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半兵衛のブログ

映画やドラマ好きなので映画やTVドラマのレビュー、ビートルズ関連の曲紹介や、古い洋楽ロック、気になるJポップスのレビューをしています。ペタは見ません、いいねを中心に訪問しています。

◆Tyrant(タイラント -独裁国家-)は2014年6月から放送されたアメリカのテレビドラマ

 

製作総指揮:ハワード・ゴードン(24)/ギデオン・ラフ(HOMELAND)
監督:デヴィッド・イェーツ(ハリーポッター)
脚本:ハワード・ゴードン
出演:アダム・レイナー/ ジェニファー・フィニガン
ジャンル:政治サスペンス/ファミリー
おすすめ度★★★★☆ 星4つ 中東版ゴットファーザー、大人のための作品

※お子様は閲覧注意:セックスシーンが多いです。

 

シーズン1(10話)シーズン2(12話) 只今シーズン3をアメリカで放送開始
日本ではhuluの独占でシーズン3を配信中です、日本ではDVDなどは未発売のようです。

 

<ストーリー>
小児科医師バサム・"バリー"・アルファイードは、若い頃に米国へ自主亡命して以来、20年もの間一度も母国アブディンに帰国せず、ロサンゼルスで幸せに暮らしていた。自分の過去について家族に何も語らないバリーだが、実は独裁国家アブディンで圧倒的な力を保持する大統領の息子。残虐な行為で国民を弾圧統制する恐怖政治を何十年も続ける父に反発し、ほとんど連絡も取っていなかった彼だが、兄ジャマルの息子の結婚式に参列するため、渋々、家族を連れて20年ぶりに帰国することに。しかし式の当日、父親が脳卒中で急死、兄も交通事故によって瀕死の重態となってしまう。父の死後、自動的に大統領となった病み上がりの兄をサポートしようと不本意ながらも母国に滞在することを決意する・・・海外ドラマNAVIより

 

◆中東版「ゴットファーザー」

架空の中東の独立国家で贅を尽くすアルファイード一族が支配する国アブディンが舞台で、あの「HOMELAND」のスタッフにより製作されました。タイトルのTyrantとは暴君の意味です。

 

映画「ゴットファーザー」はヴィトー・コルレオーネが築き上げたマフィアのファミリーで、ヴィトー亡き後、ファミリー・ビジネスから一番距離をおいていた三男マイケルがファミリーを守りながら、冷酷なドンに上り詰めていく物語ですが、このタイラントでは、独裁国家がまるでマフィアのファミリーのように対比され、父の力による支配を一番嫌って16歳の時にアメリカに亡命したバッサム(主人公)がまるでゴットファーザーでの三男マイケルのような立ち位置なのです。血族故に考え方が全く違う兄と対立しながらも助けていき、父の築いた独裁国家を民主主義国家にしようと決意します。

 

◆描かれられるテーマ(S1)
・独裁者一族であるバッサム家の愛憎劇
・独裁に反対する反政府組織との対立
・兄の弾圧統制政策に対して民主主義を掲げる弟との対立

・アメリカ政府の目論見

 

シーズン1は内政的なものが多く描かれていますが、シーズン2からはスリリングに急展開します。今現在(2017年2月)シーズン3(クライマックス?)配信中です。面白いです。

 

 

◆登場人物

・ジャマル(アシュラフ・バルフム)
短気で冷酷で女ぐせが悪い。本来は優柔不断な性格で独裁者に向いていませんが独裁者の父から受け継いだ国家を運営していく重圧の為、次々と狂気に満ちた行動にかられていきます。権力者としての孤独、妻は夫を政治利用するだけで愛されていない事による愛情に対する飢え、それらの苦悩の様子などが見事に表現されています。

・ジャマールの妻レイラ(モラン・アティアス)
この人は過去にバッサムに好意を寄せていましたがジャマルの妻になってしまったので、バッサムに対しては愛憎が入り混じっています。国家権力に執着するあまり、影で絶えず夫のジャマルを焚き付ける憎まれ役。まるで、ゲーム・オブ・スローンズのサーセイ状態。仕草や表情、態度、これ以上ない、はまり役の演技です。

