ツルツルピカピカはコワい
売店へ行くには、まずは、いつものエレベーターホールへ。
ここまでは楽勝だ。
次にエレベーターを待つ。
これまでは、看護師さんに連れられて、乗っていたエレベーター。
初めはベッドごと、次は車椅子。
今度は、初めて徒歩。しかもひとり。
若干緊張した。
満員の状態だったらどうしよう、とか。
満員ではないにしろ、なかなかの人数だった。
このエレベーターを降りたら、乗り換えだ。
2階に着いたら、ますます緊張が走った。
入院病棟は、床はカーペット敷きで、両壁には手すりがあった。
しかし正面入り口にあたるこのフロアは、床がピカピカに磨かれた鏡面仕上げのタイル張り、壁に手すりもなかった。
病室から履いているスリッパで、滑ったら全くバランスがとれない。顔面、または後頭部を強打する事間違いなしだ。
順調に治っている骨が、本気で折れることも大いにある。
まして、まわりの人の歩くスピードが速い!
怖いからと、壁づたいにそぉっと歩くと、今度は、横道の廊下から、忙しそうに医師が早足で飛び出す。
頃合いを見計らって、静かに通った。
乗り継ぐエレベーターを見つけた。
すぐ脇に、階段がある。なかなか来ないエレベーター、階段で行こうか迷ったが、階段は、帰りに使ってみようと思った。
正直、もうすでに部屋に戻りたい気分だった。
ここまでは楽勝だ。
次にエレベーターを待つ。
これまでは、看護師さんに連れられて、乗っていたエレベーター。
初めはベッドごと、次は車椅子。
今度は、初めて徒歩。しかもひとり。
若干緊張した。
満員の状態だったらどうしよう、とか。
満員ではないにしろ、なかなかの人数だった。
このエレベーターを降りたら、乗り換えだ。
2階に着いたら、ますます緊張が走った。
入院病棟は、床はカーペット敷きで、両壁には手すりがあった。
しかし正面入り口にあたるこのフロアは、床がピカピカに磨かれた鏡面仕上げのタイル張り、壁に手すりもなかった。
病室から履いているスリッパで、滑ったら全くバランスがとれない。顔面、または後頭部を強打する事間違いなしだ。
順調に治っている骨が、本気で折れることも大いにある。
まして、まわりの人の歩くスピードが速い!
怖いからと、壁づたいにそぉっと歩くと、今度は、横道の廊下から、忙しそうに医師が早足で飛び出す。
頃合いを見計らって、静かに通った。
乗り継ぐエレベーターを見つけた。
すぐ脇に、階段がある。なかなか来ないエレベーター、階段で行こうか迷ったが、階段は、帰りに使ってみようと思った。
正直、もうすでに部屋に戻りたい気分だった。
売店
入院から2週間、歩行訓練が順調に運んでくると、是非とも売店へ行きたくなった。
自販機での惨敗、飲み物一つ満足に買えない。売店でリベンジする気負いだった。
それから、売店の様子も知っておきたかった。
いつか、この病院の売店の話題が上がった時「あぁ、あそこはねぇ…」と、知ってる様子で、話せたらいいと思っていた。
意味のない事だ
とにかく、暇で、時間がたっぷりあったから。
まず、病室を出発する前にひと仕事あった。
ベッド脇の棚にある小さな金庫にお財布をしまってあるのだが、コレがまた足元にある。
自販機での苦労同様、指先で、ギリギリつまみ上げる。
それからお財布を持って売店へ向かった。
売店は、病院の地下にある上、一旦外に出て、別のエレベーターに乗り換える。
今まで、この病棟から外に出たことはない。どんな雰囲気なのだろうか。
でも、パジャマが着ている時点で、入院患者とわかるであろうから、多少おかしな動きをしても、許されるかな~と甘い考えで向かう事にした。
自販機での惨敗、飲み物一つ満足に買えない。売店でリベンジする気負いだった。
それから、売店の様子も知っておきたかった。
いつか、この病院の売店の話題が上がった時「あぁ、あそこはねぇ…」と、知ってる様子で、話せたらいいと思っていた。
意味のない事だ
