ORANGEの備忘記録 -35ページ目

ムチャは禁物

次第に呼吸が落ち着いてきた。
痛みで、手すら動かせないが、話をする事ができるようになった。

気がつくと、ゲレンデのレスキューが到着している。

もうここからは、ひたすら詫びていた。

するとスタッフの方が、言った。
「息できなかったでしょ。」
でも大丈夫だからね、というニュアンスだった。

ゲレンデのスタッフは、ほとんどが、スキーやスノーボードを鍛練しにきている人ばかり。
夫もかつて、その一人だ。

限られた時間の中で上達を目指す。素晴らしいこと。

でも、何事もムチャはいけない。夫もゲレンデスタッフだった時に、脳震盪を起こしている。

就業時間後に練習していた時の事だ。

おそらく、今回助けに来てくれたスタッフも、同じ様に練習中に痛い思いをした事があるのだろう。

でも、そのひと言がちょっと緊張した心をほぐした。
自分の状況が理解されているという安心感がうまれた。



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動けない

全身に衝撃があった次は、お尻がひどく痛い。

派手に尻餅をついていた。

いつもの転倒なら、どんなに痛くても、照れ隠ししながら、起き上がることができる。

しかし、この時ばかりは、衝撃と痛さで呼吸もままならない。

遠くに夫と子供達が見えたが、目を開けてもいられなかった…。

いつものように、自然に痛みが消えるのを待った。
しかしいつまでも痛みは消えることなく、呼吸も全く整う気配がない。

するとそのうち、「大丈夫ですか?」と女性の声がした。

ゲレンデは、週末でそこそこにぎわっていた。痛みに耐えながらも意識ははっきりしていて、この状況を目撃した人によって、いずれ誰かに声を掛けてもらえるであろう事は考えていた。

とてもありがたかった。
「大丈夫ですか?」
その問いに答えたかった。

でも実際出来たことは、微動だにできないまま、一度頷く事だけだった。
意識は失っていませんよ、という精一杯のジェスチャーだった。

この時声を掛けてくださった女性にお礼を言えずじまいになった。
痛みで目を開けていられなかったから姿もわからない。
スキーヤーかスノーボーダーかもわからない。

その後、先を滑っていた夫が異変に気づき、ゲレンデを戻って来てくれた。

きっとその時夫が、その女性にお礼を言ってくれているはずだ。
夫が来てくれて安心したのか、そのあたりの記憶があまりない。

声を掛けてくださった女性、その節は本当にありがとうございました。そして、さぞ驚いたことでしょう。驚かせてゴメンナサイ。






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決定的瞬間

みんなの後を漠然と滑っていた。いつもより、スピードが出ていることに気づかずに。

この1本を滑り終えたら、ランチにしようと決めていた。

その時!
一瞬の出来事だった。
フワリと浮いた感覚と同時に、見えるはずのない、視界一面の空。

自分の身に何が起きているのか一瞬でわかった。

ヤバい!!と思ったが、体は抵抗できなかった。

死ぬ間際に走馬灯のように人生を振り返るとはよく聞く。

その一瞬で、自分の今の滑り方を振り返り、「あの時重心の位置がもっとああすれば良かったんだ」
とか
「出来ないことに挑んでしまったんだ!なんて愚かな!」
とか、いろいろ後悔が頭をよぎっていく。

次の瞬間、衝撃が突き抜け、身動きが取れなかった…


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