少し前に気になっていた本を読んでみました。内容は充実してました。そのあたりのポーター志向主義の本とは少し離れた感じでなるほどと思った点が沢山ありました。バークレーで教鞭をとっているようですが、一度授業を受けてみたいものです。


細かくは以下にメモしているとおりですが、やるべき問題をリストアップし、それに優先順位をつけてやるべきことを決める。そしてそれ以外はやらずにそこにリソースを集中させる。そして自分の判断を批判する。これの繰り返しが真の戦略の立て方だとか。仕事をする時に心がけないと。

以下気になった点をメモ

・本物の専門知識や知見の特徴は、複雑なことをわかりやすく説明できることになる。これに対して悪い戦略の特徴は、わかりきったことを必要以上に複雑に見せかける。中身のないことを厚化粧で覆い隠しているのである。

・悪い戦略の特徴は、企業の前途に立ちはだかる重大な問題や困難な課題が認識されていない。

・戦略とは、力を何倍にもするテコのようなものである。

・がんばることは人生において大事ではあるが、「最後のひとふんばり」をひたすら要求するだけのリーダーは能がない。リーダーの仕事は、効果的に頑張れるような状況を作り出すことであり、努力する価値のある戦略を立てること。

・より上を目指すためには、機会を見極めたうえで前進を阻む障害物を見抜き、乗り越える方法を考えなければならない。

・良い戦略は重要な課題にフォーカスする。となれば当然たくさんある課題の中から選びとる作業が必要になる。どれかを選んで残りは捨てなければならない。

・争いを避けるために全員の意見を採用するという方針をとった場合、誰も厳しく意見を吟味しなくなる。最適な意見しか選択されないと分かっているからこそ、自分の提案に磨きをかけるのだし、出された意見の長所・短所を真剣にするのである。秩序ある議論では、しっかりとした裏づけや納得のいく根拠が要求されるので、説得力のある意見はより堅固になり、根拠に乏しい意見は淘汰されて、妥当な選択につながりやすい。

・的を絞りこんだ戦略では、明確な目標にリソースを集中させる。そのためには、戦略目標以外からリソースを引き上げて戦略目標にまわなさなければならない。これは選択と集中の必然的な結果である。だが、それまで予算も人員も潤沢に投じられてきた事業やプロジェクトを打ち切るのは大きな苦痛を伴う。

・カリスマ的リーダーが人々の心を動かすことは疑う余地がない。したがって、このようなリーダーシップは無気力に活をいれ、士気を高揚させ、自己犠牲を促す役には立つだろう。だが、数戦千数万の命が無益に奪われるケースも少なくない。

・想念だけでビジョンは実現するという教えは多くの人を心酔させてきた。そのような教えを信じることは、批判的に考える能力を捨て、良い戦略をあきらめることにほかならないと私には思える。

(良い戦略の基本構造)
1.診断・・状況を診断し、取りくむべき課題を見極める。良い診断は死活的に重要な問題点をえり分け、複雑に絡み合った状況を明快にときほぐす。

2.基本方針・・診断で見つかった課題にどう取り組むか、大きな方向性と総合的な方針を示す。

3.行動・・ここで行動と呼ぶのは、基本方針を実行するために設計された一貫性のある一連の行動である。すべての行動をコーディネートして方針を決める。


企業にとって大切なのは、やみくもに業績目標を掲げるのではなく、状況を診断して、課題の本質を見極めることである。この診断がついたら、どうすれば最も効率的かつ効果的に対処できるか、方針を決める。そして一連の行動とリソース配分をデザインし、方針を実行に移す。

・状況を適切に診断できたときは、複雑な現状が整理され、よりシンプルな形で掲示される。この整理された形をみれば、どこに注意を払うべきか分かりやすい。

・良い戦略とは、「何をやるか」を示すだけではなく、「なぜやるのか」「どうやるのか」を示すものであるべきだ。

・より大きな効果をあげるためには、調和と連携がとれ、相互に補い合い、組織のエネルギーを集中するような行動が必要である。

・問題の性質が何であり、戦略のカーネル(診断、基本方針、行動)は適用することができるし、どれほど複雑な状況であっても、必要とされる行動は意外にシンプルなものだ。ただ、多くの場合、それをやらずに済ませたい、済ませられるだろう、という希望的観測が邪魔をする。

