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レイアウト・フォーマット用紙の著作物性を否定した事例
▶平成10年05月29日東京地方裁判所[平成7(ワ)5273]▶平成11年10月28日東京高等裁判所[平成10(ネ)2983]
四 本件レイアウト・フォーマット用紙の著作物性について
1 著作権法は、著作物を「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」と定義し(2条1項1号)、保護の対象は「創作的な表現」であって、「思想又は感情」それ自体あるいはアイデアそのものではないことを前提としている。そして、著作権法における「創作性」とは、厳密な意味での独創性や新規性が要求されるわけではなく、思想又は感情の外部的表現に著作者の個性が何らかの形で現れていれば足りるものと解されるが、他方、一定のアイデアを表現すれば誰が著作しても同様の表現になるようなものは、創作的な表現とはいえない。
2 ところで、(証拠等)によれば、本件レイアウト・フォーマット用紙における天地の空き寸法や段数、段間、行間、一行の文字数等の数値は、原告の知的活動の結果として提案され、被告の担当者が採用を決定し、本件レイアウト・フォーマット用紙A及びBとして完成をみたことが認められる。
しかしながら、別紙レイアウト・フォーマット用紙A及びBの体裁からも判るように、本件レイアウト・フォーマット用紙は、完成後の書籍の紙面を表す枠の中に本文紙面を1頁につき4段組み、段間2字分、1行18字、41行(A)、又は、5段組み、段間2字分、1行14字、41行(B)とし、上部欄外スペースを横組み4段、段間2字分、1行18字、9行(A、B共通)として、それらの文字に相当する位置に小四角形を配列し、字数や行数の計算がしやすいように最初の行や各行頭に番号を入れたものを見開き2頁分並べ、その上下左右の欄外に補助的に目盛りを入れる等したものであって、本件知恵蔵の紙面を構成する各記事や写真・図表、見出し等を各頁毎に要求される条件に応じて、どのように紙面に割り付けるかを検討し、決定し、これを記入して印刷担当者へ伝達するために使用されるものである。
ところで、本件レイアウト・フォーマット用紙A、Bのように、文字に相当する位置に小四角形を配列すること、最初の行や各行頭に番号を入れること、見開き2頁分を1枚の用紙におさめること、上下左右の欄外に補助的な目盛りを入れることは、レイアウト・フォーマット用紙としてありふれた態様であるから、これらの部分に創作的な表現を認められない。
[控訴審同旨]
控訴人は、本件レイアウト・フォーマット用紙は被控訴人から独立したブックデザイナー固有の知的創作物である旨主張する。しかし、年度版用語辞典である知恵蔵のような編集著作物の刊行までの間には、その前後は別として、企画、原稿作成、割付けなどの作業が複合的に積み重ねられることは顕著な事実であるところ、本件における前記一認定の前提事実に照らすと、本件レイアウト・フォーマット用紙の作成も、控訴人の知的活動の結果であるということはいえても、それは、知恵蔵の刊行までの間の編集過程において示された編集あるいは割付け作業のアイデアが視覚化された段階のものにとどまり、そこに、選択され配列された分野別の「ニュートレンド」、「新語話題語」、「用語」等の解説記事や図表・写真を中心とする編集著作物である知恵蔵とは別に、本件レイアウト・フォーマット用紙自体に著作権法上保護されるべき独立の著作権が成立するものと認めることはできない。
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