豚もおだてりゃエレベーターホールまで
おだてられながら、少しずつ歩く距離を伸ばす。
「スゴい!こんなに歩けましたよ!」
「歩ける距離、どんどんのびてますね!」
おだてられると止められなくなる。
豚もおだてりゃそのうち木登りでも始める勢いだ。
そのうち、暇になると、ひとりでフラフラ出歩く。エレベーターホールまで行くと、外の景色が素晴らしい。
海越しにポートタワーやハーバーランドの観覧車、六甲山、遠くには明石海峡大橋まで。
震災直後は、夜ライトアップしてとてもきれいだったが、しばらくすると、喪に服すかのように、あかりを灯すことはなくなった。
震災、同じ被災地、原発事故、節電、自粛…
いろいろ複雑に絡んだ事情が見えた
気持ちになり、悲しかった。
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「スゴい!こんなに歩けましたよ!」
「歩ける距離、どんどんのびてますね!」
おだてられると止められなくなる。
豚もおだてりゃそのうち木登りでも始める勢いだ。
そのうち、暇になると、ひとりでフラフラ出歩く。エレベーターホールまで行くと、外の景色が素晴らしい。
海越しにポートタワーやハーバーランドの観覧車、六甲山、遠くには明石海峡大橋まで。
震災直後は、夜ライトアップしてとてもきれいだったが、しばらくすると、喪に服すかのように、あかりを灯すことはなくなった。
震災、同じ被災地、原発事故、節電、自粛…
いろいろ複雑に絡んだ事情が見えた
気持ちになり、悲しかった。
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歩行訓練
リハビリが始まってから、看護師さんが洗髪をしてくださった。
いつ、入浴許可がでてもいいように、シャンプーなどのお風呂セットは、夫に持ってきてもらっていた。
入浴許可はまだまだない。そのかわり、洗髪ということだ。
ただ、私はまだ腰を屈めることができない。
なので、病室のベッドのまま、美容院のように仰向けでシャンプーして下さる。本当に看護師さんには感謝している。
器具をあれこれ持ってきて、準備完了。
やはり洗ってもらうとサッパリする。
人生でこんなに長いこと髪を洗わなかった事がない。
入院直前に美容院で髪を切っていて良かったと思った。
ボサボサじゃなくて良かった…
これで、リハビリで病室から出てもみっともなくない。
さて、それから、歩く訓練が始まった。
カラカラと動くキャスター付きの点滴のスタンドにつかまりながら、ゆっくりベッドから離れる。
看護師さんが後ろ向きに手を引いてくれる。
神経を歩くことだけに集中して進む。
ただ歩くだけがこんなに怖いのかと、今後が心配になった。
歩き慣れないという事もあるが、ギプスで胴体が動かせないと、どうもバランスがとりにくいせいか。
ゆっくりナースステーションを1周し病室へ戻った。
すると、隣のベッドの方と会った。
「やっとお顔が拝見できましたね!」
お互い挨拶した。
お向かいの患者さんは、座って食事をとるとき、配膳もあるので、前方カーテンは開けているが、横までグルッと開けることはなかった。
だからお隣さんとは初めて顔をあわせたのだった。
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いつ、入浴許可がでてもいいように、シャンプーなどのお風呂セットは、夫に持ってきてもらっていた。
入浴許可はまだまだない。そのかわり、洗髪ということだ。
ただ、私はまだ腰を屈めることができない。
なので、病室のベッドのまま、美容院のように仰向けでシャンプーして下さる。本当に看護師さんには感謝している。
器具をあれこれ持ってきて、準備完了。
やはり洗ってもらうとサッパリする。
人生でこんなに長いこと髪を洗わなかった事がない。
入院直前に美容院で髪を切っていて良かったと思った。
ボサボサじゃなくて良かった…
これで、リハビリで病室から出てもみっともなくない。
さて、それから、歩く訓練が始まった。
カラカラと動くキャスター付きの点滴のスタンドにつかまりながら、ゆっくりベッドから離れる。
看護師さんが後ろ向きに手を引いてくれる。
神経を歩くことだけに集中して進む。
ただ歩くだけがこんなに怖いのかと、今後が心配になった。
歩き慣れないという事もあるが、ギプスで胴体が動かせないと、どうもバランスがとりにくいせいか。
ゆっくりナースステーションを1周し病室へ戻った。
すると、隣のベッドの方と会った。
「やっとお顔が拝見できましたね!」
お互い挨拶した。
お向かいの患者さんは、座って食事をとるとき、配膳もあるので、前方カーテンは開けているが、横までグルッと開けることはなかった。
だからお隣さんとは初めて顔をあわせたのだった。
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ニューアイテム
ベッドサイドの柵にくくりつけたポケットに、とても大事な物を入れてある。
「串刺し定食」の串、1本だ。
もうリハビリが始まった頃には、座れるので、通常の食事が頂ける。
この1本の串は、以前から大事にとっておいた。
私のギプスは胴体をぐるっと囲っている。
ギプスの処置室でベテラン看護師さん達(妖精のように愉しげなのだ)に、痒いときに掻くことができるるようにと、ギプスと皮膚の間にガーゼの紐を挟んでくれていた。
ギプスの内側が痒いときには、その紐をぐるぐる動かす。
ところがこの紐、たしかに痒いところにたどり着くのだが、肌へのあたりが弱い。痒みに優しすぎるのだ。
それはかえって痒みを増幅させた。
痒いところをそぉーっとソフトタッチするのだ。
他の患者さんは、それぐらいがちょうどいいのかも知れない。
ただ私には、弱かった。
その時ちょうど目に付いたのが、「串刺し定食」の串だ。
尖ったほうはさすがに傷だらけになりそうだが、柄のほうは肌あたりがちょうど良かった。
狭いギプスとの隙間にも入ってゆく。
絶対に手離せない道具の一つだった。
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「串刺し定食」の串、1本だ。
もうリハビリが始まった頃には、座れるので、通常の食事が頂ける。
この1本の串は、以前から大事にとっておいた。
私のギプスは胴体をぐるっと囲っている。
ギプスの処置室でベテラン看護師さん達(妖精のように愉しげなのだ)に、痒いときに掻くことができるるようにと、ギプスと皮膚の間にガーゼの紐を挟んでくれていた。
ギプスの内側が痒いときには、その紐をぐるぐる動かす。
ところがこの紐、たしかに痒いところにたどり着くのだが、肌へのあたりが弱い。痒みに優しすぎるのだ。
それはかえって痒みを増幅させた。
痒いところをそぉーっとソフトタッチするのだ。
他の患者さんは、それぐらいがちょうどいいのかも知れない。
ただ私には、弱かった。
その時ちょうど目に付いたのが、「串刺し定食」の串だ。
尖ったほうはさすがに傷だらけになりそうだが、柄のほうは肌あたりがちょうど良かった。
狭いギプスとの隙間にも入ってゆく。
絶対に手離せない道具の一つだった。
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