・「全社一丸となる」ような戦略は得られるメリットが大きいときに限るのが賢いやり方である。すぐれた組織は使いわけをわきまえており、何をやるにも全部門の行動を統率する、といった愚は犯さない。これでは現場に活気がなくなってしまう。

・リーダーが戦略実行に使える強力な手段の一つは、近い目標を定めることである。近い目標とは手の届く距離にあって十分に実現可能な目標を意味する。

・「条件を指定しない限り、技術者は何もできない」というフィリスの慧眼は、組織的に行う仕事の大半にあてはまる。リーダーは複雑であいまいな状況を整理して、何とか手のつけられる状況に置き換えなければならない。

・組織としての近い目標を適切に設定すれば、組織規模の大小を問わず、それを目安に下位の単位がそれぞれに近い目標を定め、それがまた下の単位の近い目標につながり、という具合に、小さな単位に至るまで近い目標が設定されていく。

・あることにだけ集中する、すなわち最重要課題に優先的に取り組むためには、他の重要なことがクリアできていなければならない。

・鎖構造になった問題を解決するためには、強力なリーダーシップと計画的な取り組みが必要である。逆に言えば、強力なリーダーシップにより巧みな鎖構造を作り上げてしまえば、容易には真似できなくなる。(IKEAの例で)

・このように、あるセグメントをターゲットに定め、そこに対応できるシステムを用意してより高い価値を提供する戦略をフォーカス戦略という。この「フォーカス」という言葉には二通りの意味がある。第一は自社の方針や行動をコーディネートして、相互採用やオーバーラップ効果により大きな力を生み出すという意味である。第二は、適切なターゲットに一点集中するという意味である。

・多くの企業、とりわけ複雑な大企業は、往々にして戦略を持っていない。先ほどもいったように、戦略の要諦はフォーカスにあるが、多くの大企業はリソースをフォーカスできないからだ。彼らはいくつもの目標を同時に追いかけるので、結局はどれも達成できない。

・健全な成長というものは、合併などの人為的操作によって実現できるものではない。独自の能力に対する需要増が原因で、あるいはそぐれた製品やスキルの結果として、あるいはイノベーションや知恵や効率や創造性の見返りとして、その企業は成長するのである。

・価値を高めるために重要なのは、コモディティ化しないようにすることだ。

競争優位が高まれば、あるいは競争優位を形成する要素への授業が高まれば、より多くの価値がもたらされる。そのためには以下の4つを目指す戦略が必要。
競争優位を深める、競争優位を拡げる、優位な製品又はサービスに対する需要を増やす、競争相手による模倣を阻むような隔離メカニズムを強化する。


・変化のうねりが形成される早い段階で、気づいて手を打たなければならない。大事なのは予測することではなう、過去と現在に目を凝らすことである。

・変化のうねりが形成されているのではないか、そんな勘が働いたら、専門家に質問して恥ずかしくない程度まで知識をかき集め、真摯に教えを乞うことだ。一旦変化が始まってしまえば、誰も彼もが訳知りぶって論評する。

・変化のうねりを知るための4つの手がかり
固定費の増加、規制緩和、将来予想におけるバイアス、既存企業の反応、収束状態

・企業文化の慣性を打ち破るステップ
単純化⇒適切な優先順位付けや取捨選択

・要するに良い戦略とは、こうすればうまくいくはずだ、という仮説にほかならない。理論的裏づけはないが、知識と知恵に裏付けられた判断に基づいている。

・継続的に良い結果が出ている状況で、かつ開拓すべき新たな機会がなさそうなときや新たなリスクが見当たらないときは、新しい発想はとくに必要としない。そんなときは「これまでどおりのことをこれまで以上に頑張る」のが論理的正しい戦略となる。

・戦略を立てるにあたっては、居心地の良い前提や安心できる推論システムを捨てて、危うい未知の領域に踏み込んで自らの判断や洞察に頼らなければならないのである。

・認識能力の限界や先入観、すなわち目先の問題に捕らわれがちな近視眼的傾向を克服することである。

・自分の考えを自分で疑い検証できることが大切なのである。

・第一は、近視眼的な見方を断ち切り、広い視野を持つための手段を持つこと。例えばリストは良い方法である。第二は、自分の判断に疑義を提出する習慣をつけること。自分からの攻撃にすら耐えられないような論拠は、現実の競争に直面したらあっさり壊してしまうだろう。第三は、重要な判断を下したら記録に残す習慣をつけることである。