<バッサム家>
・バッサム・アルファイード(アダム・レイナー)
16才でアメリカに亡命。小児科医、バリーは妻モリーとその2人の子供、高校生エマとサミーとパサデナ、カリフォルニア州に住んでいます。おとなしく理知的で正義感が強く冷静な性格です。残忍で優柔不断な兄とはまるで正反対です。

・モリー・アルファイード(ジェニファー・フィニガン)
バッサムの妻、典型的なアメリカンな女性で勝ち気で感情的ですが医者だけあって理知的で鋭い一面もあり、なんだかんだ言いながらも夫のバッサムを力強く支えていきます。

・サミー(ノアシルバー)
バリー(バッサム)の16歳の息子は、シーズン1では脳天気な足引っ張り役でゲイ、シーズン2では眠っていた父の血が爆発。


・エマ(アン・ウィンターズ)
彼女は国家の暴力的な歴史を認識しています。頭脳明晰なおとなしい子ども。

 

 

 

 

◆シン・ゴジラは2016年7月29日公開の東宝の映画 英題: GODZILLA Resurgence

監督:庵野秀明(総監督) 樋口真嗣(監督・特技監督)

脚本:庵野秀明

出演: 長谷川博己 竹野内豊 石原さとみ

ジャンル:ポリティカルフィクション/モンスター・パニック

おすすめ度:★★★★★ 95点 大人のマジな鑑賞に耐えられる傑作

お子様:かなり政治的な作品なので内容を理解できない可能性大

 

<ストーリー>

東京湾アクアトンネルが崩落する事故が発生。首相官邸での緊急会議で内閣官房副長官・矢口蘭堂(長谷川博己)が、海中に潜む謎の生物が事故を起こした可能性を指摘する。その後、海上に巨大不明生物が出現。さらには鎌倉に上陸し、街を破壊しながら突進していく。政府の緊急対策本部は自衛隊に対し防衛出動命令を下し、“ゴジラ”と名付けられた巨大不明生物に立ち向かうが…… シネマトゥデイより

 

◆全く期待していなかった

実は、私の大好きな海外ドラマ「ギャラクティカ」のファンの樋口監督は共通の価値というかドラマを見る目をもっているので心の盟友的な存在だったのですが、あの糞映画、「進撃の巨人実写版」の監督でもあったので、絶対このゴジラもめちゃくちゃな学芸会レベルの作品になると思っていて期待していませんした。庵野監督はアニメ作品ヱヴァンゲリヲンの監督なので実写監督としての実績が少ないので頑張っても無理じゃないかと思っていました。

 

普段は何の先入観念も持たず無の状態で映画を見たいのですが、やはり気になるゴジラ。どうせ糞映画だろうから、レンタルで十分だと思い。映画の読者レビュー見てみようと思いました。

 

◆ヤフー映画レビューは関係者が高評価したレビューに投票する

29日公開なので、早速ヤフー映画のユーザーレビューを参考になった順で見ると高評価が目立ちました。しかし、ここまでは想定の範囲内で、実はヤフー映画レビューは映画関係者のさくらの書き込みと評価が当たり前のように行われており、どんな糞映画でも最高評価をつけたり、訳の分からないめちゃくちゃなレビューを投稿したりします。多い時は20件ぐらいの訳の分からない高評価投稿に述べ800人近くが「参考になった」を押します。

 

例えば「進撃の巨人 ATTACK ON TITAN」の500人以上が参考になったレビューを検証してみると、高評価は★4と5をつけたレビューワーは16人いました。それに対し低評価の★1と2をつけた人はたった6人しかいません。これじゃまるでいい作品のようですが、全体の評価人数を見てみると8429人が評価しており、全体の★平均はたったの2.23という超低評価になっています。この事例でみんなが糞作品だと思っていても一定の人数が高評価に投票している事がわかります。しかも低評価に役に立ったに投票した人数は1000人から6900人とばらけているのに対して高評価に役に立ったに投票した人数がなんと600人から700人の間にピタリと収まっています、つまり映画関係者で進撃の映画関係者は述べ500-700人のさくらを使っていると推定されます。仮に60人のスタッフがヤフーのアカウント一人10個作れば600人分の評価ができます。

