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<無い>ことは難しい

名詞句 noun phrase について考えた。


英語の冠詞は a と the で、the は単数でも複数でも同形だが、a は複数になると消えてしまう。そもそも、複数形に限らず、単数形でも名詞に冠詞をつけない用法がある。

個人的にはこの、<冠詞ゼロ>こそが英語の難しさの一つだと思う。


フランス語の冠詞は le, la, les / un, une, des / du, de la で、無冠詞の用法は少数(たとえば列挙するときなど)。冠詞はたいてい必ずつくのだから、つけるかつけまいかで悩むことが無いぶん、英語よりも簡単。

むしろ、前置詞 de のあとの冠詞の扱いのほうが難しい。de のあとではしばしば冠詞が省かれて de だけになったりもするから、まさに<冠詞ゼロ>が消極的な主張をしていることがよくわかる。


英語で難しいのは、名詞に性がないこと。それから、形容詞が数変化しないこと。そして、そのせいで名詞がしばしば形容詞的に用いられてもどちらなのかわからなかったり、動名詞が名詞なのか形容詞的なのかわかりにくかったりすること。


そんなとこかな??


まとめると、<無い>ことのほうが難しいということになる。


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『リア王』では、コーディリアの nothing からすべての悲劇が始まるが、皮肉にもコーディリアからこの nothing という語を聞いたリアのリアクションは、nothing will come of nothing. 「無からは何も生まれない」。無から始まるこの悲劇だが、無からは何も生まれないという。ならこの悲劇は無ということになる。