このプロジェクトでは色々な想定外の出来事が続いたのであるが、何の役にも立たない資料作りの基本計画も終わりになった頃に起きたのは、次のフェーズである基本設計の見積金額でした。このシステム開発の提案書を作成する時、システム開発を請け負った事業部のプロジェクトマネージャーが山積みと称して業務内容やシステム難易度とは無関係な工数を適当に算出して見積書として提示していた経緯を知っていた私は一番不安に駆られていたのでした。
こういうプロジェクトは継続をして作業をするので、顧客の側でも次のフェーズに入る前に社内決済を取り発注をしないといけないのでした。
そういう心配をいち早くしたのが私だったのでした。11月で基本計画は終了するので12月から開始する計画の発注書は11月中に貰わなくてはいけないというのは子供でも分かる理屈なのだが、それが現実には出来なかったのでした。

8月末にそろそろ見積検討が必要だと私が言い出したのを、システム開発を請け負った事業部のプロジェクトマネージャーは無視して何の対応もしなかったのでした。プロジェクト終了後に確信を得たのは、この時プロジェクトマネージャーは業務内容もろくすっぽ学習もしないで毎週会議だけ開いて受注した数億円を消化すれば事足りると言う風に考えていたのに違いないという事でした。そういう態度だったので、当然ながら基本的な業務やシステムに関する情報が無いので、次フェーズの基本設計の工数見積も提案時と同じように真っ白な紙に適当に数字を作り上げるしかないという事態だったという事でした。
心配になった私は、案山子様な顧客のプロジェクトマネージャーにも声をかけて早く見積もりを作ろうと働きかけて、9月の終わりに漸く見積もり検討が始まると言うような事でした。
この後に、システム開発を請け負った事業部のプロジェクトマネージャーから速報版、見直し版、最終版とかいう毎週見積もりを提示して精度を上げますというような説明があり、顧客や私の勤務していた会社の関係者を納得させたのでした。顧客のプロジェクトマネージャーからは社内の承認手続きもあり、11月中旬には折衝した後の確定版見積もりが欲しいと言うので合意をしたのでした。
こういう2か月もの長いスケジュールを立てて工数見積作業をするという事をしたのですが、システム開発を請け負った事業部から約束通りに見積書が出てきませんでした。当のプロジェクトマネージャーは遅れた理由を説明できませんでした。単に「今やってます・・・」という事ばかりの連続でした。通常ならば、こういう時点でプロジェクトマネージャー交代という判断が出るところを、そのまま担当させたのも企業の責任という事だと思います。顧客もとにかく波風を立てなくないという変に大人な企業だったのが災いして、こういう事態に対しても的確な対応が出来ないと言うことだったと考えています。

見積金額はもめにもめて翌年の1月中旬には決着がつきましたが、この時から私は危険を感じてプロジェクトに距離を置くようにしました。暴走している状態だと感じていたのは私の勤務していた会社では私だけだったと思います。上司の営業部長は「注文書、注文書」と書類の入手を言うばかりで本質が理解できていないので、その行動は幼稚園児と同じレベルかと思わざるを得ない状況でした。
この時に、企業の犯罪的行為というのがありました。顧客側のプロジェクトマネージャーに何とか次のフェーズに続けられるようにと、システム開発を請負った事業部のプロジェクトマネージャーと関係者が顧客のプロジェクトマネージャーを夜の酒席に誘い込んで説得にかかったことでした。
この時顧客側も混乱に陥り始め、情報システム部長が事態の収拾に乗り出すと言う事になった時でした。12月以降は契約が無いので、システム開発を請負った事業部のプロジェクトマネージャーは「12月も体制を継続すると金が掛かり請求しますよ」と顧客のプロジェクトマネージャーに言い渡されて、その情報が情報システム部長に伝えられたのは11月も中旬の、本来であれば最終見積が確定して稟議を出している場面でした。そういうスケジュールを想定していた情報システム部長は突然の報告に驚くばかりだったという事でした。
システム開発を請負った事業部のプロジェクトマネージャーは自身が約束した次フェーズの見積書提示を怠った上に、「作業を継続すると金が掛かり請求します」と脅しをかけたのでした。これが犯罪でなければ何と呼ぶ行動なのかと感じました。
この時、私は未だこの会社の従業員だったので混乱に巻き込まれているだけで、見積金額を早く出せと言う立場でしたが、当時から「プロジェクト継続に金が掛かり請求する」という話には違和感を持っていました。
企業として責任はどうするのかという話は皆無でした。これが当時関係する管理職や役員の責任でないとするならば、もはやそういう人間は企業として不要というべきだろうと思っていました。当時から、私の勤務している会社では顧客が大事よりも、業績だけが大事を声高に叫ぶ会社だったので、そういう企業の本質がこの事件で露見したともいえるのかとも思っていました。