 

しかしここからが違いました。絶賛している人のレビューがちゃんと筋道が通っているしその人のレビューを見ると分かるのですが他の作品もちゃんとレビューしている人ばかりの投稿です。明らかにさくらではありませんでした。そこで決心をして映画館へ足を運ぶ事にしました。

 

正直、映画のレビューで批判なぞしたくないのですが、何故批判をするのかと言えばこれは、ひとえに満足できる作品にめぐり会いたいからにほかなりません。悪い作品をきちん悪いと言えなければ次も同じレベルの作品を提供されてしまいます。

 

◆世界で活躍する日本のアニメ

日本のアニメは宮崎監督作品を始めとしてレベルは高くハリウッド映画とも対等にやりあえる作品が多いですが、実写となると一気にお粗末レベルになってしまいます。特に特撮やCGが絡むとハリウッド映画の制作費の10分の1以下の日本の作品は太刀打ちが出来ません。芝居のレベルも日本の役者は事務所から派遣される人達ばかりで、出演料のレベルも桁違いに低くてサラリーマン役者ばかりの印象を受けます。

※2016年7月、アメリカの映画サイト・The Playlistが、21世紀に入ってから2016年までに公開されたアニメのベスト50を発表し、「千と千尋の神隠し」が第1位に選ばれました。

 

◆実写版は世界の恥レベル

しかし最近は実写版「るろうに剣心」で、かすかな光明が見えてきました。世界に出しても恥ずかしくないレベルのアクションを初めて見ることが出来ました。また、「テルマエ・ロマエ」も何度見ても楽しい作品で海外に出しても通用すると思います。日本の作品はほぼ国内でのマーケットしかありませんのであまり制作費をかけることが出来ませんが、海外でもヒットとなれば、作品に沢山のお金をかけること出来るようになります。

 

日本の映画がハリウッド映画並に世界進出するには、日本が誇る文化である漫画を実写化するのが一番だと思うのですが、世界を視野に入れた理想の高い作品は、ほぼ壊滅状態で、誇れるどころか逆に恥ずかしくて外に出せないような作品ばかりです。原作のネームバリューがあるのでどんな糞作品をつくっても一定の収益を得ることができるので安易に量産されるという業界の醜い裏事情があります。さらに演技の出来ない人気アイドルを客寄せパンダに使いますのでますます醜い出来になります。まったく実写化する意味も無ければ逆に漫画を貶めている感さえします。「デビルマン」「進撃の巨人」「キャシャーン」「宇宙戦艦ヤマト」「ルパン三世」などなど。

 

◆出来の良さに終始圧倒 

前置きが長くなりましたが、シン・ゴジラですが、あまりのできの良さに震えてきました。私が求めていたのはこれなのだ!緻密なシナリオ基づいた演出と演技・・・・これは制作費と関係無いものなのですが、今までの日本の作品はあまりにも緻密さ無視のどんぶりシナリオばかりで突っ込むのが疲れるぐらいでした。そして演技なのですが、日本の役者もやる!と、正直思いました。要は演技そのものより監督の撮り方が悪かったのです。外国の作品に出る日本人を見ればわかりますが、渡辺謙は、どの作品でも演技力を100%引き出されています。ちょっと古い作品では「ブラック・レイン」での松田優作の演技など太陽にほえろ!や探偵物語などとは大違いですね。

 

◆緻密なリサーチが映画の下地を作る

今回の庵野監督は鬼のようにリサーチを敢行。自衛隊の幹部とゴジラが現れたどのように対応するのか?とか、政府の法律を含めた対応のシミュレーション。対外的な安全保障に関する問題や首相官邸の調度品に至るまで綿密なリサーチを実行。

