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『マクベス』5幕4場 - メタシアター

『マクベス』5幕4場
シートン:
お妃様が、陛下、お亡くなりに。
マクベス:
あれもいつかは死なねばならなかった、
このような知らせを一度は聞くだろうと思っていた。
明日、また明日、また明日と、時は
小きざみな足どりで一日一日を歩み、
ついには歴史の最後の一瞬にたどりつく、
昨日という日はすべて愚かな人間が塵と化す
死への道を照らしてきた。消えろ、消えろ、
つかの間の燈火! 人生は歩きまわる影法師、
あわれな役者だ、舞台の上でおおげさにみえをきっても
出場が終われば消えてしまう。白痴のしゃべる
物語だ、わめき立てる響きと怒りはすさまじいが、
意味はなに一つありはしない。
(小田島雄志訳、白水社 Uブックス、162頁)

世界劇場 Theatre mundi を思わせる科白。
楽屋落ちであるばかりか、
演劇自体を問いに付し、
そこに存在的な諸問題をも畳み掛ける。
シェイクスピアがお得意としたメタシアター的な言及は、観る者を作品内に取り込み、
作品の内と外との、つまり芸術的虚構と現実世界の苦渋との出会いをもたらす。
人生を影法師に、言葉と身振りを響きと怒りになぞらえて
意味の無を説くあたりは、早くもポストモダンの先取りのよう。