいらっしゃいましたら、コメント欄で教えて頂けると嬉しいです。(但し、下記の注1~4.を条件としています)

 

*注1.車載工具として社名または車名が入ったコンビレンチ(対象は商用車を含む4輪)

*注2.車載工具とは、メーカーから販売店へのデリバリー時に最初から車に搭載されている工具で、車両本体価格の一部。(販売店が一部の車両に独自に追加搭載するのは対象外)

*注3.社名や車名が入った記念品や限定品としてのコンビレンチは沢山ありますが、車載工具ではありませんので、対象外。

また、"TOYOTA"など社名入りの整備工場向けも、車載工具では無いので、対象外。

↑対象外の例1…トヨタ86の限定品(補用部品として販売)

↓対象外の例2…トヨタ整備工場向けにトヨタ部品共販(現トヨタモビリティーパーツ)が販売

*注4.1933年PLOMB以降のモダンタイプ・コンビレンチに限定。(それでも範囲は90年間)

実は、最初の自動車T型フォード(1908-1927)の車載工具にオールドタイプのコンビレンチが車載されていましたが、形状が古めかしく、現代版コンビレンチとは異なっています。(プラグ清掃とシリンダーヘッド増し締めのための必需品)

ちなみに、オールドタイプでは1910年代の農耕トラクター車載コンビレンチなどというのも登場してきます。

↑T型フォード用 Moore Drop Forging社製

↓トラクター用 Planet Jr.(頭が四角いボルト用の4PT)

 

3.フェラーリ以外(車載工具コンビレンチ・コレクション)

 ③ 日産プレジデント 第3世代JG50型(1993-2003年) 

・KTCミラーツール使用のOEM特注品で、裏面にロゴと共に"President"と刻印されています。

・プレジデント専用のロゴ入りプラスチックケースに他の工具と共に納められ、リアトランクの裏側に取り付けられていました。

 

 

 

 

 ④ 日産インフィニティーQ45 日本向けG50型 (1989-1997) 

・プレジデント③と同様にKTCミラーツールの裏面に"INFINITY"と刻印された特注品です。

・プレジデントと同じ形のケースですが、表のロゴが"INFINITY"に変わっていますので、専用ケースになっています。

・日本向け専用だったようで、アメリカから『私のには載っていなかった』と聞いています。

 

  

 

 ⑤ Mercedes-Benz W124 初代Eクラス(1985-1995) 

・Matador製でメガネ部が大きく立ち上がったオフセットタイプのコンビレンチが17x19mmの変形サイズでW124(初代Eクラス)の車載工具に採用されています。

・この形状はケースに入れる時にかさばると思いますが、奥まった場所へのアクセスが必要なメンテナンスなど敢えてかさばる形状を選んだ理由があるのだと思います。

↓同じ部番でHEYCO製も併行採用されています。

 

 

 

★フラットタイプ

・同じMatador製でMercedes-Benz刻印のフラットタイプもあります。

・トヨタの例と同じように整備工場向け工具なのだと思いますが、車載工具に採用されている可能性もあります。

・ちなみに、Mercedes-Benzに車載されいてるスパナの主流は、このMatador製です。

 

 ⑥ 無限NSX (に車載されるはずだった) 

・無限NSXの車載工具としてコンビレンチを含め全23点の特注品がKTCにより作成され、無限に納入されましたが、肝心の車両(無限NSX)が生産販売中止となったため、無限ユーザーとホンダユーザーへの販促品として使用されています。(詳細は別ページのこちらにて)

・表面に無限の刻印があることから、KTC商品に刻印を追加した特注品では無く、無限商品をKTCに外注した形になっているのが分かります。

・上の写真は無限と打ち合わせを開始する前のKTC第1次試作品です。(たぶん手に入れているのは私だけだと思うので、ちょっと自慢)

・試作品ですので、裏面の刻印はまだ入っておらず、またMUGENと無限の順番が間違っていたり、漢字"限"が1角抜けていたりしますが、最終品は修正されています。

・なお、最終品は、漢字"無限"の周りが凹で漢字自身は凸になる刻印に変更され、裏面にはKTC生産の証としてミラーツールと同じ刻印が入っています。

 

  

 

 

 【汎用コンビレンチでの採用例】 VW ビートル 

Hazet汎用工具セットがVWビートルに採用されていて、コンビレンチが含まれています。

補用部品扱いで、かつ社名(VW)入りではないようですが、ケースと車載方法が素敵です。

  

 

VWビートル車載工具キットに関するHazetカタログです。

品番605のコンビレンチが含まれていることが分かります。

 

★オートバイ BMW Rシリーズ

・オートバイのBMW(Rシリーズ/OHVエンジン)に"BMW"刻印付きのコンビレンチが車載されていたと読者の方から教えて貰いました。

・工具メーカーの刻印はありませんが、HEYCO製のようです。

・必ずしもRシリーズ全てが対象だった訳では無かったようで、ネットで見る限りではコンビレンチでは無くスパナだった車種もありました。

・ハーレー系のBuellに日本独自に日本製の専用コンビレンチが全車に車載された例がありますが、これは日本の販売代理店であるハーレーJapanの独自判断だと思います。

・2輪の場合は、販売代理店のみならず、メーカーサイドも自由度が高く、色々な対応が存在すると思いますので、オートバイは今回の車載工具コレクションの対象外とすることにします。

 

この回、終わり