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モーツアルト

先週末、オーストリア人のお友だちを誘って、ヴァイオリン・フェスタ・トウキョウという名のコンサートを聴きに行った。


そのとき彼女が私にオーストリア名物のチョコレートをくれた。旅行のガイドブックでも見たことのある、モーツアルトのチョコレート。「すっごく甘いのよ~」と言っていたとおり本当にチョコレートやガナッシュが濃厚な味でとても甘かったが、とびっくり甘くても美味しいものは美味しいのだと思った。
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近ごろ、「甘くなくて美味しい」という概念が日本の美食業界にはびこっているけれど、それはただ単に、「甘いだけで美味しくない」ものが植えつけたまやかしのような気もする。たしかに、素材の味が一番大事かも知れないが、それは裏を返せば、本当に美味しいものは、しっかり甘くてしっかり美味しいということになる。


モーツアルトのチョコレートをもらったときに、「そういえばオーストリアでは1ユーロ硬貨はほとんどモーツアルトなの?」と、ちょっと当たり前すぎるようなことを聞いてみたら、案の定「そうよ」という返事。モーツアルトの硬貨をフランスで1枚見つけて、いまだに大事に手元に置いている私からしたら、お釣りがモーツアルトの硬貨で払われたら、それっきりその硬貨は使う気がしなくなって貯金が貯まるばかりだろうになんて思ってしまう。


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このヴァイオリン・フェスタ・トウキョウというコンサートは、東京とパリとで、構成は異なるものの同じ雰囲気でひらかれる、主に若手の日本人ヴァイオリニストによる演奏会。パリ8区の Miromesnil の Salle Gaveau という会場には、「ここは日本ですか?」というくらい、たくさんのアジア人の顔をした人々が来ていて、なかにはなんと、和服姿でおでましの人までいた。何というナショナリズムか。


そもそもは、イタリア人のお友だちが日本人の知人からこのコンサートの招待券をもらったらしいのだけれど、当日はそのイタリア人のフィアンセがパリにやってくるので聴きに行くどころではないし、おそらく日本人がたくさん来るような演奏会に違いないからということで、私にチケットを譲ってくれた。


コンサートの感想は、<とても良かった>。日本のテレビでちやほやされている<タレント>っぽいヴァイオリニストより全然、名家の演奏を学んでいる感があって聴きやすかったし、弦楽器の弦の音色や楽器の木の質感が感じられさえもした(ホールの音響も良かった)。なお、東京公演は日本人演奏家ばかりのようなのに対し、パリ公演には2人のヨーロッパ人演奏家も含まれていて、彼らの演奏はじつに見事だったし、彼らのセンスとか、体格とか、育った大陸の広さとかの圧倒的な違いを感じさせられた。