太陽の君1 戸惑う心 | エルネア王国モニカ国の暮らし。

エルネア王国モニカ国の暮らし。

エルネア王国の日々の備忘録です。妄想もかなりあります。モニカ国。他のゲームの事も気ままに書いていこうと思います。
多忙のためのんびり更新中です。アイコンは旧都なぎ様のきゅーとなクラシックメーカーより。

任天堂Switch版エルネア王国をもとに書いています。

カテゴリーはリンゴ番外編 太陽の君 です。




リンゴ・ラウル
エルネア王国 王妃
ガルフィン魔銃師会所属
ティアゴ亡き後の魔銃導師。
ヴェルンヘルとこのとで戸惑い悩む日々を送る。

アルシア・コルテス
山岳兵団 コルテス家隊長
リンゴの親戚であり、親友。心配された跡取り問題は解決され、娘に恵まれている。心優しくリンゴの良き相談相手。

イマノル・ボイド
山岳兵団 ボイド家隊長。
リンゴの親戚。ヘラヘラして陽気で頭のネジが何本も外れた男と呼ばれる。侮られがちだが、洞察力や観察力は優れている。らしい。




ティアゴ・バーナード 故人
197年24日生〜219年26日没 享年22歳
ヴェルンヘルの女癖の悪さで傷つくリンゴの心の支えだった。





このお話は
時系列でいうと

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太陽の君







リンゴは親友のアルシアに誘われ、酒場にきていた。



昼から火酒をぐびっと飲み、ふうとため息をつくリンゴにアルシアは怪訝そうに、

アルシア
「何かあったの?」

リンゴ「………」

何から話せばいいのかと考えながら、

「実は、ヴェルンヘルは気づいていたみたいなの」


アルシア「なにを?」

リンゴは先日、自分たちしか知らないと思っていた花畑をヴェルンヘルが知っていたこと、ティアゴとそこで会っていたのを見られていたかもしれないことを話した。

その事実にアルシアは驚きと困惑を隠せないでいた。

アルシア
「陛下は気づいていたの?それなのに今まで二人ともなんのお咎めなしだったの?」


リンゴ
「ヴェルンヘルは何も知らないって言ってたけど……あれは、嘘だと思う」

ヴェルンヘルの苦悶の表情を思い出しリンゴの心が痛んだ。

(何も知らない人が、あんな顔はしない……)


