EVEREST
インド
フェラーリ365の車載スパナ
ドイツのGEDOREがインドに生産工場を持っていたことはこちらで紹介済みですが、そのGEDOREから分離独立したDOWIDATもインドの合弁工場で独自に生産をしていました。
その合弁の相手が今回紹介のEVERESTです。
1962年から1974年まで合弁工場でDOWIDATとEVEREST両方のコンビレンチやスパナを生産していました。
そして、フェラーリは、そのEVERSETの刻印が入っているスパナを、合弁工場と同時期に生産していた365デイトナの車載工具として採用しています。
フェラーリ純正に採用されているのは、インド合弁工場の製造品質や出荷基準がドイツDOWIDATに準じていたことの証だと理解しています。
DOWIDATとの合弁は1974年に終了し、独自ブランドとしてEVERESTを現在も生産販売しています。
1.商品紹介
★ ①、② 旧モデル(アンダーライン無しEVEREST)
① No.222
No.222の前期版で、INDIAの大きな刻印が入っています。
ぼてっとした鍛造の仕上がりが時代を感じます。
恐らく合弁工場開始直後のEVEREST初代モデルだと思います。
No.222の後期版で、MADE IN INDIA刻印がDOWIDATと同様の2列になっています。
② No.223
ロゴはアンダーライン無しEVERESTのままで、品番がNo.223に変わっています。
②No.222モデルとの差が無いように見えます。(現物にて差を確認予定)
※ebayオーダー中
★ドイツDOWIDATとEVEREST(合弁インド工場製1962年~1974年)
DOWIDAT No.111(下側)のEVEREST版がNo.222(上側)のようです。
インド合弁工場製のDOWIDATはインド国内と特定国で販売されたとのことですが、特定国がどこであるかの情報はありません。
ヨーロッパ(ドイツ、英国)ではインド製DOWIDATを見かけませんので、輸出先はヨーロッパ以外かと思います。
DOWIDAT唯一のコンビレンチであるNo.111は昔から持っていましたが、このブログで紹介することは無いと思っていました。
思わぬことで登場の機会を得ました。
上の写真はドイツ製です。
★DOWIDAとEVERESTの品番とモデル差異
・No.111…DOWIDAT(スパナ右側) ※DOWIDATのコンビレンチは1種類のみ
・No.222…EVEREST、①アンダーライン無しのみ(スパナ右側)
・No.223…EVEREST、②アンダーライン無し(スパナ右側) 合弁工場製?
・ 同 上 ③アンダーライン付き(スパナ左側) 合弁終了後?
★ ③~⑥ 現行モデル(アンダーライン付きEVEREST)
③ 現行No.223
品番は②と同じNo.223ですが、ロゴがアンダーライン付きになり、スパナ右側から逆向きのスパナ左側に変更されています。
②から③への変更時期に関する情報はありませんが、DOWIDAT合弁事業が終了し、EVERESTが単独で生産販売を開始した1974年と考えるのが素直だと思います。
※ebayに5本セットをオーダー中
EVERESTの存在を知ることになった1本です。
日本ブランド97番目のECHO!モデルを譲って頂いた方から同時に入手しました。
知り合いの板金屋さんが1990年頃から使用していたとのことで、かなり昔から日本で流通していたことが分かります。
最近、インド製の工具が、日本ブランドの廉価版として、またホームセンターでノーブランドのままで販売されているのを良く見かけるようになりました。
そのインド製が、オリジナルブランドのままで、かなり昔に日本で流通していたとはびっくりです。
1990年頃では台湾や中国製もまだ日本には登場していませんでしたので。
少なくとも台湾よりもインドの方が工具生産の歴史があることになります。
DOWIDATやGEDOREとの合弁事業の成果かと思います。
ちなみに、台湾で一番古い工具製造メーカーはTOPTUL/Rotar Machinery Industrial Co., Ltd.の創業1981年です。
一方、インドのEverestは1963年からですので、インドの方が少なくとも20年は長い歴史があります。
この1本からコレクションの世界が大きく広がりました。
No.223は今でもWebに掲載されていて、50年の歴史があるモデルになります。
サイズ12mmでL=148、少し短めです。
④ 現行No.277
凹四角パネル
サイズ12mmでL=160、普通の長さ。
前述の③はDOWIDAT合弁時代のデザインを引き継いでいますが、④~⑥はEVERESTの独自デザインになっていますので、DOWIDAT以降の新生EVERESTの商品になります。
DOWIDAT合弁時代の製造品質と品質基準を継承していると思いますので、現在のインド製工具のベンチマークと言って良いのかと思います。
しかしながら、EVERESTの①~③まではアメリカ、英国、オーストラリアで市場に出回っていて、ebayで比較的簡単に入手できる一方で、残念ながら④~⑥はebayでは全く見かけません。
同じインド製のEastmanに引き続き、インド製ベンチマークとしてEVERESTも揃えるつもりですので、④~⑥の3種コンビレンチを気長に探すことにします。
なお、Eastmanは今の日本の工具業界にノーブランドの形で製品を供給していますが、同じインドの輸出企業であるEVERESTも日本に入り込んでいるのかもしれません。(インド製は全てノーブランドなので生産元が判読不明ですが)
⑤ 現行No.278
DINタイプ(④と同じ凹四角パネル)
サイズ12mmでL=165、④よりも5mmだけ長い。
⑥ 現行No.279
ミラー仕上げ(今のトレンドに併せて④をマイナーチェンジ?)
サイズ12mmでL=160、普通の長さ。
2.フェラーリ車載工具
スパナNo.22がEVEREST刻印のままフェラーリ365デイトナ(生産1968年~1973年)の車載工具に採用されていました。
デイトナの生産時期は、ちょうどDOWIDATとEVERESTの合弁工場の時代に一致します。
Made in Indiaが表示されていますが、ヨーロッパではインド製であることに違和感は無いのかもしれません。
(日本でレクサスにインド製工具はあり得ませんが)
アンダーライン付きロゴに変更になった後もフェラーリに採用されていたようです。
★フェラーリとコンビレンチ
EVERESTの話から離れますが、フェラーリでは360モデナと250GT/2+2の2車種だけ車載工具にコンビレンチを採用しています。
ほとんどのメーカーの車載工具はスパナであり、コンビレンチの採用は非常に珍しいと思います。
ちなみに、日本で車載工具にコンビレンチが採用されているのはプレジデントとインフィニティー、それに無限NSXだけだと理解しています。

