1880年に発表されたルー・ウォーレスのベスト・セラー小説「ベン・ハー」は、ローマ帝国支配時代のユダヤ人貴族「ジュダ・ベン・ハー」の数奇な半生に、イエス・キリストの生涯を交差させて描かれていている。1959年、名匠ウィリアム・ワイラー監督のもとで映画化された。主演は、チャールトン・ヘストンだ。アカデミー賞を11部門で獲得している。音楽、カメラ、スペクタクル、テーマの普遍性、親子や男女間の愛情表現など、総合的な視点から考えてみて、「ベン・ハー」は、映画史に残る傑作だと僕は思う。若い時にリバイバル上映されたものを映画館で見た。「シネマスコープ」に描かれた史劇の迫力は圧倒的で、音楽はクラシックの名曲を聞いているようですばらしかった。その後この映画はテレビなどで何度も見ているが、そのたびに新たな感動を与えてくれる。こういう映画を見ていると、映画はフィクションであるかもしれないが、そこにはリアリティーのある歴史観と、人間に対する深い洞察力が必要であると痛感させられる。
日本では、歌がうまくなくても、「アイドル歌手」としてもてはやされ、マスコミをにぎわかし、次から次へとCDをリリースしてゆくという現象がある(アメリカの音楽界では、そういう話はあまり耳にしない)。僕はそれを批判しているわけではない。「アイドル歌手」の生み出す「経済効果」は莫大であり、それによって、プロの作曲家、作詞家、編曲家、ミュージシャンなどの仕事も成り立っている。また「アイドル歌手」の歌を聞いて癒されている人もいる。「アイドル路線」はいつ頃から始まったか考えてみた。男性の場合は、1962年に初代ジャニーズ(あおい輝彦、真家ひろみ、飯野おさみ、中谷良)が結成され、また、1964年西郷輝彦(初代御三家の一人であるが、橋幸雄と舟木一夫は歌がうまい)が「君だけを」でデビューした頃からだと 思う。歌のうまい人が、プロの歌手に成るのが当たり前だと思っていたので、初めて西郷輝彦の歌を聞いた時、あまりうまくないなと不思議に思った。女性では、1970年前半に、天地真理が国民的アイドルとなり、後に続く「アイドル歌手」の基本的スタイルを確立したとされる。
「Sonny Stitt plays from the pen of Quincy Jones」は、チャリー・パーカーの後継者の一人であるソニー・スティットが、クインシー・ジョーンズがアレンジした中型編成のオールスター・オーケストラをバックに、アルト・サックスの演奏を聞かせてくれるアルバムである。オーケストラのメンバーを見る と、J.J.Johnson(tb)、Hank Jones(p)、Freddie Green(g)、Thad Jones(tp)、Joe Newman(tp)、Cecii Payne(bs)、Oscar Pettiford(b)などの名前が連なっている。「MY FUNNY VALENTINE」、「COME RAIN OR COME SHINE 」、「LOVE WALKED IN」、「STARDUST」、「LOVER」などのスタンダード・ナンバーを中心に、8曲が納められている。アルト・サックス奏者なら、過去に一度は、このアルバムの中の「MY FUNNY VALENTINE]のソニー・スティトのプレイに、魅せられたのではないだろうか。