アルシア
「それも不思議……陛下は自分の女癖が悪いからリンゴのことを咎められないってことなのかな?」

リンゴ「……どうなんだろう」

難しい顔をして腕を組むリンゴ。アルシアは周りをキョロキョロと見回すと、

アルシア
「あの場所で……ヤッたことってある?」
声をひそめて聞いた。


リンゴ
「な、ない!誰に見られるか分からないのに」

目を見開き、首を横に振る。


アルシア
「話をしていたり一緒に寝そべっていた所しか見られてないのかも。他になにもしてないでしょ?」


リンゴ
「う………」

気まずそうにリンゴは視線を泳がせた。

あの場所でキスをしたり、抱き合ったりしたことはあった。


アルシア
「………それなりに色々してたんだ」

リンゴの表情で悟ったらしいアルシア。


リンゴ
「……まぁ、その……すこし………」


アルシア
「もし見られていたとしても………陛下はリンゴもティアゴさんのことも咎める気はなかった………あまり気にしなくていいんじゃない?」

ここについて、リンゴがヴェルンヘルを問い詰めても何の得もない。

リンゴは目の前のもう一つの大きな問題の解決の糸口を探ることにする。


リンゴ
「………………あのさ。アルシアは…………もしもどうしても……旦那さんとシたくない時ってどうしてる?」


アルシア
「………あぁ…………陛下に求められるんだけどどうしたらいいかって話?」


リンゴ
「………………昨日は突き飛ばしちゃって…。ディーンさんは駆けつけてくるし、チェロには見られるし散々だった」


アルシア
「意外……女癖悪いって言われてるけどリンゴを抱きたいって思ってるんでしょう。仲が冷え切ったと思ってたのに」


リンゴ
「………それで機嫌を直そうとしてるんじゃない?」

思わず鼻で笑う。アルシアは「確かにそれはあるかも」と苦笑する。


アルシア
「…赤ちゃんはバグウェルが連れてくるっていうのを信じてたピュアボーイがそんな両親の姿を見て何を思ったのかがすごーく気になるんだけど」


リンゴ
「……それは考えないことにしてる……」

思い出したくないと両手で顔を覆った。

「で、アルシアは、したくない時は旦那さんにどういう風に断ってるの?」

リンゴは質問の答えを促した。


アルシア
「私はそんなことないから♪」

憎たらしいほどの笑顔でアルシアは言う。

リンゴ
「………ラヴラヴそうでなによりです……」

聞いた相手が悪かった、とリンゴは思った。親友の夫婦仲が悪かったらそれはそれで嫌なのでこれで良かったのかもしれない。


アルシア
「リンゴは陛下が嫌なの??怒ってるから陛下を受け入れたくないの?」


リンゴ
「あんな騒ぎ起こしておいて、私に触れようなんて………私の事バカにしてない?」


アルシア
「それはちょっと思うけど………話を聞いていると陛下はリンゴのことを心配してくれてるんでしょ?
……それにリンゴだって、他に相手がいたのに」

リンゴは痛いところを突かれ、「う……」と顔を顰める。そんなリンゴにアルシアは優しく言葉を続ける。

「………ねぇ……リンゴは、陛下とずっとこのままでいいの?」

アルシアの問いはリンゴの胸に深く突き刺さる。


リンゴ
「………………ティアゴ君がいなくなったからって、ヴェルンヘルに、なんて……そんな都合のいいこと………」


アルシア
「……ティアゴさんはきっと、リンゴの幸せを願ってくれていると思うよ」
   

リンゴ「………」
  
グラスの中で揺れる透明の酒をじっと見ながらリンゴはしばらく思案に沈んでいた。



゜+.――゜+.――゜+.――゜+.――゜+.――


その日の夜

チェロ
「母さんは奥の部屋で寝て」

チェロは幼いスピカの手を引いて、ダイニングの隣にあるベッドに向かった。


リンゴ
「………チェロ……一緒に寝ない?」

防波堤のような存在のチェロにまるで助けを乞うように提案するが


チェロ
「父さんに邪魔って起こされるからやだ」

あっさり却下された。

スピカ「私も」

子供たちはそう言うと布団を被って眠りだした。

リンゴ(裏切り者……)

奥の部屋にはベットが二つ並んである。リンゴがベットに横になりしばらくすると、ヴェルンヘルが帰宅し、ベットが一つ空いているが当たり前のようにリンゴが眠るベットに滑り込んでくる。

思わずリンゴが身を固くする。


ヴェルンヘル
「………大丈夫だよ、今日は何もしない」

いつも通り後ろからリンゴを抱きしめるとヴェルンヘルは瞼を閉じた。


リンゴ
「………」

(ヴェルンヘルは………なにを考えているんだろう。こんなに近くにいるのに分からない……)


考え込んでいたらリンゴは眠れなくなった。

いつもならリンゴも寝静まる刻限、リンゴを抱きしめていたヴェルンヘルの手が動きおもむろにリンゴの胸をむにゅっと揉んだ。

リンゴ
(ーーーーー!
本当にエッチなんだから…!)

