任天堂Switch版エルネア王国をもとに書いています。
先日の地震で被災された方々には心よりお見舞い申し上げます
地震は本当に怖いです..(>_<)
今回ちょっと長いですが、爆弾魔の話はここで終わります。
前回は212年 爆弾魔
伏線 212年 爆弾魔の噂
爆弾魔は誰か分かったでしょうか?
簡単すぎちゃったかなー...
「・・・なんで、ここにいる?」
聞き慣れた声が戸惑いを隠しきれずにいた。
敵を欺くなら味方からとはよく言うなと思った。
騎士隊がパトロールすると言っていたのに、
魔銃師会のティアゴとXがそこに立っていて、リンゴを見つめていた。
X
「ど、どういうこと?リンゴちゃんが、爆弾魔なの?」
Xは困惑していた。
リンゴ「・・・」
ティアゴ
「・・リンゴ、説明してくれる?爆弾魔がいた場所になぜいるのか。リンゴもパトロールにきてくれたの?」
そうだってあってくれというティアゴが思っていることがリンゴにはよく分かった。
ティアゴの言う方が正しいが、リンゴは頷くことはしなかった。
さっきの人が爆弾魔と呼ばれる人なのは明白だった。
でも、リンゴにはあの人を捕まえることも
あの人のことを二人にいうことは出来なかった。
リンゴ
(私はヴェルンヘルに約束した...ヴェルンヘルを守るって...あの人が捕まったら、ヴェルンヘルは...)
リンゴ
「そんなの聞かなくても分かるでしょ」
リンゴはため息をついてから、二人を真っ直ぐに見つめた。
「私が、みんながいう爆弾魔なんだよ」
絶句したティアゴとXを、リンゴは感情を押し殺した目で見つめる。
冬の冷たい風が三人を吹きつけていた。
三人はしばらく無言だった。
暫くの沈黙のあと、
ティアゴはようやく、口を開いた。
ティアゴ「・・移動しよう。エリオンの調薬室に」
X「わかった」
ティアゴはリンゴの肩をグイッと力強く抱き寄せると、転移魔法でエリオンの調薬室に移動した。
長椅子にリンゴを座らせると、その前に仁王立ちするようにティアゴが立ち見下ろしていた。
X「えっと..リンゴちゃんがやってたの?
どうして?」
(ティアゴ・・めっちゃ怒ってるわね・・)
リンゴ
「調薬に失敗したら、爆弾が出来てしまい、処理に困って魔物に投げていました」
リンゴは顔をあげると、怖い顔をしたティアゴがいるので、下を向いたまま抑揚のない声で淡々と説明した。
X「この前、ティアゴが言ってたやつじゃない。当たってたのね...」
Xは複雑そうな声を出してティアゴを盗み見た。
ティアゴ「・・いやいやいや・・」
ティアゴはリンゴの言葉を全く信じていない顔をしていた。
ティアゴ
「自分が何を言ってるか分かる?もしそれが本当だとしたら魔銃師会にいられなくなるかもしれないし、これから立場が悪くなるよ。導師になりたくて探索頑張ってたんだよね?全部無駄になるよ」
リンゴ「・・!」
リンゴは僅かに動揺したが、スカートをぎゅっと掴み、俯いた。
「仕方なかったの、爆弾を処理しないといつ爆発するか分からないし...まさかこんな騒ぎになるとは思ってなかったから...」
ティアゴ
「・・・少し、ここでまっててくれる?」
ティアゴはリンゴにそういうとXを連れて階段を上っていった。
二階の資料室につくと、水槽の前でティアゴは大きなため息をついた。
X「まさかリンゴちゃんが...」
ティアゴ「Xさん...リンゴじゃないんですよ」
X「ティアゴがリンゴちゃんを庇いたい気持ちは分かるけど..」
ティアゴ
「そうじゃないんです。本当にリンゴじゃないんです」
X「どういうこと?」
ティアゴ
「・・・・爆弾魔が現れたのは、18日頃から。21日まで毎日現れていたと聞いています。出現時間は夜2刻から3刻。リンゴには20日アリバイがあります」
X「アリバイ?」
ティアゴ
「・・・リンゴは20日、夕刻4から夜4刻まで俺と一緒にいました」
X
「あら、そうなの、じゃあどういうことかしらってなると思うの、ティアゴ。」
Xはジロリとティアゴを睨んだ。
「そんなに長い時間どこで何をしていたの?ダンジョンとは言わせないわよ」
ティアゴ
「えっと..場所はちょっと言えません..」
X「空き部屋?邸宅?」
Xは、二人がいかがわしいことをしていたとしか思えてならないらしい。間違ってはないけど、、
ティアゴ
「屋外ですよ、雑談していたんです..」