・生産国表示が無いのですが、フェラーリ365の延長線上で、インド製の可能性が高いと推測しています。
★2車種目、フェラーリ200GT/2+2(イタリアKRAVAN製)

・こちらは、イタリアのKRAVAN製。

3.日本での流通
前述の通り、アンダーライン付きEVERESTのコンビレンチが日本で流通していたことが確認出来ています。
コンビレンチ10本セットがみんカラで紹介されていて、ホームセンターで販売されていたようです。
写真が不鮮明ですが、No.223だと思います。
4.EVERESTとDOWIDATについて
1) EVERESTの歴史
EVERESTの企業解説ではこちら(英文)が一番詳しいと思います。
以下、和訳です。
- - - - - ◇ - - - - - ◇ - - - - -
・DOWIDATとの合弁
国際規格の高品質のハンドツールを製造している ドイツのDowidat(Dowidat Werke Willi Dowidat)の技術供与を受けて、1962年12月8日にHindustan Dowidat Tools Limitedの名称でインドの公開有限会社として設立されました。
1963年にSonepat (Harayana)地区のJather村にある(合弁)工場で商業生産を開始しました。
この会社は、インドでの高品質ハンドツールを製造する分野のパイオニアの1つです。
同社はDOWIDATブランドでインド国内および特定国の輸出向けに生産販売すると共に、EVERESTブランドとして世界中の国(DOWIDAT輸出特定国以外)に輸出しています。
Dowidatとの契約は期間10年であり、1974年に技術移転が順調に終了したとして契約は終了しています。
※補足:会社名にあるHindustanはインド現地語でのインドを示し、英語Japanに対する日本と同じようです。
・EVERSTとして自立
1974年にHindustan Dowidat Tools Limitedに社名を変更し、以降はEVERESTのブランド名でインド国内販売だけでなく世界中に輸出しています。
製品の大半は、高品質市場であるドイツやフランス、イタリア、英国、米国、日本などの35以上の国に輸出されています。
同社は、自動車関連企業にハンドツールを提供しています。
数例を上げると、Maruti Udyog Limited、Bajaj Auto Limited、Mahindra&Mahindra Limited、さらにHindustan Machine Tools Limitedです。
ONGC、GSI、MECLや防衛部門の車両工場などの公的機関でも採用されています。
さらに世界中の卸売および小売市場で威厳のある地位を得ています。
同社は過去3年間に労働問題や事業撤退、訴訟、債務不履行に直面していません。
- - - - - ◇ - - - - - ◇ - - - - -
2)DOWIDATについて
DOWIDAT家の3兄弟(Ottoさん、Karlさん、Williさん)が1919年にドイツの工具生産会社GEDORE(Gedore Werkzeugfabrik Otto Dowidat KG)を設立。
GEDOREという会社名にはDOWIDATが含まれていて、GE-DO-RE(GEbrüder/兄弟 DOwidat REmscheid/都市名レムシャイト)から来ています。
1933年にKarlが無くなった時に、OttoとWilliが決別し、GEDOREはOttoが継ぎ、Williが自分の苗字そのものである工具メーカーを新たに立ち上げたのがDOWIDATです。
GEDOREが1961年にインドで生産工場を立ち上げたのに対抗して、DOWIDATも翌年の1962年に同じくインドで前述の合弁工場を立ち上げています。
GEDOREのインド工場は1986年まで25年間に渡り操業していますが、DOWIDATの合弁工場は1974年に10年間のみで終了しています。
DOWIDATはインド合弁終了の翌年1975年にBELZERに買収されていますので、インド事業の継続どころではなかったのではないかと思います。
そのBELZERが1985年にスエーデンのSANDVIKに買収された時にGEDOREのOttoさんが再び登場してDOWIDAT部門を買収。
したがい、DOWIDATは元の鞘に収まる形でGEDOREに戻ることになりました。
しかし、残念ながらDOWIDATブランドが復活することはありませんでしたので、DOWIDATは実質的には1975年で終了したと考えて良いと思います。
そのDOWIDATの物作りを唯一引き継いだのがインドのEVERESTと言うことになります。
5.諸元表(Webカタログより)
③ 現行No.223
④ 現行No.277
⑤ 現行No.278
⑥ 現行No.279
★スパナ&メガネ
Webサイトに掲載されているスパナとメガネです。
両口スパナ:4種、片口スパナ:1種、メガネ:2種、打撃スパナ:4種
6.各種情報
EVERSET Webサイト…閉鎖/2023年
EVEREST紙カタログの表紙。
"Since 1963"と謳われています。
合弁契約が交わされた1962年の翌年に生産が開始されており、この1963年がブランドのスタート年になっています。

