とにかく、暇で、時間がたっぷりあったから。
まず、病室を出発する前にひと仕事あった。
ベッド脇の棚にある小さな金庫にお財布をしまってあるのだが、コレがまた足元にある。
自販機での苦労同様、指先で、ギリギリつまみ上げる。
それからお財布を持って売店へ向かった。
売店は、病院の地下にある上、一旦外に出て、別のエレベーターに乗り換える。
今まで、この病棟から外に出たことはない。どんな雰囲気なのだろうか。
でも、パジャマが着ている時点で、入院患者とわかるであろうから、多少おかしな動きをしても、許されるかな~と甘い考えで向かう事にした。
自販機
寝たきりトレードマークの管が外れると、歩行訓練の行動範囲が広がった。
それまでは、なんでも人に持ってきてもらうしかなかった。
毎日3本以上消費している飲み物も、週末の面会の時に持ってきてもらっていた。
結構な重労働だったろう。
しかしこれからは、自分で買いに行かれる。
さっそく、いつものリハビリコースにあるエレベーターホールへ向かった。
このエレベーターホールには、自販機コーナーがあって、飲み物の自動販売機が幾つか並んでいる。
さっそくチャレンジした。
この時は、まだ自販機で購入する事が「チャレンジ」になるだなんて考えてもみなかったのだ。
いつもの様に、お金を入れて、ボタンを押した。
ガタゴトンッとペットボトルが出てきた。
あれれっ?? 取れない!?
取り出し口は膝辺りの高さだ。
胴回りをギプスで固定しているため、屈む事が出来ない。
歩行訓練していると言っても、まだまだ、手すりに触りながら、ただ歩いているだけだった。
自販機はノペっとして平面だ。縦に手すりが設置されていたら、掴まってしゃがめたかもしれないが、それはなかった。
胴回りをギプスでピンと固定された状態で、しゃがみ込む事は出来なかった。
手すりがないとバランスを崩して、前か後ろに倒れる怖さがあった。
試行錯誤している姿はあまりみられたくない。
一瞬で、腰をできる限り屈めて取る作戦にした。
腕を精一杯伸ばし、膝も、伸ばす余力を残しながら、少しだけ曲げ、腰も限界まで曲げた。
腰は、物理的に曲がらない。
中指を中心とした指先で、ギリギリ取り出すことに成功した。
その日は、1本買うのがやっとだった。
自販機では、買えなかったことが、さらに行動範囲を広げた。
それまでは、なんでも人に持ってきてもらうしかなかった。
毎日3本以上消費している飲み物も、週末の面会の時に持ってきてもらっていた。
結構な重労働だったろう。
しかしこれからは、自分で買いに行かれる。
さっそく、いつものリハビリコースにあるエレベーターホールへ向かった。
このエレベーターホールには、自販機コーナーがあって、飲み物の自動販売機が幾つか並んでいる。
さっそくチャレンジした。
この時は、まだ自販機で購入する事が「チャレンジ」になるだなんて考えてもみなかったのだ。
いつもの様に、お金を入れて、ボタンを押した。
ガタゴトンッとペットボトルが出てきた。
あれれっ?? 取れない!?
取り出し口は膝辺りの高さだ。
胴回りをギプスで固定しているため、屈む事が出来ない。
歩行訓練していると言っても、まだまだ、手すりに触りながら、ただ歩いているだけだった。
自販機はノペっとして平面だ。縦に手すりが設置されていたら、掴まってしゃがめたかもしれないが、それはなかった。
胴回りをギプスでピンと固定された状態で、しゃがみ込む事は出来なかった。
手すりがないとバランスを崩して、前か後ろに倒れる怖さがあった。
試行錯誤している姿はあまりみられたくない。
一瞬で、腰をできる限り屈めて取る作戦にした。
腕を精一杯伸ばし、膝も、伸ばす余力を残しながら、少しだけ曲げ、腰も限界まで曲げた。
腰は、物理的に曲がらない。
中指を中心とした指先で、ギリギリ取り出すことに成功した。
その日は、1本買うのがやっとだった。
自販機では、買えなかったことが、さらに行動範囲を広げた。