X「雑談、ねぇ...で、リンゴちゃんから目を離してないのね?夜4刻までずっと面と向かって話していたの?」
ティアゴ「・・・」
X「どうなの?」
ティアゴ「それが、途中で寝てしまって..」
後々、リンゴが寝たことを口にすればXにいずれバレることを考えると、Xに正直に言えことを選択した。
X
「途中で寝ちゃうって、どこで喋ってたら寝ちゃうのよ。ティアゴが寝た時にリンゴちゃんが抜け出せば、爆弾騒ぎは可能になるけど」
ティアゴ
「リンゴが抜け出すのは多分無理だと思います」
X「どうしてそう言い切れるの?」
ティアゴ
「それは・・・」
あの日、ティアゴの腕枕でうたた寝してしまったリンゴだが、ティアゴとリンゴは身を寄せ合って、ティアゴがリンゴを抱きしめて眠っていたとイマノルが酒場で意地悪そうな顔をして言っていた。
それが本当なら、リンゴはティアゴに気づかれず抜け出して戻ることは困難だろう。
X「それは?」
ティアゴ
「・・・・・ね、寝てたらリンゴを抱き枕にしてたらしくて. 、リンゴは身動きとれなかったと思う・・」
もごもごと口ごもりながら説明すると、Xは呆れた顔をした。
X「「・・・あんたたち何やってるの」
ティアゴ
「・・・すみません・・リンゴが枕っぽいから」
どんな言い訳だ。
X「・・分かった。(枕っぽいって…)それが本当だとしたら、リンゴちゃんは誰を庇ってると思う?」
話が進まなくなるので、とりあえずティアゴとリンゴの追求をやめて話をすすめる。
ティアゴ
「うーん・・殿下とか?でもどうやって爆弾を手に入れるんだ?」
X
「王族なら手に入るわよ。エルネア城にはね、地下に武器保管庫があるの。そこに爆弾も保管されているの。殿下なら、庇わなくても大事にならなそうな気もするけど...殿下、くらいしかいない..?」
ティアゴ「・・・・・」
X「リンゴちゃんが庇うのは殿下やセイ君や、モモちゃん..リリーはこんな馬鹿なことしないだろうし...でも庇うって..被害がないのに庇う必要ってあるのかしら...」
そこまで言ってXはハッとした。
エリオンの調薬室に、ティアゴだけが戻ってきた。
ティアゴは長椅子に座るリンゴの前で膝を折って、視線をリンゴと同じ高さに合わせると
「この前、爆弾魔は自分と無関係だと俺に言ったよね?俺に嘘ついたの?」
リンゴは思わず息をのみ、視線を逸らそうとするが、ティアゴは両手でリンゴの頰を挟むと真っ直ぐに視線を合わせた。
ティアゴ「誰をかばってるの?」
リンゴ「だれも...庇ってない..」
ティアゴ
「リンゴは爆弾魔になれない。爆弾魔が現れた20日は夕刻から俺と一緒にいたでしょう?紛れもなくリンゴのアリバイは俺が知ってるんだよ」
リンゴ
「途中で景色みながら寝ちゃったよね。その時に...」
ティアゴ
「実はあの時、リンゴが寝るのを俺見てたんだよ。その後に俺が寝てしまって..しかも俺、リンゴを抱き寄せて寝てたってイマノルがいってたよ。つまり、リンゴは抜け出して爆弾を投げに行くことは無理だと思う」
ティアゴの双眸は、恥ずかしそうに下を向いた。
こんなことにならなかったら、きっとティアゴはその事をリンゴに伝えることはなかっただろう。
リンゴ
「えぇ?!寝てたから気づかなかった..」
そんな美味しい?ところを全く気づかなかったなんてなんたる不覚!とリンゴは内心思った。そしてこの発言こそが、リンゴが途中で目を覚ましていないという自白でもある。
ティアゴ
「俺やXさんはリンゴの味方だよ。昔から、そうだったしこれからもそうだよ」
リンゴ「_____」
足音がした、Xが調薬室に入ってきた。
ティアゴ
「____庇うならそれでもいいよ。その人に二度とあんな真似はさせないで」
ティアゴは立ち上がり、階段に向かう。
X「どこにいくの?」
ティアゴ
「出頭します。俺が爆弾魔ってことにします」
リンゴ「え?!」
ティアゴ
「俺はリンゴを支えるし守るって誓った。リンゴを爆弾魔として騎士隊に差し出すことはできない。なら、代わりに俺が出頭する」
リンゴ
「そんなのダメだよ!ティアゴ君はそんなことしてないのに!」
ティアゴ
「それはリンゴも同じだろ?魔銃師会をクビになっても、蓄えはあるし気ままに昼寝しながら暮らしていくよ」
リンゴ
(みんなを守りたいのに、これじゃあ、ティアゴ君が大変なことになる...)
