こんにちは、培養部門です。
今回は顕微授精( ICSI )に関わる先進医療の技術であるPICSIについて説明します。
PICSIとは、ヒアルロン酸によって成熟した精子を選別し、顕微授精する方法です。
正常な成熟精子( DNAや染色体に異常の少ない精子)はヒアルロン酸と結合する特性があります。正常な成熟精子を顕微授精に用いることで胚移植後の流産率の低下が期待できます。
男性のDNAや染色体の異常をもつ精子の量は生活習慣、遺伝的要因によって人それぞれ異なります。また、加齢によっても増加することがわかっています。精子のDNAや染色体の異常レベルが高いと流産の原因になります。
現在日本で先進医療としてPICSIを行う場合は、反復して着床や妊娠に至っていない方が対象になっており、精子のDNAや染色体異常が疑われる方のみ行うことができます。
PICSIに関する論文を読むと、ヒアルロン酸に結合した精子を顕微授精に用いると、受精する割合や胚盤胞に発育する割合は変わりませんが、流産率の低下や出生率の上昇に期待できるといった報告が多くあります。よって、PICSIは移植後の治療成績向上に貢献していることが考えられます。
全ての方に効果的である治療ではないかもしれませんが、精子のDNAや染色体異常レベルが高いと疑われる方には有効的である可能性が高い技術であります。
当院は顕微授精の治療成績向上のためにPICSI以外にも様々な取り組みを行っております。
PICSIを用いることによって相乗効果でさらに治療成績が向上できればと考えております。
ご不明な点がございましたら、ぜひ診察の際に医師や看護師、培養士にお気軽にご相談ください。
参考:Robert W et al. Sperm selection with hyaluronic acid improved live birth outcomes among older couples and was connected to sperm DNA quality, potentially affecting all treatment outcomes. Hum Reprod. 2022 May 30;37(6):1106-1125.
採卵された方や不妊治療卒業メッセージとしてたくさんの方からメッセージをいただいております。
是非、ご覧いただければ幸いです。
お知らせ
当院はPGT-A実施施設として日本産科婦人科学会に承認されています。
PGT-Aを行うことによって、複数回の妊娠不成立や流産を繰り返す方に妊娠率の向上と流産率の低下が期待できます。
↓詳しくはこちらをご覧いただければ幸いです。
※PGT-A対象者の方で当院に胚盤胞を凍結保存している場合、採卵を行わずに保存してある胚盤胞を用いてPGT-Aをすることができます。
PRP療法とは再生医療の一つです。
様々な医療分野でPRP治療は行われており、不妊治療分野ではPRP療法を行うと子宮内膜が厚くなるという報告が専門の学会から報告されています。
子宮内膜が厚くなると、移植した胚の妊娠率、出産率が向上します。
PGT-A、PRP療法をご希望の方、ご興味がある方は当院の不妊外来診察を受診ください。
文責:培養部門
〔生殖医療専門医〕古井憲司