・(アップルのジョブス)妥協より一点集中を選び、万人のための一般解は選ばない。

・誰が賛成し、誰か反対に回るか。あなたの判断を前もってメモしておく。こうすれば自分の判断力を評価し鍛えることができる。

・設計に結果があるから崩壊する。(リーマンショック)

ハーバードビジネスレビュー結構好きなので、空いた時間に読んでいるのですが、掲題に記事がでていたので、さっきよんでました。

やはり長期的な視野で企業価値の拡大に貢献してきたのは、1位がアップルのスティーブジョブスで、2位がアマゾンのジェフベゾスで、3位がサムソンのCEOの方です。まあ、まったくの予想どおりで驚きはないのですが、記事にもあるのですが、中国は成長しているにも関わらず、上位100位に入ってくるCEOは極めて少数であること等は面白い結果かと思います。あと、ブラジルのCEOが全体の9%に入ってきている等の結果は、今後は中南米が熱いということの裏づけかもしれません。あとご参考程度までにMBAの修士はあってもなくてもあまり関係がないようです。笑。あとCEOで内部からなった人と外部からきてなった人では結果的に大きな違いがないといえるようです。

どちらにしても、昨今短期的な収益での評価が多いCEOの人たちに対して、長期的な視点でのランキング付けは極めて有用な気がします。

なお、日本人で上位に入っている人は、36位にコマツの坂根会長、NTTデータの神林さんが49位、丸紅のカツマタさんが100位といった形です。

また、坂根会長の講話が聞きたいです。笑
年末に購入。購入した理由は断片的にしかなかった証券化の知識の底上げを図ろうと思ったこと。内容としては、証券化の基本的な仕組みから始まり、サブプライムショックの発生要因の分析まで。本分野の造詣が深い方にはまったく、おすすめしませんが、基本を知りたい方にはもってこいだと思います。
前から買おうか迷っていたのですが、たまたま読む本が無かったので購入。2012年12月発行なので割りと新しい本です。

内容としては、最近、はやっているクロスボーダーM&Aを成功させるためには、ターゲット選定からPMIまでで何が必要かを示した本。テクニカルな話はなくて、大局的に何をすべきかについて纏めた本でした。

この領域について造詣が深くない私にとっては、一連の流れが分かり、大変勉強になりました。来月にもう一回読み直そうかと思ってます。

以下、なんとなくコメントです。

1.相対を狙う

買収は入札形式ではなく、相対ディールを狙うとあり、それが高値摑みを回避する策として出てますが、海外企業の相対ディール、意味は分かるのですが、なかなかムズかしそうですね。買収提案書の作成にあたっては、自分の会社のことを語った上で、将来的なビジネスの展望を描く。そして定量的な情報を含める。でも良い経験になりそうですね。

2.事業の売却

事業の売却にあたっては、「まずは分社化」して価値の再定義をするという点になるほどと思いました。

3.ディールの中止の判断

「目指していた戦略的な目標を達成する代替案はあるか」「ターゲット企業を競争相手に買収された場合の分析」を行って判断というのもなるほどと感じました。(もちろん、様々な経験をされている方にとっては当たり前なんでしょうけど。。笑

4.計画のギャップ

計画のギャップを解決する上では、シナジー効果の定義、定量化が必要。確かに。この定量化の具体的な方法について興味があります。

5.PMIのポイント

投資先、買収先の「経営の見える化」が大事なのはそのとおり。また、日本企業が買収先に日本企業のカルチャーを一気に移植しようとしても失敗するというのも納得。

海外の企業は、チェックする指標や期間を定めしっかりCFベースでモニタリングをしているとあるが、どの程度しているんでしょうね。

6.ポストM&Aは経営そのもの

その経験や知見を属人化されたノウハウにとどめず、M&Aを進めていく上で必要となるナレッジを蓄積し、組織内で誰もが容易にアクセスできる形にしておく。独自のマニュアル的なもの、「プレイブック」の策定。