「待って!!!」
リンゴは立ち上がりティアゴの服の端を掴んだ。
「お願い、それはやめて。本当のこと言うから」
罰を受けるべき人が受けないで、ティアゴが罰を受けるのは絶対にあってはならない。
観念した。
リンゴの目論見は、あっという間に終わってしまった。
ティアゴとXにかかれば、リンゴの浅知恵など無駄なことでしかない。
リンゴは長椅子に再び座り、Xもその隣に座る。
ティアゴは壁にもたれかかっていた。
X「説明してくれる?」
リンゴ
「・・・さっき、爆弾を持ってる人を見ました。だから爆弾魔はこの人だろうと。でも、捕まえられませんでした」
X「リンゴちゃんの知ってる人だったのね?」
リンゴはコクリと頷いた。
ティアゴ「それは、誰だった?」
リンゴはスカートをぎゅっと手で掴み、瞳を閉じた。
リンゴ「______ギオルギー君」
リンゴの口から出た人物にXは睫毛を伏せた。
セシリアが生まれるまで、王位継承法権第2位の王子であり、リンゴの幼馴染。
ティアゴ
「・・なぜギオルギーを庇うの。ヴェルンヘル殿下を守るって約束したことと何か関係があるの?」
リンゴ
「・・ギオルギー君は、ヴェルンヘルと仲がいい。ヴェルンヘルはギオルギー君を信用している。でも、被害はないとはいえ爆弾を投げていると知れば、ヴェルンヘルはギオルギー君を危険視するかもしれない...仲のいい兄弟が、仲違いするかもしれない」
X
「リンゴちゃんは、ギオルギー君をレッドと重ねたのね。レッドも同じ第2王子、そして、疎まれ毒薬を飲まされ、生き延びても大人になってからも存在を危険視され邪魔者扱いされて...」
わ
リンゴ
「この国は王家のそういう問題はない国だとXさんは言いました...でも、キッカケがあれば簡単に脆くて崩れてしまうかもしれません。私はヴェルンヘルがギオルギー君をそんな目でみるのも陛下がギオルギー君に罰を与えるのも見たくはありません...」
ヴェルンヘルはこの平和な国を
砂上の楼閣と喩えて言った。
ギオルギーの爆弾は、その楼閣を簡単に崩してしまうかもしれない..
ティアゴ
「理由は分かった...しかしリンゴが罪を被っても根本的な問題の解決にはならない。なぜギオルギーがこんなことをしたのか。改心したとしても、爆弾魔を捕まえない限り、皆不安を抱いたまま過ごすことになるだろう。特に郊外通りに住んでる人は、外門から比較的近い。農場管理官たちは不安だろうな」
*郊外通りに住むのは大半が農場管理官たち。
ティアゴの兄も、そのお嫁さんも農場管理官。
二人からティアゴは直接爆弾の話を聞いている立場にあるので簡単になかったことにはできないと考えていた。
ティアゴ
「・・ギオルギーがイラつく理由も分かるけど」
X「というと?」
ティアゴ
「リンゴが成人した年、まだ子供だったギオルギーにリンゴが言ってたんですよ...結婚してやってもいいって言うギオルギーにかっこいい大人になったらねって。ギオルギーをたぶらかしてました」
リンゴ「た、たぶらかしてなんて..」
ティアゴに王子を惑わすな、穢すなと怒られた記憶がある。
ティアゴ
「で、成人したら兄貴とくっついてしまう。王子は裏切られたと思いながら生きていく..兄貴が王位につくのも遠い話ではないだろうし」
リンゴ「私のせい...」
ティアゴ「・・ごめん、言いすぎた」
リンゴ
「私、ギオルギー君に会って説得してくる。もうこんなことはしないでって」
ティアゴ「それはやめた方がいい」
立ち上がろうとするリンゴをティアゴは肩に触れて制した。
リンゴ「どうして?」
ティアゴ「・・リンゴだと、危ないと思う」
リンゴ
「ギオルギー君は人に危害を加えるようなコじゃないよ」
ティアゴ
「でもギオルギーは昔、リンゴのことを好きだったんでしょう。何されるか分からないよ。代わりに俺が行く」
X「ティアゴじゃ、火に油を注ぐだけだと思う」
ティアゴ「心外です」
