ORANGEの備忘記録 -22ページ目

その正体は…

わたしを担当してくれていた看護師さんは、まだまだとてもお若い。

全く気づかなかったが、その看護師さん、実は看護師さんではなく助産師さんなのだそうだ。

それを知ったのは、同室の患者さんから教えてもらったからだ。

その患者さんと、その看護師さん、とても懐かしげな会話を繰り広げている日があった。

看護師さんが、作業を終えて退室すると「あの人、助産師さんよ。」と。
その患者さんが何年も前に出産した時に取り上げてもらった、と。

オマケにその時ご懐妊中なのだと。

全く気づかなかった。

その後、確かにお腹が大きいのがわかったが、ご自分からは一切その事に触れなかった。

食事の上げ下げ、歩行訓練の付き添いなどなど、大きなお腹では心配だ。
こちらとしてもできる限り気遣って差し上げたかったが、正直戸惑った。

恐らく、その看護師さん?助産師さんはそれを望んでいないと思ったからだ。

歩くのもままならない様な私に気遣ってもらっても…ねぇ。

病院の勤怠事情はわからないが、もし、看護が出来ない状態であったなら、他の作業を選ぶことが出来るのではないか?
それをせず、担当看護師として、作業して下さっているということは、こちらがとやかく心配したり、遠慮すべきではない、ということではないのか?

そう考えた私から、ご懐妊の事に触れる会話はしなかった。その助産師さんのプロ意識に敬意を表したつもりだ。

ただ、母子共にお元気で出産の時が迎えられるよう、心の中で見守った。

2度目のギプス

入院当初から、つけていたギプスを、一度新しく作り替えてもらった。

前回は、起きあがることができなかったので、寝たきりの状態で、胴体があいているベッドに寝かされ、ギプスを巻いてもらった。

今回は、起きていられる。
まず、陽気な妖精のいる処置室のベッドに座った。

担当医師が、電動カッターの様な道具で、脇腹辺りのギプスを切断していく。

何となく緊張する。

そのカッター、肌に触れると血が出るのか?

なんて事はない、器用で優秀な医師だ。
あっと言う間に、ギプスは切断された。
??
…、一緒にギプスの下につけていた肌着代わりのチューブトップのような巻物までカットされた。

それでは、胸が丸出しなんですけど。

医師のほうが少々慌てていた。

私は、病院なので特に恥ずかしいわけでもなかったが、自分のすぐ脇に座って作業している人が、丸出しの胸に慌てている状況に、どう反応したらよいかわからない。

ヘラヘラ「いいですよぉ」って言うのもオバチャンっぽいし、恥じらって「きゃっ!」と胸を腕で隠すほど乙女でもない。

とっさの判断で、無表情に少しだけムッと顔のエッセンスを入れてみた。
全く怒っているわけではないのだが…。
そんな私の葛藤は、やはり関係なく作業は次へ進む。

でもそこは、ベテラン看護師さんの部屋、さっとタオルを胸にかけてくれた。

新しいチューブトップをつけてもらい、このタイミングで退院後の準備をした。

退院後には、ギプスから、コルセットへ替わる。
コルセットは、取り外しが可能なので、入浴もできる。
あくまでも、ギプスの代替えと説明された。

そのコルセットは、義肢屋さんにオーダーメイドで作ってもらう。
その為の採寸を、ギプスを外した今からするのだ。

スーツの男性が、処置室内で待機していた。
私のギプスが外れると、手際よく採寸し、手続き上の説明をしてくれた。

このコルセット、実に5万円を超えた。オマケにこの場で保険がきかない。現金で支払うそうだ。

後日、自分で社保に請求できるとの事。
同じ病院でやってもらっているのに全く別の請求なのだそうだ。ややこしい。

完成は、しばらく先だった。

さて、採寸が終わると、新たに巻き直すギプスは、立った状態でつけてもらう。

少し高さのついた台に乗り、両腕をあげるよう指示された。

そこへぐるぐる、ギプスを巻いていく。
前回のギプスは、うつ伏せの上、背中を反った状態だったので、いざ完成したら、普段から出気味のお腹が妊婦のように強調されていた。

なので、今回は少しお腹を引っ込めて、スリム化してもらおう、と思ったが、やめた。

案外、ギプス巻きの作業時間が長かったから、引っ込めているのがつらいのと、万一、キツすぎた時どうにもできなくなるからだ。

ギプスを医師に巻いてもらい、完成すると、無敵の気分だ。

ギプスをしているだけなのに、服でも着ているようで安心した。

ちょっと見るだけだから

相変わらず、ポートタワーや博物館は、ライトアップの自粛をしていた。

まるで、誇らしげに煌々としていたものが、一気にオーラを消している。

さみしいものだった。

エレベーターホールのお散歩リハビリを終えると一旦病室に戻り、次に売店へ向かった。

何度か行くうちに、正面玄関の鏡面仕上げの床にもなれ、念のため、転ばないよう壁際を歩き売店へ向かう。

乗り継ぎするガタガタと揺れるエレベーターは、あれから1度も乗っていない。単に怖いからだ。

階段も手すりに掴まってゆっくり降りられる。

売店は楽しみの一つになっていた。
コンビニが併設されていて、新発売のお菓子がいろいろある。
いい歳してお菓子がやめられない。

ただ、今回は見に来るだけだ。
まわりの多くの大人達に迷惑かけながら入院している。
楽しんでいる反面、非常に反省していた。こうなったのは全部、自分の不注意と気の緩みからだった。

それなのに、まさか入院中にお菓子を食べて太ったなんて、自分の状況としては許せない。

だから、コンビニには、新作お菓子をみにくるだけなのだ。

入院が、長くなると必要になってくる物がちょこちょこ出始めた。
爪切りもそう、リップクリームもそうだった。
病室は、思う以上に乾燥していた。

売店は、本当に感心してしまうほど、何でもそろっていた。
子供のおもちゃまでおいてある。

入院している子供の為か、はたまた、孫のお土産にしたいおじいちゃんおばあちゃんの為か。

ただ、コンビニも売店もとても狭いので、あまり長居をする事は出来ず、直ぐに病室へ戻っていった。