確かに。自社流のM&Aのやり方をブラッシュアップし、組織内でノウハウ化するのは良い作戦ですね。
アマルフィ、アンダルシアで名を馳せている真保さんの江戸川乱歩賞受賞作品。少し古いですが、いわゆるハードボイルド・ミステリー。

厚生省の元食品衛生監査員の羽川は昔の友人である雑誌記者の竹脇が自殺未遂をしたと聞かされる。当初その理由は、竹脇の妻と羽川が関係をもったからだと考えるが、調査を進めていくと、その裏には、竹脇が摑んだスクープに関連して、有害物質の横流し、廃棄や積戻しを利用した麻薬の輸入やココム規制の隙をついた共産圏へのCPU等の輸出があり、自殺ではなく殺人だった。最終的にはどんでん返し的に、東京検疫所の内部リークまである。

2時間ドラマを見てる的にさっと読めてしまいます。
ネタばれ注意:

懲りずに池井戸作品を読んでしまいました。今回は、東京中央銀行と子会社である証券会社の買収を巡る合戦。当初銀行子会社の証券会社にIT企業の雄、電脳雑技集団から東京スパイラルの敵対買収案件が回ってくるものの、途中で親会社の銀行の証券部門に案件を持っていかれてしまう。銀行からの出向者である半沢は証券会社の社長からその責任を問われてしまう。

これは、銀行への復帰を狙う出向者の一人諸田が銀行の証券部に情報を流したことによるもの。銀行は、市場外取引により、3割の東京スパイラル株式を取得し、その後TOBをかけるいう作戦を実行。東京スパイラルの社長の瀬名は対応に苦慮。そこに現れたのが中小証券の大洋証券。敵対的買収として第三者割当増資を行うことを提案。そして、ホワイトナイトとして、PC・周辺機器販売大手のフォックスがいることをほのめかす。

この出来すぎたスキームは、東京中央銀行が考えたもので、業績が悪化しているフォックスの再建回収を視野に入れ、ホワイトナイトとして現れたフォックスを最終的には電脳雑技集団が買収するというからくり。電脳雑技集団は、フォックスとのシナジーなどはまったく気にしておらず、何としてもライバルかつ業績の良い東京スパイラルを買収したいと考えている。

半沢はこのからくりに気づき、部下の森山(証券会社採用の社員)と親会社のたてつき、買収防衛策を検討する。森山は瀬名社長と幼い頃から既知の仲であり、助けたいという強い気持ちもある。
新たな買収防衛策は、フォックスを逆に買収する案である。瀬名社長は、フォックスの子会社であるコペルニクスにシナジー効果があると考え、アメリカに打って出ようと考える。フォックスの社長は電脳雑技集団とは違い、会社のシナジーを考える東京スパイラルに買収されることに心を動かされ最終的に決断する。

半沢はこの新しいシナジー効果のある企業戦略をマスコミ等を使い大々的に喧伝し、東京スパイラルの株価をつりあげていく。結果として、TOB価格を超えることになり、電脳雑技集団の買占めは滞る。そしてTOB価格をあげるために、電脳雑技集団と銀行は追加融資を検討する。

しかし、そこで半沢はあることに気づく。なぜ、当初に買収案件を電脳雑技集団が、東京中央銀行ではなく、小規模の証券会社に持ち込んだのか。調べていくうちに、過去の粉飾があり、東京中央銀行はメイン先で様々な情報があり、そこをつかまれることを恐れたからであることに気づく。

半沢は、銀行の追加融資を決める取締役会に乗り込み、その事実を伝え、取締役会に追加融資のとりやめを決めさせる。

その後、銀行では銀行にたてついた半沢の処遇が問題になるが、頭取の英断により、銀行の危機を救った半沢は出世街道に復活することになる。

本文中で、半沢がロスジェネの森山に言う一言。
「だが、お前たちは違う。お前たちには社会に対する疑問や反感という、我々の世代にはないフィルターがあり、根強い問題意識があるはずだ。世の中を変えていけるとすればお前たちの世代なんだよ。失われた十年に世の中に出た者だけが、あるいは、さらにその下の世代が、これからの十年で世の中を変える資格が得られるのかもしれない。ロスジェネの逆襲はこれからはじまるとおれは期待している」


自分もロスジェネ世代。頑張らないと!




