Text or Nothing -294ページ目

Philosophy

There are more things in heaven and earth, Horatio.
Than are dreamt of in your philosophy.


言わずと知れたハムレットの科白。

翻訳もなかなか polemic 。
名訳として知られる訳は「ホレイショー、この天と地の間には人智の思いの及ばぬこともたくさんあるんだよ」のような感じ(要確認)。

つい先日物知りの知人がこの箇所をメールに書いてくれたのだが、おかげで『ハムレット』全体はもちろん、とりわけyour philosophy の訳し方にあらためて感銘を覚えた。

philosophy が「人智」と訳されている。翻訳家、それも昔の翻訳家というのは、言葉を良く知っていて、訳文に味わいがある。

たしかにラテン語の philosophia のもとは「知を愛する」という意味のギリシア語である。哲学のほか「愛智」と訳されることもあるという。そういえば「智」の字を用いて名づけられた四谷駅前の大学は別名 Sophia だ。

のみならず「思いの及ばぬこと」もまた名訳と呼ばれるに値する。「の」というのは、たった一文字なのに、そこからその人の日本語がすべて見えてくるような、そんな言葉の要であり、言葉のしなりどころでもある。

<比較>
「人智の思いの及ばぬこと」(名訳)
「哲学が夢見もしなかったこと」(拙訳というか試訳)

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ところで、「~学」というとき、 "…logy" という形であることが多い。
ecology, biology, psychology, theology, philology, geology
これらは「~についての学問・~についての理論」ということか。

いっぽう -logy のつかない学問がある。
哲学 philosophy
文学 letters
歴史 history (日本語に「学」がついていない?)
医学 medical
数学 mathematics
科学 science (ただし、意味は時代的変遷を経る)

これらに通じて言えることは、対象自体をさす語が、学問の名となっているらしいということ。

対象に logic な性質が見いだされて学問化した学問と、
対象自体が学問である学問の違いだろうか?

余談だが、フランスの昔の高校は、学年の名称が上から philosophie, lettres, histoire だったとか。(うろ覚え)各学年で学ぶ学科名が学年の呼称として使われていた。なんともすばらしい。

ところで、パスカルのパンセにつても同じことが言えるのだろうか? つまり、思考という意味のこの Les Pensée という語は、「思念したことども」という中身をさすばかりか、「思考すること」というそのスタイル自体を指すのだろうか?

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それにしても、最初に揚げた科白の中で、一番好きなのは「ホレーショー」という呼びかけ。
ハムレットは自分のもののようにホレーショーの名を呼ぶ。
わたしもハムレットみたいに、だれかを自分のもののように呼べたらと思う。
独占欲だのそんな勝手気侭な気分からではなく、もっともっと根本的な願いから。