楽曲の同一性ないし類似性を否定した事例
▶平成28年5月19日東京地方裁判所[平成27(ワ)21850]▶平成28年12月8日知的財産高等裁判所[平成28(ネ)10067]
(注)原告楽曲及び被告楽曲はいずれも同一の歌詞に曲を付したものです。
⑶ 上記事実関係によれば,原告楽曲と被告楽曲の旋律(上記⑵ウ)は,旋律の上昇及び下降など多くの部分が相違しており,一部に共通する箇所があるものの相違部分に比べればわずかなものであって,被告楽曲において原告楽曲の表現上の特徴を直接感得することができるとは認め難い。また,両楽曲は,全体の構成(同ア),歌詞の各音に対応する音符の長さ(同イ)及びテンポ(同エ)がほぼ同一であり,沖縄民謡風のフレーズを含む点で共通するが,これらは募集条件により歌詞,曲調,長さ,使用目的等が指定されており(同オ),作曲に当たってこれに従ったことによるものと認められるから,こうした部分の同一性ないし類似性から被告楽曲が原告楽曲の複製又は翻案に当たると評価することはできない。
【これに対し,控訴人は,原告楽曲と被告楽曲のBPM(テンポ)がほぼ同じである点は,両楽曲のいかなる相違点をも打ち消すほどに,同一性を示す根拠となる旨主張する。
しかし,楽曲についての複製,翻案の判断に当たっては,楽曲を構成する諸要素のうち,まずは旋律の同一性・類似性を中心に考慮し,必要に応じてリズム,テンポ等の他の要素の同一性・類似性をも総合的に考慮して判断すべきものといえるから,原告楽曲と被告楽曲のテンポがほぼ同じであるからといって,直ちに両楽曲の同一性が根拠づけられるものではない。そして,上記で述べたとおり,両楽曲は,比較に当たっての中心的な要素となるべき旋律において多くの相違が認められることから,被告楽曲から原告楽曲の表現上の特徴を直接感得することができるとは認め難いといえる。他方,両楽曲のテンポが共通する点は,募集条件により曲の長さや歌詞等が指定されていたことによるものと理解し得ることから,楽曲の表現上の本質的な特徴を基礎づける要素に関わる共通点とはいえないのであって,上記判断を左右するものではない。
したがって,控訴人の上記主張は理由がない。
[控訴審同旨]
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