ネタばれ注意。

チームバティスタの前座的作品であり、いろいろな所に登場人物が現れます。話の展開としては、今中先生が赤字を垂れ流す極北市民病院に赴任して、いろいろな人の力を借りながら病院の改善に力を発揮。しかし、そこにバティスタ並の横槍が入り、唯一市民の立場に立って治療をしていた三枝部長がでっち上げられた医療ミスにより逮捕(マスコミも医療ミスを猛攻撃)。(この背景には警視庁の斑鳩芳正がいるのだが)その後客足は遠のき、極北市の財政も改善の傾向を見せないことから、市長は病院の解散を宣言。しかし、病院、市役所からの猛反発を受け、その中で市長は倒れてしまう。放漫財政とは言え、市をひっぱってきた市長の死が、極北市の破綻を自治省に指定させる結果となる。その後、病院再建請負人として送り込まれてくるのが世良雅志。世良は、記者会見の前に一言。

「メディアはいつもそうだ。白か黒の二者択一。そんなあなたたちが世の中をクレマーだらけにしているのに、まだ気づかないのか。日本人は今や1億二千万、総クレーマーだ。自分以外の人間をせめ立てていきている。だからここは地獄だ。みんな医療に寄りかかるが、医療のために何かをしようと考える市民はいない。医療に助けてもらうことだけが当然だと信じて疑わない。何と傲慢で貧しい社会であることか」

なるほどって思いますね。
ネタバレ注意です。

新年1冊目は、チームバティスタで名を馳せた海堂尊の小説。これも、もちろん医療サスペンスです。1988年は癌の告知を行うことはタブーとされている中で、それを行う医師たちを巡る話。

全体を通して主人公となるのが、世良。無鉄砲な1年目の若手外科医。そして、神の域の腕を持つ男、東城大学医学部総合外科科学教室 佐伯教授。そして手術の腕以外は最低の男、渡海先生、そして官僚並のかたくるっしさの帝華大から都落ちしてきた高階講師が主な登場人物。

最初は世良が成長していく過程を描くが描かれているが、途中から渡海が持つ佐伯教授への恨みが中心。佐伯がペアンを患者の体内に残したことにより、渡海の父親が左遷されていったことを根にもってのこと。

病院長の席を固いものとするために、学会に佐伯教授が出かけている間に渡海は佐伯がペアンを残した患者を緊急オペの形で東城大学に運び、残った責任者の高階の一存で手術をすることにする。しかし、世良は佐伯教授に連絡することを主張し、連絡という形で学会の発表待ちの佐伯教授に連絡する。そして手術を開始。渡海は体内からペアンがでてきたことを白日に晒すことで、佐伯の失脚を狙う。渡海と高階は必死にペアンにたどり着こうするが難しくて、到達に異常に時間がかかる。いざペアンに到達したときに佐伯教授が戻ってくる。そして、手術の停止を求める。これは自分の医療ミスを隠蔽することを目的したものではなかった。渡海がペアンを抜くと大量の出血が。渡海と高階は必死にとめようとするがどうしようもない。つまり、出血をとめるための苦肉の策がペアンを残すことだったのだ。止められない二人を横目に、佐伯は自分のブラックペアンを抜き出し、処置を開始。なぜブラックペアンか、これはスキャンしてX線写真にも映らないからである。佐伯教授はいつかこの日がくることを想定していたのだ。渡海を東城大学で引き受けたのも、渡海の父親に左遷を謝りにいったときに、渡海だけは一人前の外科医にしてほしいと頼まれ引き受けたものだった。渡海は手術後大学を去っていく・・・。

相変わらずのどんでん返しぶり、読者を飽きさせない名著でした。
今年最後の一冊は、城山の名著落日燃ゆ。右傾化甚だしい戦時中の日本にあって、一人外交努力による解決を目指した男、広田弘毅。最終的には、A級戦犯として裁かれたものの、その戦犯として裁かれるべきであったかは今となっても分からない。
「自ら計らわぬ」という生き方は、東京裁判ではマイナスに働いたといわざるを得ないが、人生の大先輩として尊敬すべき生き方であろう。人間は思わず功名心に走る傾向にあるが、大局を見極め、流れに従いながらも、正しい道を志向する、これこそが必要なことであろう。