声が出そうになるのを抑えリンゴは寝たフリを続行する。

リンゴ
(………ヤりたいのを我慢している……ということは分かる……)


ヴェルンヘル
(どうあっても寝たフリをするのか……)

ヴェルンヘルが眠りに落ちるまでリンゴは声が漏れるのを堪えていた。




翌日

ヴェルンヘル
「お誕生日おめでとう」

朝食でみんなに祝ってもらう誕生日。


リンゴ
「ありがとう!」

リンゴは笑顔を浮かべて礼を言った。


仕事のため、遺跡のダンジョンに向かう途中、魔銃師会の前を通る。


「………」


(いつもなら、お誕生日おめでとうって言いにきてくれるのに。

夜お酒飲みに行こうって誘ってくれるのに…)


亡くなったということが、どこを探しても、いつになってもその姿を見つけることが出来なくてそれが死というものなんだと胸を締め付ける。

リンゴ
(………切り替えないと、だよね…)


その日の夜

皆が寝静まった頃リンゴと同じベッドで寝ていたヴェルンヘルが起き上がる。


ぎしっとベッドが軋む音がしてリンゴの顔の横に手をつく気配にリンゴの身体がピクリと動いた。


ヴェルンヘル
「ーー起きてる?」

耳元でヴェルンヘルが囁いた。


リンゴ
「………」

身を堅くして寝たフリをする。


ヴェルンヘル
「………寝てていい。勝手にやるから」

そう言って、ヴェルンヘルの指がリンゴの服のボタンを外す。

リンゴ
「え、ちょっと……!」

慌てて目を開けると、リンゴに覆い被ったヴェルンヘルと目が合った。


ヴェルンヘル
「寝てていいよ」

悪戯っ子みたいな無邪気な笑みを浮かべるヴェルンヘルにリンゴは不覚にもドキリとした。

彼のこんな笑みを見るのは久しぶりだった。



リンゴ
「ね…寝れるわけないじゃん……!」


ヴェルンヘル
「静かに。子供たちが起きる」

リンゴの首筋に顔を埋め滑らかな肌に口づけをする。


リンゴ
「ーーんっ……ヴェルン…ヘル……」

口づけに体がピクリと反応し声が漏れる。その反応は恐る恐る妻を組み敷いていたヴェルンヘルを煽った。

ヴェルンヘルの唇が首筋から徐々に下へと降りていく。

リンゴの腕は押さえられていてヴェルンヘルを止めることはできない。


リンゴはどうしようと思考を巡らせる。
王妃としての役目だと受け入れればいい……

そう思ったとき。


リンゴ
「ーーーーーー!」

リンゴの顔がひきつり、声にならない声をあげた。


ヴェルンヘル
「?!……リ、リンゴ……?」

拒絶にしても何かおかしいと感じ、身体を起こすとリンゴはひきつった顔のまま天井を指さした。


ヴェルンヘル「天井…?」

指をさされたほうをみると、天井に黒いシミがあった。

よく見るとそれはシミではなく、カサカサと動いて、二人のいるベッドの脇に落ちてきた。


リンゴ
「いやーーー!」

恐怖のあまりリンゴは起き上がり、ガバッとヴェルンヘルに抱きついた。恐怖に恐れ慄くリンゴの身体をヴェルンヘルはぎゅっと抱きしめた。


リンゴ
「か、カサカサしてる!」


ヴェルンヘル
「お、追い払う…!」

ゴクリと唾を飲み込み、緊張した面持ちでヴェルンヘルが動こうとするが


ヴェルンヘル
「っと……少し離れてくれないかな」

恐怖で震えるリンゴの耳元で優しく囁いた。

無我夢中で抱きついてきたリンゴはがっしりとヴェルンヘルにしがみついていて、押し倒しそうな勢いだった。


リンゴ
「び、びっくりして……… 腰が抜けちゃって…」

腰が抜けたリンゴは自分の意思でヴェルンヘルから離れることが出来なくなっていた。

柔らかい感触が押し付けられてきてヴェルンヘルは触れたい衝動に駆られる。
(今はあのカサカサをなんとかしなければ……)