X「ギオルギーは、私がなんとかする。それよりも、この爆弾魔騒ぎを終わらせる必要がある。」
Xは、封筒を取り出すとそこにお金を束を入れた。
リンゴ「なにを..?」
ティアゴ「なるほど、そーゆーことですか」
ティアゴもポケットからお金を取り出してXに渡した。
X「ティアゴはいいから、子供たちに何か買ってあげなさい」
ティアゴ「そうはいきません」
ティアゴは強引に、自分のお金を封筒に入れてしまった。
リンゴ
「どういうことですか?よく分からないんですけど。お金が必要なら全部私が出します!」
札束をだそうとすると、Xは手でそれを制した。
X「この国の平穏を望むのは、リンゴちゃんだけじゃないってことよ」
Xとティアゴは優しげに笑った。
Xの考えたこと。
架空の犯人を作る。
それには、ある人物の協力が不可欠だった。
カネと、導師、X、次期王妃が頭を下げて協力を要請する。
ミアラさんは渋々、書類作成を承諾してくれた。
架空の旅人を作り出し、その人を犯人とする。
X「犯人の顔を私とティアゴはみた。しかし、犯人はあろうことか、魔物がいる荒野に逃げて行ってしまった。私たちが追跡を断念せざるおえない理由はこれで十分だと思う」
ティアゴ
「問題は、ギオルギーですよ。また同じことをされたら全てが水の泡です」
X「私が話をつけてくる。説得できなかったら明日、三人がかりでやりましょう..導師はリンゴちゃん、お家まで送ってあげて」
Xは転移魔法でギオルギーの元へ向かった。
Xがいなくなると、ティアゴはリンゴの腕を掴み、再び調薬室に連れてきた。
ティアゴ
「・・ギオルギーの身代わりになろうなんて、何考えてるんだよ!」
導師はかなりお怒りだった。
リンゴ「ご、ごめんなさい...」
こんなに怒ってるティアゴは見たことがない。リンゴは身を縮めて謝り、怒りが収まるのをただ願うばかりだった。
ティアゴ
「..ったく..リンゴは、なんでそんなに危なっかしいんだ..」
はぁーと大きなため息をついて、ティアゴはしゃがみ込んだ。
リンゴ「本当にごめんね..」
リンゴもしゃがみ込み、ティアゴの顔を覗き込むと、ティアゴは気恥ずかしそうに視線を逸らして帽子を目深にかぶった。
リンゴ「・・?」
ティアゴ
「ったく、あの日抱き寄せて寝てたとか、黙ってるつもりだったのにまさかこんな形で自分で暴露することになるなんて...」
昔、二人がこんな関係になる前..
ティアゴがふざけてリンゴに俺の相手してくれるの?といってリンゴもふざけて相手になってあげる、その度胸があるならねと返したことがある。
ティアゴは怯むどころか、リンゴにキスをするフリをしてリンゴが慌てふためいてしまった。ティアゴはその時も余裕で笑っていた。
それが、こんな事でこんなに恥ずかしそうにしている。
リンゴは目の前の人が愛おしくてたまらなくなって、クスクス笑った。
ティアゴ
「俺は怒ってるんだからな..」
リンゴ「うん♪」
ティアゴ「反省しろよ、Xさんにも心配かけて」
リンゴ「うん♪導師、大好きだよ♪」
ティアゴ「バカにしてるだろ..」
リンゴ
「ティアゴ君が可愛いなーって思ってるだけ」
ティアゴ「その減らず口、今度塞いでやる..」
物騒な物言いをしてティアゴは立ち上がるといまだに気恥ずかしそうな表情を浮かべながらむすっとして手を差し出してきた。リンゴが手をだすと、ぎゅっと手を繋いだ。転移魔法で、ティアゴとリンゴはリンゴの自宅前に移動した。
ティアゴ
「今日はもう休んで。俺は心配だからXさんの後を追うから。リンゴはなにも心配しなくていいよ」
リンゴ「...ありがとう。お願いします」
冷たい風がエルネア城に吹き付け、澄んだ空には満天の星空が広がっていた。
エルネア城の評議室の近くで、ギオルギーはぼんやりと立っていた。
X「こんばんは、ギオルギー」
Xはゆったりとした動作でギオルギーに近づいた。
X「私がきた理由、分かるわよね?」
ギオルギー「・・・・・」
