クリーンテック(CleanTech) -25ページ目

目を見張るクリーン・テックの成長

最近再生可能エネルギーについての二つの報告書が出ました。2月末ごろに出た21世紀再生可能エネルギー政策ネットワーク(REN21)という世界的な機関によるもの、もう一つは3月に出たクリーン・テックに詳しいクリーン・エッジという投資分析をする企業によるものです。二つの報告書を見ると政策というビジネスというどちらの視点で見ても、エネルギー分野のクリーン・テックの成長がはっきりと読み取れます。

REN21の報告書 によれば、2002から2006年にかけての発電容量の年平均成長率は、系統連結の太陽光発電で約60%、風力で約25%。2004年に比べて再生可能エネルギー全体の供給容量は50%も増えています。ものすごい速度の成長を見て、REN21の議長は言います。「現実はわれわれの認識をはるかに超えてしまった」と。

ビジネスの視点で書かれているクリーン・エッジの報告書 は強気で、2007年で770億ドルの市場が2017年には2500億ドルまで伸びると予測しています。これにはもちろん裏づけがあります。ベンチャー・キャピタルに占められるエネルギー関連投資が2007年には9.1%にものぼったのです。2000年にはわずか0.6%を占めていたぐらいですから、この変化はクリーン・テックが米国ではITなどと並ぶものとして認識されるようになったことを明確に示しています。ヨーロッパでも潮流の変化は激しいです。2007年は風力発電の発電容量が増えたのに対して、石炭と原子力発電の容量はわずかですが減ったといいます。

クリーン・テックが本格的に伸びてきていますので、先見性のある国は企業の誘致に必死になっています。4月7日の日本経済新聞にも載っていましたが、研究開発支援や税制優遇などでシンガポールは積極的に海外企業を
呼び集めています。例えばノルウェーのリニューアブルエナジーはシンガポールのダウンタウンから30分のところに2010年に世界最大の太陽電池工場を作ることを表明しています。生産能力は1.5ギガワットに及ぶとのこと。ちなみにシャープが大阪の堺に建設中の工場は1ギガワットですので、なんとその1.5倍です。

順調に見えるクリーン・テックにも試練は山ほどありますし、固定価格買取制度などの政策への依存度は大きいです。ただ着実に成長を遂げるクリーン・テックを見ると、環境に優しいエネルギーは未来の話ではなく、まさに今起きている現実なのだということが理解できると思います。

MJ



Google.orgの環境投資スタンス

先日のダン・ライカー氏の講演で、グーグル.オルグのクリーンテックへの投資スタンスとして次のような話をしました。

 

グーグルの投資は、以下の点を考慮して、創造的な投資を進めたい。

1)通常の投資スパンに収まらない長期投資が必要となるもの

2)他の投資家が取りきれないリスクがあるような、これまで注目されていない分野でのテクノロジー

3)大プロジェクトであれば他社との共同開発の視野に入れる

 

またライカー氏は現在の業界の投資状況について、あまりにも狭い分野に既に巨額の資金が集まりすぎているとコメントしました。投資環境が既に過熱気味だというのです。

こうした環境では、確かに巨額の資金が動かせて、しかも回収の時期に縛られないグーグルのスタンスは、貴重なものになってくるかもしれません。でも同時に、大きな損失も生みうるハイリスク投資も省みないということですから、危険は重々承知なのでしょう。

 

ところで、グーグルの社員に聞いたこぼれ話。グーグル入社1日目、オリエンテーション中に呼び出された彼が、あわてて配属先に行ってみると、「今から投資先に行くから、オリエンテーションは後々!車待ってるぜ。」と。急いで駐車場にいくと、こっちこっちと手招きする上司の前に、サーフボードを載せた車が。そしてその車の運転席にいたのはなんと、グーグル創始者の一人ラリー・ペイジ!目を白黒させながらも、新入社員は果敢に勇気を振り絞り、サーフボードについて質問してみました。ラリーは、「あれ、カイトサーフィン用。面白いんだよ、今からいく会社の社長に誘われて始めたんだ」。そして連れて行かれた先が、ユニークな風力発電装置を開発しているMakani Power だったということです。

 

Makani Powerの創始者は物理学博士ですが、カイト、つまり凧の熱狂的な愛好家で、凧とその凧が遊ぶ上空の力学的可能性を追求している人なのだそうです。そしてその彼が見つけたのが高度何千メートルの上空の風力を利用した風力発電なのでした。た、凧を使った風力発電…?!このにわかに信じがたいようなテクノロジーも、目下グーグルの投資先のひとつです。

 

デュターム

アメリカで増える太陽電池ベンチャー

前のエントリー に続いて太陽電池ベンチャーをもう少し詳しく見てみましょう。

業界紙フォトン・インターナショナルの昨年12月号 によれば今アメリカには50もの太陽電池のベンチャーがあるそうです。このうち22会社がシリコン・バレーに本社を置いています。(このPDF の4ページ目に太陽電池の企業の地図が載っています。)こうした企業に2007年にはベンチャー・キャピタルから10億ドル(約1000億円)の資金が流入しています(1ドル100円換算)。2006年の投資額は3.1億ドル(約310億円)ですから一年間で実に3倍を超える成長です。

ベンチャー企業が取り組んでいるものは様々ですが、多くの会社が高騰している材料のシリコンを減らす方向で開発を進めています。薄膜フィルムやシリコンではない素材を使った太陽電池(例えばCIGS化合物太陽電池)や、集光(コンセントレーター)が関心を集めています。

最近面白いと思ったのはソラリア 。カリフォルニア州フレモントにあるこの会社は集光に着目しています。太陽光をレンズなどで集めると、光を受ける面積が少なくてすむため、材料のシリコンを使う量を抑えることができ、安くできます。ソラリアの技術ではシリコンの量を半分にしつつも通常の太陽電池の90%の効率を維持 できるようです。

この集光の仕組みがユニークです。太陽電池を細く切り、間隔をあけて並べます。この上にプラスチックの低集効率のレンズを被せます。間隔がある分シリコンの量を削減でき、従来型に比べ15%から30%コスト削減ができるようです。(仕組みについては日本語でこのブログ にも詳しく書いてあります。)
ソラリアのこの技術、とても有望なようで、太陽電池の世界最大手のQセルズが投資をしていて、モジュールの電池の部分(セル)の供給を受けることも決定しています。

ソラリアの技術は実にシンプルに聞こえます。でもおそらく誰も製品化していなかったのでしょう。イノベーションというと最先端の複雑な技術を使うことを想像しがちですが、ソラリアを見ていると、イノベーションには様々な形態があることを実感させられます。

MJ