日経新聞は毎週大きく広告ページをとって、その中に如何にも文化的だろうという言わんばかりの有名な絵画等の紹介記事があり、私に言わせれば編集者の自己満足ばかりが透けて見えるような内容の類と思いますが、「私のリーダー論」という連載は、若干は読ませる内容なのが気に入って、私が勤務していた会社での経験と、記事にある社長の話との乖離について書きたくなりました。

 

9月26日日経「私のリーダー論/ライオン 掬川正純社長」からの一節「人材育成は選抜型で」の引用です。

―次世代リーダーをどのように育成しますか。

「私も身をもって経験しましたが、リーダーは座学ではなく、実践してこそ育ちます。若いうちからトライ・アンド・エラーの機会を積極的に与え、ある程度の失敗を許しながら一定規模のチーム運営を任せたいです。その上で成長する人とそうでない人の差が出てくるのだろうと思います。その中から大規模なチームを任せられる人を探していきたいです」

―昇進制度などについてはどうでしょうか。

「部長や本部長などの役職への年功序列のよる登用も変えていきたいです。これまでは、部長なら40歳前後だとか、ある一定の年齢に達しないと昇格しないルールになっていました。これを極端にいえば、能力があれば20歳代でも部長になれる仕組みにつくりかえたいと思います。年内に仕組みを整え、20年から運用を始めたいと考えています」

私の勤務していた会社は減点制度、年功序列、上司の取り込み、というのが年配社員程しみ込んでいて、若手社員も段々とこういう社風に慣れ親しんでいくという職場ではなかったのかなと思います。そういう意味ではごく平凡な会社でもあったと思います。

仕事で大失敗でもすれば上司も巻き込まれて減点されるのを恐れて只々当事者に全部を任せて結果だけを聞くという状態なので、上記あるような「ある程度の失敗を許しながら」などというのはあり得ない話でした。私は性格上何事も徹底するので、ある顧客からのクレームに1年以上も対抗し、弁護士が立ち会う会議でも大声で批判するなどのことがあって、上司も知らん顔をしていましたが何とか着地点を見つけて収拾させたことがありました。これ以来、会社の損失は皆無にも近かったので褒められるどころか、社内では暴れ者みたいなことを裏でこそこそ言われたのが気に入りませんでした。

何度も同じことを書いていますが、現場での実務経験が無い人が役員になったりする会社なので、言ってみれば役所体質というのが普通で、現場感覚を持って事業を推進するとか、仕事の出来る人材を求めるということはないと感じていました。

という事になると、ライオンという会社とは真逆な会社とも言えると思いました。

 

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10月3日日経「私のリーダー論/TDK 石黒成直社長」からの一節「部下を信じ仕事を任せる」の引用です。

―リーダーとしての原点となった経験は何ですか。

32歳の時にルクセンブルグへ赴任し、磁気テープの現地生産に関わったときのことです。・・・初めて持った部下に日本人はおらず、慣れない英語で話すしかありませんでした」「・・・当時の私は部下と満足に意思疎通ができなかったため、一人で仕事を抱え込んでいました」

―どのように乗り越えたのですか。

「そんな私を見かねたのでしょう。ある日、夜遅くに会議から自席に戻ると机の上に拙い手書きの生産計画書が置かれていました。部下が見よう見まねで作ってくれたのです。『これで良いですか?』と書かれていた文字を見たときに、部下の気遣いに思わず涙があふれました。その時、部下を信頼して仕事を任せることの大切さを学びました。一人では何もできません。組織の皆が働きやすい環境をつくることがリーダーの役割だと感じます」

私の勤務していた会社では部下を信頼して任せるのではなく、自身が関わりたくないので部下に任せっぱなしにするという会社でした。その上に、部下を信頼しないということもあったと思います。

何度も紹介していますが、私が65歳の時、役所体質の顧客の基幹システム再構築案件の見積もりをしている時に、営業部長は私が正確に損益を計算しながら見積もりを作成しているのか疑問を持ったらしく、役員の出席する会議で審議もされる案件でもあり数字が気になって仕方がないと思えたのか、ものすごい剣幕で私の見積もりにいちゃもんを付けてきたことがありました。新人でエクセルが得意だという社員に再計算をさせたら、結果は誤差も殆ど無いことが判ったにも関わらず、営業部長は私をしかりつけた事に謝罪もせず知らん顔をしていました。これが会社の実態なのかと思い、憤懣していましたが怒りを抑えていました。最早、こういう職場には上司と部下との信頼関係はないのだろうというのが、何かのきっかけで会社の暗黒面が現れて見えてしまった時だとも言えると思いました。

私が27年間勤務していた会社が内向き志向の消極的な会社であるというのを何度も書いてきましたが、本日4日の日経には同じ趣旨の記事が掲載されていたので、日本には同様の会社がおおいのかなと言う風に感じさせられたのでした。

 

記事の抜粋は次の通りでした。

・・・日本企業は「三方良し」の理念が根付いていて英米流に利益ばかりを追求しているのではないというものだ。もちろん「三方良し」は重要な理念だが、そこには株主という視点がない。企業の存続に重きが置かれ成長や効率という意識は希薄になりがちだ。

純粋培養で固定化した人事や組織では忖度(そんたく)がまん延し、波風を立てない価値観が支配して「成功よりも失敗しないことを優先する文化」が醸成される。その結果、成長力の乏しい企業が多数存続し、従業員の賃金は増えず老後に備えて積み立てた自社の株価も上昇しない。こうした中で経営陣が、しがらみにとらわれず挑戦性を訴えても、どれほど従業員の心に響くだろうか。

・・・日本企業の復活は「失敗しないことを優先する文化」をどう克服するかにかかっている。

 

私が思い出す限りの中で、日経の記事の論評をしてみようと思います。

1)企業の存続に重きが置かれ成長や効率という意識は希薄になりがちだ。

  親会社とは業種の違う子会社でしたが、主な役職には親会社から流れてきた社員が配置されていて誰も疑問には思っていないようでした。素人経営者が業界事情や業務内容も理解せずに、コンサルや社内の知ったかぶりの社員の言いなりに事業をしていたので当然の帰結として、安全運転を重視した事業運営になり、成長や効率などという発想は皆無と思われました。

  役員以下管理職は、自ら現場に飛び込んで仕事や業務内容を理解するという文化が無い事が致命的だと感じていました。

 

2)固定化した人事や組織では忖度(そんたく)がまん延し、波風を立てない価値観が支配

 人事は日経の記事通りの体たらくであったと思います、新聞記事で堂々と書かれているので、こういう会社が多いという証拠が間接的に示されていると思いました。

 波風を立てない価値観が支配というのは、減点主義とも言えると思いますが、それが社内だけで済むのならまだしも、社外の取引先にまで及んでいて自分の責任を取引先に負わせていて、社内では誰も批判しないという文化は異様であると思います。

 

3)「失敗しないことを優先する文化」をどう克服するか

  役員や事業部長といった経営幹部が目先の売上ばかりに気を取られていて、過去の事業清算とか将来への投資という視点や思考する頭脳の無い社員が揃っていては、失敗しない事だけを考えるという風土は変わらないと思えました。役員や事業部長がどれほどの熱意をもって事業に打ち込んでいるかも見えないので、担当者も疑心暗鬼にならざるを得ず何事も引き気味にならざるを得ない面もあったと思います。