リサーチしていくうえで政治家の話し方が専門用語を早口で喋るなどなどわかり、一般人では聞き取れないような専門用語が早口で飛び交う様子など演技に反映させています。細部までかなり詳しくリサーチされていることがわかります。ですから、今まで役者は実写版宇宙戦艦ヤマトのように素人脚本家が何の努力もせず適当なリサーチの上で作られたトンチンカンなシナリオと舞台で演じなければならなかったのです。しっかりした舞台さえ用意してあげれば日本の役者は100%実力を発揮できるのです。つまり全てが監督の腕にかかっているといえます。

 

◆まるで16ビートのロック

庵野監督はアニメの監督なのでアニメではコマ割による制限はありませんので自由自在にカメラを回すことが出来ますが、今回はCGであり特撮の制約がなかったので、まるでヱヴァンゲリヲンを見ているような早いコマ割りと変幻自在な構図でテロップもビシバシ出てきます。音楽に例えるなら16ビートという感じでとてもアップテンポで、アクションシーンはもちろん、長台詞で体の動きの無い役者(大体向い合って気をつけの姿勢で会話)をそのままだらだら映し続ける事無く撮りました。

 

◆ハリウッド版を凌駕

予算が少なくても知恵で勝負し、見事勝利をおさめた感があります。是非制作費を発表していただき、ハリウッドと対等にやりあえる映画を作ることが出来たと自慢して欲しいです。

※13億円という説がありました。

 

 

●ネタバレを含む感想 鑑賞後読んでね。

 

◆まるで実写版ヱヴァンゲリヲン

まるで実写版のヱヴァンゲリヲンだと思いました。ゴジラは使徒なのです。

何故やって来て破壊を繰り返すのか?訳わからぬうちに街が破壊されます。

また、街が破壊される様子もまるでヱヴァンゲリヲンです。

今までの特撮では怪獣が倒れてビルが破壊される程度でしたが、破壊力が使徒のゼルエルのようで・・・周辺のビルが一瞬で焼き切られます。

完全生命体の防御システムはまるでヤシマ作戦の敵となった第5使徒ラミエルですね。

BGMも何故かヱヴァの曲(厳密には違う曲かもしれない)がでて苦笑いw

NERVの葛城ミサトが考えた「ヤシマ作戦」に対して、今回は矢口プランが「ヤシオリ作戦」となっており、同じく作戦決行にむけて緊張感あふれる戦いとなっています。

※ヤシオリとは「八塩折」と書き、スサノオノミコトがヤマタノオロチを倒すために作らせたお酒。ヤシマ作戦は、源平合戦の「屋島の戦い」において那須与一が海上の馬上から扇を矢で射抜いた事に由来。

 

◆ゴジラは神の怒り

今までのゴジラとは違うので、ゴジラファンにとってこれはゴジラじゃないと言われるかもしれませんがそうなのかも知れません。

しかし、ゴジラは古くは原水爆の実験によって生まれ、人類の行き過ぎた環境破壊に対するメッセンジャーとしてまるで、神様が怒っているような存在がゴジラですので、今回はエヴァゴジラかもしれませんが、メッセンジャーとしての破壊力は今までのゴジラがまるでお子様のように感じられてしまいます。

 

ゴジラの造形も今までのゴジラが人間ウケする形なのに対して、得体のしれない気持ち悪い生物感が半端じゃありませんね。ここでも暴走時のヱヴァンゲリヲン初号機の装具のしたに隠れた顔みたいな印象で決して客に媚びないゴジラという感じがしました。家にソフビ置くならミレニアムゴジラにしますw

 

◆モーションキャプチャーの秘密

ゴジラのモーションキャプチャーは狂言師の野村萬斎さんですが、シン・ゴジラのシンは神=荒ぶる神として表現し、手が上向いているのは仏様の手であり、竜が珠を持っている時をイメージしたそうです。神になるという事を観念的にやるのではなく、型でやる。型を解析しなおして又、型でやると言っていました。

