任天堂Switch版エルネア王国をもとに書いています。
このお話はあなたがいない世界の続きです。
本当は気付いていたのかもしれない
もうそんなに長くないことを。
ティアゴ君
あなたは私の心を照らす光でした……
ティアゴが亡くなった翌日………彼がいないということを実感し、彼とよく過ごした場所でリンゴは悲しみに暮れていた。
失意のどん底の中、その涙が枯れることはなかった。
暗闇の中にリンゴのすすり泣きが響くなか、それを心配そうに見ている人の姿があった……
゜+.――゜+.――゜+.――゜+.――゜+.
イマノル
(アイツ大丈夫かな……後を追ったりとか変なこと考えなきゃいーけど…)
悲しみに暮れて思い詰めたリンゴが妙な真似をしないか心配したイマノルが様子をみにきていた。
イマノルはリンゴの事情をよく知る数少ない人物の1人……
リンゴがいるこの場所は、地図にのっておらず国民のほとんどが知らない場所。
イマノルがティアゴに逢引に使える場所として教えて、ティアゴがリンゴをこの場所に連れてきた経緯がある。
人目を気にせず過ごせる場所として、リンゴはティアゴとよくここで過ごしてきた。
女の影がチラつくヴェルンヘルの決定的に近いシーンに遭遇してから暗闇にいたリンゴを救ったのはティアゴだった。
リンゴの喪失感、失意は相当なものだった。
慕っていたティアゴの死にリンゴの身を案じてその姿をこっそり見ようと思っただけだったのだが、
イマノルは意外な人物の姿をそこで見つける。
この場所は、
イマノル、アルシア、リンゴ、ティアゴしか知らないはず。
それ以外の人物が、佇んでいた。
リンゴが泣いている場所から離れて、リンゴの姿が目視でき草木で自分の姿を隠すことが出来る場所で心痛な面持ちでリンゴの様子を見つめている。
イマノル
「………なんでこんな場所にいんのー?」
イマノルはその人物に少し声のトーンを落としながらもいつも通りを装って問いかける。
???
「………特に用はない」
声をかけられてその人物はフッと表情を消した。
黒い目からは何の感情も読み取ることはできない。
イマノル
「珍しいね、ここにいるのはじめて見た」
イマノルは内心ハラハラしていた。
何故ここを知っているのか、いつから知っているのか、よくきていたとしたらこの場所をティアゴたちに教えた張本人であるイマノルは秘密が露呈させるキッカケを作ってしまったかもしれないと危惧していた。
頭の中で思考を巡らせながらもいつものような陽気な声で相手に聞く。
しかし相手は答える気はないようでフイッと視線を逸らせた。
その様子は「その人らしくなかった」
イマノル
「……リンゴの側にいってあげたらいいじゃん」
???「……………」
答えず、その人物の視線は暗闇を彷徨っている。
イマノル
「言葉にしなきゃ伝わないよ。だからここまでこじれてるんだろーけどさ」
???
「…失礼する」
イマノルの前を通り過ぎて、帰ろうとするその人物の腕をイマノルが掴んだ。
イマノル
「だから、なんでリンゴの所にいってあげないんだよ、ヴェルンヘル陛下!」
名前を呼ばれたヴェルンヘルがイマノルと目を合わせる。
ヴェルンヘル
「………俺がいってもリンゴは喜ばない」
ヴェルンヘルの瞳は見たこともないくらい暗い色を浮かべている。すぐに下を向いてその表情は見えなくなる。
その表情にイマノルは内心動揺した。
この場所がリンゴにとってどんな場所であるのか…
…その場所にきているのにヴェルンヘルが何故リンゴの前に姿を現さないのか…
ヴェルンヘルは、リンゴがここで他の人間と会っているのを見たことがあるのではないか…?
イマノル
「陛下がわざわざきたら慰めになるんじゃないかなー?」
いつも通りの装いながら相手の反応を伺う。
ヴェルンヘルは何も答えず黙っている。
イマノル
「ここいい場所だよねー。景色がいいし人はこないしさ…」
いつの間にかイマノルの手を解いたヴェルンヘルが離れていく。
イマノル
「このまま、お互いに気持ちを言わないままでいいの?」
遠ざかる背中に投げかけると、歩みがピタっと止まった。
数秒考えているようだったが、答えることなく再び歩きだす。
普段は温和で人の良さそうな笑顔を国民に振りまき老若男女に好かれるヴェルンヘル。
しかし………
目の前にいるその人からそんな雰囲気は微塵もなかった。
風が吹いてヴェルンヘルの纏うマントが揺れる。
ヴェルンヘル
「俺がここにきたことは、リンゴには言わないでほしい」
そう言い残してヴェルンヘルの姿は闇に呑まれるように消えていった。
イマノルは何も言わなかった。
ヴェルンヘルが消えていった闇をしばらく見つめていた。
あとがき
本年はお世話になりました。
いつも駄文にお付き合いくださりありがとうございます。閲覧、コメント、メッセージ、いいね、とても励みになっています。ありがとうございます。
年末年始多忙のため、しばらくお休みします。