システム開発の基本計画の終わる時にはもう一つの大きな問題が起きていました。システム開発を請負った事業部のプロジェクトマネージャーは次フェーズの基本設計見積もりを約束の11月初旬から1カ月以上も遅れた12月の中旬に漸く最初の見積もりを提示したのでした。
この男はシステム開発の経験があるとは言ってはいましたが、私の目から見ると素人同然としか見えませんでした。システム開発をする事業部では年配者と言うので一目置かれていたようでしたが、歳以外に何の取りえもなかったようでした。毎週顧客との間で行われる会議では会議の司会役をするだけで「ハイ、次はxxさん」と掛け声をかけるだけで、顧客の担当者からあれこれ質問された時には、プロジェクトマネージャーは答えられないので全て担当のシステムエンジニア任せにしていました。
この時、顧客側のプロジェクトマネージャーは無表情で何も言わないのが不思議でした。自分の会社の社員が文句を言っているので、会議の席上の隣に座っているシステム開発を請負った会社のプロジェクトマネージャーに「どうしてくれるんだ」というような発言は一度もありませんでした。会議の場では発言せずとも、会議後にシステム開発を請負った会社のプロジェクトマネージャーを居残りさせて「会議で提示された問題についてどうしてくれるのだ・・・」という普通にはそうするだろうと思われることは一度もしなかったようでした。それどころか「ああいう社員の発言とうのは何故でるのかな?」と思っていたらしいような態度を示して、システム開発を請負った会社からみれば顧客の責任者が自分で部下の怒りをとりなしてくれるので、これほど都合のいい顧客はいないと思いほくそ笑んでいたに違いないと思いました。この顧客側のプロジェクトマネージャーがシステム開発の期間中ずっと見当違いしていたの、もシステム開発がうまくいかなかった原因だろうと感じていました。
システム開発を請負った会社のプロジェクトマネージャーが、次フェーズ基本設計の見積金額を提示したのは3回で、12月中旬には当初提案よりも大きくふくらんでいました。これが全く不思議で、4月から11月までちんたらと会議を開催して要件をつめていた筈なのに、急に11月末に要件が当初より増えたと言い出したので全く理に適わないと思いました。結局、このプロジェクトマネージャーは基本計画期間中に遊びほうけて、終わりになって顧客との間で意見が合わないのを要件追加と称していたのでした。驚き桃の木山椒の木とはこのことかと感じました。
そういう非常識な見積金額に対して顧客は何とかシステム開発を継続したいという気持ちが強く、予算内に収めると言う事しか頭にしかなかったようでした。これがシステム開発を請負った会社から見れば勿怪の幸いという事態になったのでした。予算内に収めるには5つある機能のうち1つは開発しないという方向に決まったのでした、私は個人的にはこういう進め方には非常に反発を感じましたが、顧客のプロジェクトマネージャーはそんな事よりも物を作ることが大切だと考えていたらしいと思いました。これも不幸な選択だったなと思いました。
システム開発を請負う技量程度の悪い業者と、決めれた事をやればいいという見識の無い発注者との変な合意に思えたのでした。顧客の情報システム部長もこのごたごたでプロジェクトで何が起きているのかも分からぬままに、次々に注文を出し続けるしかなかったのかと思いました。
古い自動車から新しい自動車への乗り換えをしたつもりでしたが、製作する業者の技量が悪くて、5本のタイヤを全部交換して新しくしようかと思っていたのですが、予算が足りなくなったので予備の1本は古いのを利用しますと言うようなものかなと思います。自動車は新品でもタイヤは1本古いまま、事故が起きても交換出来ないタイヤをのせた車を作ったのと同然かと思いました。他人からみたら変な車が走っているとしか見えないと思いますが、実際にこういう事が起きてしまったのでした。
この時に除外したシステムはシステム開発を請負った事業部では扱った事もないような製品を利用したシステムだったので、難しい仕事を外せてほっとしてやれやれと思っていたに違いありません、提案した仕事の一部を積み残したにも拘わらず、この後でも何題を起こすのでした。
システム開発を請負った事業部では社内では受注稟議を上げる必要があったのですが、こういう顧客とのごたごたは一切切り捨て、仕様が増大したので仕事をする範囲を変えましたと説明をしていたようでした。普通に考えれば、提案時からシステム数は変わっていなので仕様が増大する筈などもありません。会社の中では稟議は管理職から役員迄全員に回るのですが、誰一人として疑問を提示しなかったと想像しています。それよりも「早く注文書をもらってこい」という言葉が営業部長から度々発せられると、まるで注文を出さない顧客が悪者にでもなったような気にさせられたのでした。天地が変わるとはこのことかと貴重な経験をしたと感ずると共に、他人の利益を無視して自己利益のみを追うという企業理念が現れたとも見えました。