脚本原稿の同一性保持権侵害を否定した事例
▶令和7年2月27日大阪高等裁判所[令和6(ネ)1431]
(2) そうすると、一審被告が第10稿から第11稿を経て第12稿を作成するに至る過程でした第10稿の変更行為(本件変更)は、これが一審原告の意に反するものであるならば、一審原告が有する第10稿についての同一性保持権を侵害する行為に該当するが、この点につき、一審被告は、一審原告が第10稿を加筆、修正して変更することについて同意していたとして、本件変更をした行為は、同一性保持権を侵害する行為には当たらない旨を主張する。
そこで、一審被告が第10稿を加筆、修正して変更した第12稿を作成した一連の経緯についてみると、前記前提事実に加え、後掲の各証拠及び弁論の全趣旨によれば、以下のとおりの事実が認められる。
(略)
(3) 以上認定の事実によれば、一審被告は、一審原告も同席する本件打合せ①の席において、本件映画のプロデューサーであるX5から本件映画の脚本家に加わるよう依頼され、一審原告も一審被告が脚本家として連名となることに同意したこともあって、その依頼を承諾し、第10稿を加筆、修正して第11稿を経て第12稿を作成する作業を行うことになったと認められるが、その関係は、法的には一審被告が脚本家として本件映画のプロデューサーから映画制作のために第10稿の見直し作業の業務委託を受けてこれを履行した関係であるといえる。そして、令和3年8月14日の本件打合せ①以後にされた第8稿から第10稿に至る変更作業は同日から同月19日までの5日程度で済んでいるのに対し、一審被告による第10稿から第11稿への変更作業はその後2か月にも及ぶ期間を要していること、その作業期間中の直接の変更作業を一審被告が単独でしていたこと(原判決別紙認定事実)や、一審被告がその作業期間中、何らかの創作を伴う変更を加えようとしていることは、一審原告に対する調査依頼等の内容からも理解できたはずのものであること(原判決別紙認定事実のやりとりからは、一審被告が創作行為をしていたことは十分うかがわれる。)、そうであるのに、一審原告は、これに異議を述べることなく一審被告の作業に協力していたことが認められるから、以上によれば、一審原告は、一審被告が、第10稿を一審被告としての創作も加えながら加筆、修正をして変更することを容認していたと認めるのが相当である。
その上、一審原告は、第10稿から第11稿へ変更した一審被告の加筆、修正についての不満をX3に伝えながら、X3から、本件打合せ②を受けて第11稿を加筆、修正する作業を一審被告が担当することを聞かされ、それが第11稿を破棄して第10稿に戻すだけであるという単純な作業でないことは想定できるのに、なお一審被告が単独で第11稿に加筆、修正をして第12稿とする作業をすることを容認していたことも明らかである。
以上を総合すると、一審原告は、一審被告が、本件映画の脚本制作のため 第10稿から第12稿に至る加筆、修正作業をすること自体は同意していたと認めるのが相当である。
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