顔色ひとつ変えず、特になにも反応をしないギオルギーは、かえってその態度が頑なに心を閉ざしているように見えた。
いつもの穏やかなギオルギーの面影は、そこにはなかった。
X「リンゴちゃんが自分が爆弾魔だって言ってるんだけど」
ギオルギー「え?」
ギオルギーは眉をひそめたXを振り返った。
X「でもリンゴちゃんにはアリバイがあるの。証言する人もいるから、リンゴちゃんは白」
ギオルギー
「俺が犯人だって聞いたんですね?バレちゃったなぁ」
ギオルギーは自嘲気味に笑った。
X
「そのリンゴちゃんを庇おうと導師が爆弾魔として出頭するって言い出して、ようやくリンゴちゃんは本当のことを話してくれたの。分かる?ギオルギー、あなたのやったことで他の人がどんな目にあおうとしたか」
ギオルギー
「庇う必要なんてないのに..」
X「それだけあなたの事をリンゴちゃんは心配してる...あなたの心の闇を本当の意味で解る人はこの国にはいないと思う..でもね、あなたのよく似た人を私やリンゴちゃんは知っている。この国から、その人と同じ道を辿る人は、絶対に出さないから」
Xはギオルギーの手をとった。
「あなたは一人じゃないの。みんな貴方の味方なのよ」
ギオルギー「・・・・・」
ギオルギーは無言だった。
冷たい冬の風が、Xとギオルギーの頰に叩きつけられる。
沈黙のあと、Xはギオルギーの手を握る手に力をいれた。
X「・・なぜ、あんなことをしたの?」
ギオルギー
「・・・・なんとなく」
X「ヴェルンヘル殿下が原因?陛下?」
ギオルギー
「・・兄さんや母様はなにも悪くない..」
ギオルギーは俯いた。
「俺のこころが...弱いから……」
「ギオルギーもリンゴも、一人で抱えすぎなんだよ。もう抱えなくていい。俺やXさん、リンゴがその荷物一緒に背負うから」
いつのまにかやってきたティアゴの言葉にギオルギーなんて言えば分からず視線を彷徨わせた。
X
「私たちがついてるんだから大丈夫よ、ね、ギオルギー。もう大丈夫。」
ギオルギーは虚ろな目でXを見たあと、暫くしてようやくコクンと頷いた。
ギオルギーに二度とあんな事はしないと約束させた後、ティアゴと共にXは騎士隊長であるリリーに報告にいった。
しかし。
リリー「本当に旅人が犯人なのー?怪しい..」
リリーが具合が悪くなった時に色々画策して周囲を欺きリリーを守った二人の言うことにリリーは疑いの眼差しを向けたが、
「まあ、そーゆーことにしておきましょう。もし面倒な事になったらカミングアウトしてね。事情知らないと守れないから」
深くは追求しない、とリリーはこの一件を終了とした。
リリーは二人を信用していた。二人が嘘をついていたとしてとそれは、誰かのための優しい嘘だと信じていた。
翌朝。
食卓につくと、リンゴはまだ眠そうなヴェルンヘルに向かって言った。
リンゴ
「爆弾魔、だれか分かったみたいだよ。もう現れないって」
ヴェルンヘル
「そう・・あいつ捕まったんだ」
リンゴ「・・あいつ・・?」
ヴェルンヘル「ん?犯人誰だったんだろ?」
相変わらず眠そうな目をしている。
リンゴ
「旅人だって。荒野に逃げたから追跡できなかったみたい。顔も名前もわかってるからもうこの国には入ってこれないよ」
ヴェルンヘル
「そっか...」
リンゴ「・・・」
ヴェルンヘル
「この国の平和はみんなの知恵と優しさで保たれてるんだなぁ」
グリーンジュースじゃない朝食を食べおえると、
「さて、今日は何しようかな。」
ヴェルンヘルは穏やかな笑みを浮かべながら外出して行った。
この時、リンゴは確信した。
ヴェルンヘルは、気づいていた、と。
あとがき
拙い文章を読んでいただきありがとうございます。
この後、
本編は年末、エルネア杯開催の213年突入。
パラレルワールドのリンゴの話を挟みたいけれど..
肝心のゲームをする時間がない...!!!
昨日もトラブルがあって午後潰れるし!
夜も潰れるし!!
時間が欲しい...!