リンゴ
「やーー!動いてる!あっちいった!!」


ヴェルンヘル
「お、落ち着いて」


リンゴ
「ヴェルンヘルも怖いんでしょ!心臓バクバクしてる!」


ヴェルンヘル
「こ…こ国王がGごときを恐れるなど……」

Gが壁に張り付くと、羽根をはばたかせて二人めがけて飛んできた。


「ーーーーーーーー!!!」


この日、王家の居室は大変賑やかで、騎士隊長がGを退治するまで続いたという。


゜+.――゜+.――゜+.――゜+.――゜+.――


翌日欠伸をしているヴェルンヘルにイマノルが声をかけた。

イマノル
「陛下眠そうだね〜」


ヴェルンヘル
「イマノル隊長か……昨夜はあんまり寝ていない」


イマノル
「なになに?またどこかの女性とお楽しみ??そんなことしてるとリンゴにまた嫌われるよ〜」


ヴェルンヘル
「そういう意味で寝不足ではない」


イマノル
「ふ〜ん??………リンゴとは仲良くやってんの?」


ヴェルンヘル
「………それなりに…」


イマノル
「ふ〜ん、じゃあ、それで寝不足とか??」


ヴェルンヘル
「あれはあれでなかなか良かった」

昨夜の恐怖で抱きついてきたリンゴの様子と感触を思い出し満足そうに笑った。


イマノル
(どんなプレイしてんだ?)
「へー……」

ツッコミにくいのか適当に相槌を打つイマノル。


ヴェルンヘル
「ところで、イマノル隊長はGがでる変な箱を持っているらしいと聞いたが」


イマノル
「え?!しょ、処罰?!」

過去にそれで騒ぎを起こしたことがあるイマノルは咎められると思い慌てた。ヴェルンヘルはそんなイマノルに「違う」と人懐っこい笑顔を向けた。


ヴェルンヘル
「しばらく貸してもらえないだろうか」


イマノル
「あれを?!いや〜やめた方が……リンゴにうっかり使うと次は心臓止まっちゃうかもだよ?」


ヴェルンヘル「大袈裟な」


イマノル
「ほんとだって。あんなにウジャウジャ出たら虫嫌いな奴は身の毛もよだつ思いをして、それが陛下の仕業だって知ったらリンゴに嫌われてちゃうよ〜」

それでリリーは抜刀するわ、リンゴはティアゴに抱きつくわ、それを見たリリーが怒り大変な騒ぎになった。そんなことをイマノルの口からは言えるはずもないが。


ヴェルンヘル
「………それは困る」

これ以上の好感度低下は避けたいところ。ヴェルンヘルは諦めることにした。


イマノル
「陛下が悪戯しようとするなんて珍しいね〜」


ヴェルンヘル
「………今の。誰にも言うなよ」


イマノル「わかってるよ、陛下!」

イマノルはニヤニヤと笑っていた。


ヴェルンヘル
(この男………こういう案件は全く信用できないな)

半眼で睨むと、ヴェルンヘルはマントを翻しその場を後にした。

゜+.――゜+.――゜+.――゜+.――゜+.――





(きっと、この場所は
感傷に浸ってしまうから本当はこない方がいいのかもしれない……)


夕刻、例の花畑にやってきて、リンゴは寝っ転がった。

春の花の匂いが鼻を刺激する。

空は夕焼けのオレンジ色の空が広がっていた。


昨夜、騎士隊長のディーンが騒ぎに気づきやってきて、ちょっと呆れた顔でGを退治してくれた。

ディーンが帰り、子供たちもベッドに戻ったあと、


リンゴ
「ご、ごめんね、しがみついちゃって……」

リンゴがしがみついてしまったせいでヴェルンヘルはGを追い払うこともできず身動きがとれなかったのでそのことを詫びる。


ヴェルンヘル
「……いや……さっきので、しばらく生きていける」

リンゴ
「ーーへ?」


ヴェルンヘル「こっちの話」

緩んだ顔をコホンと咳払いして誤魔化そうとしながら引き締める。

嬉しかったのを悟られないようにしているようだが、珍しくヴェルンヘルはそれを隠せていなかった。

そのままその日は就寝した。


リンゴ
(私から抱きついたくらいで……
あんなに喜ばなくても……)


戸惑う心から目を背けるように、リンゴは瞼を閉じた。


そのまま深い深い眠りについた。



深い眠りに落ちていった。









太陽の君②に続く。