ヤマタノオロチは竜ですので、竜が珠をもっているという事はつまりゴジラはヤマタノオロチの象徴なのですね。

 

◆牧悟郎博士の正体

一説によるとゴジラの正体は牧悟郎博士であるといわれています。東京を破壊する理由は妻を失った恨みであるというもの。一方、博士はゴジラの研究をしていたのでゴジラではなく完全生命体という研究成果をアメリカに取られたくないので、ゴジラを爆破しようとしたという説もあります。しかしエヴァでもそうですが数多くの謎かけをする庵野節炸裂ですね。

 

◆斬新な視点で描かれる ポリティカル・フィクションとしても優秀

3.11の大災害で、原発事故などの想定外の事故に対する政府の対応の悪さを日本国民は肌身をもって知っています。後手後手の政府の対応でメルトダウンする原子炉をただただ指をくわえて見ていることしか出来ませんでした。

 

今回のゴジラはまるでその想定外の災害のおさらいのような再来です。もし、ゴジラが日本に現れたら日本政府はどうやって対応するのか?一般国民の視点をバッサリと排除して政治家や閣僚からの視点から描かれます。

 

未知の生物に対する楽観的態度をとります。ゴジラ次第に形態を変えながら上陸し被害を拡大していきますがまだことの重大性を受け入れられないもよう。もしゴジラが本当に現れたら、どうなるか考えればわかりますが、まずは政治家が政府としてどうやって対応していくのかを決めます。自衛隊は内閣の決定のもとその指示によって動きます。自衛隊が勝手に武力行使をする事はありえません。

 

ゴジラは街を這いつくばりながら移動を続けます。移動するだけでどんどん街は破壊されていきますので一刻も早く対処しなければなりません。のんびり会議をしている時間など無く政府の対応の瞬発力が求められます。過去に起きたパターンなら対策を想定しているでしょうが、すべてが想定外です。あせり始めた政治家や閣僚たちが、思いついたことを早口で次々と発言しています。専門用語が四方八方から飛び交います。あくまでも会議の参加者に向けて会話なので視聴者に理解を求めていませんから相当政治に詳しい人でもない限りその場ですべてを理解することは出来ないでしょう。視聴者はその様子を俯瞰的に眺める事しかできません。

 

しかしリアルタイムで莫大な被害が出ているにもかかわらず、自衛隊出動に対し「憲法第9条」について論議しています。そんな会議より素早く対応してくれ!と心で叫んでいる人も多いでしょう。すったもんだの挙句やっと攻撃態勢の整った自衛隊ですが、まだ避難中の老人を発見し攻撃命令を中止してしまいます。

 

しかし、こんなやり取りの一部始終が、怪獣映画という虚構に対してリアリティーを生み出しています。今までどこにもなかったまったく新しいタイプの演出方法で、庵野監督は、世界的に見ても凄いクリエーターだと思います。

 

◆個人の力よりも組織力

首相が亡くなってもすぐに次の首相が決まり、「次のリーダーがすぐに決まるのが強みだな」と主人公に皮肉られますが、極端に言えば首相が変わっても何も変わらないのが日本なのかもしれません、それほど、個人の力よりも組織力が強いのが日本の特徴です。そしてこの作品はハリウッド映画にありがちなマッチョなヒーローを描くのではなく、その組織力を政治家や官僚の視点で描いた切り口はとても斬新で革新的だと思います。

 

◆3.11に対するメタファー

ゴジラは死んだわけではなく凍結状態ですので、凍結が解除されたらいつ再び目を覚まして暴れだすかもしれませんね。ですから、この先もゴジラを起こさないように何年も付き合っていかないといけなくなります。それよりも日本人なら誰でも思うのは、メルトダウンを起こした福島原発をどうすることも出来ず何年もかかって廃炉にしなくてはならない現状を思い浮かべると思います。つまりゴジラは人災である原子力発電所の事故を象徴した存在として描かれていると思います。そう考えるとヤシオリ作戦は必然の作戦であったわけです。

