Text or Nothing -308ページ目
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美声の車掌さん

昨日の朝ふと、昨日までが締め切りだった用事を思い出した。いっそ失念してしまいたかったが、一旦思い出すと踏ん切りが悪く、自分を励ますためにもあえて応募することに。メール添付する書類がなかなか仕上がらず、ひとり言を言いながら普段の100倍集中してケリをつける。

それにしてもすごい集中力だった。なぜ普段からあのようにできないのだろう?

家を出たのは14時半。ただでさえ土日は図書館が19時に閉館だからたいして捗らないというのに、まして到着が遅くなるとは…時間が惜しい。

というわけで、一刻も早く図書館に着きたい気持ちでいっぱいだったあせる

が、あろうことか、丸ノ内線に乗り換えて1駅目の新大塚で、美声の車掌さんからとんでもないアナウンスが。

「お客様に丸ノ内線運転見合わせのお知らせを致します」。

なかなか丁重で誠意のある声色に口調なだけに、してやられた感のあるあっけなさ。聞けば後楽園で発煙したため点検しているとか。

それにしても、車掌さんの声がすてきだった。べつに小田和正や緒形直人を凌ぐほどではない。だが、自分はこの声が好きだと思った。これまでに聞いた営団地下鉄&東京メトロの車掌アナウンスの中で好感度No.1。こんな声の人が現れたら、一目も見る前から一目ボレしてしまうかもしれない合格

結局下車して春日通りを3駅分歩くこと小1時間。後楽園駅そばに差しかかった頃には、高架上に丸ノ内線の車体が見えて運転を再開したもよう。しかし外の空気を吸いたくて、あえて歩き続けることに。

おかげでなかなか健康的だったし、時間がないと言って齷齪(「あくせく」と読むらしい。コンピュータが変換してくれたのだが、手書きならば平仮名でしか書けない語を、IMEに頼って漢字にするのはおこがましい感じがする)していた狭い心も幸い風通しが良くなった。

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歩きながらについて考えてみた。

声は顔や指紋のように、人それぞれにいろいろさまざま。人物がその場所には不在でも、亡霊のごとく聞こえてくる声。声の存在感は計り知れない。

某国に滞在中、どうしようもなく心が弱って不貞寝してしまったときにふと、夢の中で誰かが自分の名を呼ぶ声にはっと目覚めたことがある。若い頃の母の声だった。あまりに遠い国に来てしまった自分の愚かさに泣けた。

ひょっとすると自己存在もまた ― 水面に映る鏡像をほかにすればだが ― 、心に響く自分の声によって感じられるのかもしれない。声帯から出て、振動となって空気を伝い、耳に届いて音となり、声となる…。Incarnation から desincarnation へ。声の正体は一体何だろうはてなマーク
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