本日の日経新聞において、「1931年からの警鐘」という論説が出ている。平面が右に移動したした中で(右傾化)国を立て直すのが阿倍首相の来年の政策課題という結論であるが、その中で、「昭和6年秋から1、2年の間に日本社会はなだれをうって右側に移動した」という記載があるが、この中で一人右側に移動せず、必死に日中関係の維持に力を発揮していたのが広田弘毅であったのは間違いない。阿倍さんはどんな付き合い方をするのでしょうか。ナショナリストであり、リアリストであるという論評どおりに行くかを見守りたいものですね。

以下、本文からの抜粋メモです。

広田の特徴の一つは、早くから、先輩や仲間との交わりを深め、互いに啓発し、知恵や情報を吸収しあって生きていこうと努めたことである。

山座の教えどおり、中国問題は大切である。そして、表に出ないところでも外交官は行動すべきである。

二人の死を契機に、いよいよ人生に対して淡白な姿勢をとるようになり、「自ら計らわぬ」という生き方が身についた。

君の考え方は、まだ若いよ。人間短所を見たら、どんな人間だってだめだ。逆に長所を見て使うようにすれば、使えない人間はいないんだ。

それぞればらばらに出先に引きづられるのでなく、ある程度のことを言わせておいた上で、原則なり基準なりという大枠をはめていこうという考え方でもある。

広田が無欲な「物来順応」なら、松岡は功名心に燃えていた。

外交上の危機というものはも、1回限りので考えるべきではなく、再三再四繰り返す中にはじめて相互の理解に達する。一度談判が行き詰ったからといって、直ちに開戦すべきではない。

この裁判で文官のだれかが殺されねばならぬとしたら、僕がその役をになわねばなるまいね。

アメリカは常道を行く国である。ロシヤは社会の大きな変動の上に乗っている国ですからね。将来は、ロシヤを中心として、世界の変動がどうなっていくかということが、一番の問題でしょう。

日本のどこかに、静かに世界の動きを見る人がなければなりませんね。この忙しい時代に一々世界の動きなど考えている人はないから。

三国志後の魏、そして晋の興隆までを描いた作品。

曹操の子、曹丕、曹植の兄弟の関係を中心に話は展開。兄弟は仲がよく、詩を作成しあう中であったものの、曹操の後継者争いの中で、本人たちと違う所で権力闘争が起こり、曹植は自ら身を引く。その一方で、曹植は、曹丕の嫁に甄夫人に恋をしており、その気持ちに曹丕も気づいており、甄夫人が権力争いに嫌気がさし、世俗を捨てる際にも、対外的には死んだことになっているが、隠遁生活を送っていることを曹丕は曹植に伝える。魏のルールである皇族間は距離を持たすという結果物理的には離れているが、曹丕、曹植の深い信頼関係に感銘。

二人の死後は、魏の中での権力争い、司馬氏の興隆の過程を説明。前述の皇族間の距離を持たすというルールの結果、魏を守りたいという皇族は多数いたものの、無力化され、司馬氏に権力を奪われてしまう。しかしその後、晋は軍権を持った8人の晋の皇族が互いに殺しあう・・(隠遁した魏の皇族は八王の乱に巻き込まれず天寿を全う)

なお、サイドストーリーとして、魏が倭と協力関係を作っていくところがあるが、邪馬台国時代から中国が日本を一定程度意識していたことがよく分かりました。

また、この時代の作品を読むと組織の中でのどのように振舞うべきかなかなか考えさせられますね。一応、メモします。

劉備の死に際に孔明が言った言葉
・臣は敢えて股肱の力をつくし、忠貞の節を効し、死ぬまで変わることはありません。

・曹丕に欠けていたのは、「曠大な度量」と「公平の誠」
リーダーに必須の要素なんでしょうね。

・文章は経国の大業にして、不朽の盛時なり。by曹丕
人間の命はいずれ尽きるものだが、文章は朽ちずに残る。確かに・・。

・賞は日をこえず、罰は面を還らさず。
賞罰は速やかにしなければならない。確かにね。

・其風俗不淫
倭国日本を指して、すがすがしさがある国と評されている。いいですね。

・自分に正直なことは賢いとは言えません。
おっしゃるとおり。機をみて敏に。