血液凍結製剤を高圧ポンプ車でゴジラ投与する場面は、福島原発の水位が低下した時に行われた放水を象徴していました。

更に、思い返せばゴジラが上陸した時の様子は津波による災害を連想させました。

 

社会学者の開沼博さんも「3.11を織り込んだ作品としてシン・ゴジラが一番ベスト」「被災者がいろいろな形で当時の状況を投影できる」「御用学者が何の役にも立たなかった(3.11と同じ)」と発言しています。

 

◆次回作

凍結状態のゴジラはいつ動き出しても不思議ではないうえ、凍結状態のしっぽの先端から人型の何かが何体か見受けられ謎を残しています。

次回作につなげるオチだという考えも出来ますが、庵野監督自身は今作限りの引受でしたので次回作はないと考えられます。

ただ、9月6日現在では観客動員420万人、興行成績が61億円を突破していますので、東宝が黙って指をくわえて見ているとは考えられず、庵野監督以外で続編を画策していることは容易に推測されます。ただ、あまりにも出来が良かったのでこれで終わらせて欲しいという願いがあると同時に見てみたいという気持ちにもなります。しかし庵野監督以上の実力がある監督が日本にいるとは思いませんので、公開されても失敗作になる公算が強いです。

良くシリーズの2作目は、大量投入といって、エイリアンも2作目では大量投入が定石になっています。エメリッヒ版のゴジラではすでに大量の子どもが孵化する描写があります。ターミネーター2では新たな敵の出現ですので、いわゆる怪獣プロレス化になり、今までのゴジラがたどってきた道の繰り返しになります。ハリウッド版のもう一つのギャレスゴジラの続編ではおなじみのモスラやキングギドラが出てくるそうです。

 

◆演技について

今回は石原さとみさんに結構クレームがありますが、確かに日本人だらけの中で浮いた存在であったのは事実ですが、これは石原さんより監督を責めるべきかも知れません。演技自体はかなり難しい役どころで努力は認めますが、設定上浮いてしまったという感じです。石原さんの発音を聴いたネイティブな外国人の感想では「大統領を目指している割には発音が悪い」という意見もありました。この作品の唯一の欠点の部分であり、アメリカで公開されればやはり争点になると思われますので、是非ここだけはネイティブな人の吹き替え(できれば本人にもう少し頑張ってもらう)にするべきです。

個人的には前任も後任も含めて総理大臣の演技が情けない感満載で残念でした。なんというか人間的な凄みのオーラが感じられず、なぁなぁの印象。できれば安倍総理風に、毅然とした態度の演技をしてもらいたかった。ただ、この作品は個の力より組織力というテーマがあったので強力なリーダーシップをとる指導者をあえて描きたくなかったのかもしれません。

 

◆アメリカ批判

「♪戦後は続くよ、どこまでも」

今回は日本の官僚などがアメリカの無茶振りに対する批判的な発言をする場面がしばしばあり、これアメリカで公開して平気なのか?と、いらぬ心配をしてしまいました。しかし、批判自体は日本人なら口に出さないだけでかなりの本音の部分なのもあり痛快でもありました。

 

◆樋口真嗣さん名誉挽回か?

樋口監督がどの程度絡んでいるのかわかりませんが、役者さんのインタビュー読む限り、演技の指導などを両監督が交互にきて指導するので、どちらの監督のいうことを演じたら良いか分からないと戸惑っていたようなので、かなり絡んでいると考えています。

しかしあの進撃の巨人は一体何だったのだろ?理由あって手抜きしたとしか思えてなりません。おなじ監督作品なのに月とスッポンレベルで今作は本当に素晴らしい作品です。これからは今までのガメラ同様で特技監督専門の道で頑張ってもらいたいです。

 

◆日本映画の分岐点

ポケモンGOでゲームを変えた日本が今度は庵野&樋口監督が日本の特撮映画を変えてくれました。是非アメリカで公開して欲しい作品です。

 

「日本映画の何かが変わればいいなと、切に願っています」庵野秀明

業界の悪習を断ち切りたい願いと、今作に対する自信が伺える発言ですね。

 

※100カ国で上映されるそうです。台湾8月12日、フィリピン8月24日、香港、マカオ8月25日、タイ9月8日公開。北米公開日決定。10月11日から18日まで限定で、440館以上で公開される。(8日間は短すぎる・・せめて2週間は欲しいですね。・・・・)

 

◆迷家-マヨイガ-2016年4月~6月まで放送されたTVアニメ全12話

監督:水谷努
原作:ディオメディア/ポニーキャニオン
シリーズ構成:岡田麿里 (あの日見た花の名前を僕たちはまだ知らない)
キャラクターデザイン:井出直美 (艦隊コレクション)
音楽:横山克
アニメーション制作:ディオメディア
ジャンル:ミステリー/脱出
おすすめ度 ★★★☆☆星3つ 人生やり直しツアーへようこそ!

<ストーリー>
「第一回人生やり直しツアー」に参加した30人の男女。彼らは行方不明者になり人生をやり直すためバスに乗り込み、都市伝説として語られる「納鳴村(ななきむら)」に向かっていた。しかし着いた村に人の気配はなく、「行方不明者がコミュニティを作って暮らしている」と聞かされていた参加者たちは不信感を抱く。不気味な獣の咆哮、参加者の行方不明事件と怪現象が続き、下山を試みるも村からは出られない。wikiより

人生をやり直しツワーなのですが、人生をやり直したいという事は裏を返せば人生に失敗をしたと思っている人達の集まり。心に1つも2つも大きなキズを背負ってきた人たち。そんな人達が希望を胸にたどり着いた村には誰もいないので不信感がつのり。更に追い打ちを書かるように、村を出ようとすると得体のしれない獣のような何かが出没し、あれこれやの大騒ぎに!もともと社会にうまく馴染めなかった人たちの集まりなので簡単にまとまるわけ無く、まとまりのない集団を仕切ろうとするものが現れたり、ある目的をもった参加者等の思惑でどんどん悪い方にむかいます。



『迷家‐マヨイガ‐「納鳴村 村役場広報課」』のタイトルで2016年4月7日から7月14日まで音泉にて配信された。パーソナリティは毎週メインキャストがランダムに担当する。wikiより





◆ネタバレ含む感想
◆ほぼ「LOST」や「100/ハンドレッド」と同じ設定
脱出不可能な村を島に置き換えればまるでLOST状態wそこへまるっきり同じく謎の怪物の登場のパターンは似すぎ。

以前紹介したアメリカの2014年のテレビドラマ「100/ハンドレッド」はもともと「LOST」に似ているのですが、この作品の若者達のすったもんだは「100/ハンドレッド」見ているようで、新鮮味にかける2番煎じで大変残念です。

しかし「LOST」や「100/ハンドレッド」見たことがない人は新鮮に感じるかもしれません。

◆展開が読めてしまう
怪物(ナナキ)が、特定の形をもっていず、見る人によって姿が違う、トラウマが形になったものなのだと分かる・・・この時点で少し感が良い人ならば今後の展開はトラウマを解消して実社会に戻りハッピーエンドのパターンを予測するはずで、その通りになってしまうので、意外性が無く、ミステリーとしての面白さががほぼ皆無になってしまうので、やはり設定の甘さが有ります。肝心の人間ドラマとしての面白さもあまり感じられないのもマイナスポイント。

最終話の盛り上がりもイマイチでしたので、使い古されたパターンと設定の甘さでやはり優れたドラマとは言いがたい。

恐らく後に実写版として映画化されそうですが、90分前後に収めるには登場人物を少なくしたり、もう少し感情移入できるトラウマにしたり、エンディングを盛り上げたり、途中でトラウマ回収ドラマという事をさとられないようにする必要があると感じました。
しかし元が使い古されたパターンなので相当新鮮に見せるアプローチも必要だと思います。