(今回も、私小山田が感じたことを雑多につづっていきます)

 

91. 「わかりません」とI don't know

 

質問に答える時、わからない時ははっきりと答えるのは重要ですが、その時よく日本語話者は、I don't know.を使いがちです。

間違いではないものの、元々はknow(知っている)の否定形なので、「知らない」のニュアンスが強く、唐突に使うと失礼に響く場合があります。少なくとも、

 

(1)Well, sorry, I don't know.

 

のように、少し考えてsorryの一言を加えるなどすると良いでしょう。

 

他の表現としては、

 

(2)I'm not sure.

 

があります。これは、「確実ではない」というニュアンスで、答えに自信が無い時に使えます。唐突に言っても問題はありませんが、Well...やLet me see...を入れると、より理想的です。

 

(3)I have no idea.

 

は、「全く分からない」「見当もつかない」という場合の表現です。Oh, などという間投詞を入れて使えば良いでしょう。

なお、質問への答えだけではなく、「全く想像もしなかった」と言いたい時にも使えます。例えば、

 

(4)A: I changed jobs last month .(私は先月転職しました)

         B: Oh, I have no idea!(それは全く知らなかった。予想もしていなかった)


のように、I haven't expected that! などと言わなくても伝わります。

なお、「転職する」change jobsは、「列車を乗り換える」change trainsや「握手をする」shake handsなどのように、名詞に複数形のsがつくことに注意する必要があります(jobでいえば、前職と現職の2つあるからです)。

 

 

(今回も、私小山田が感じたことを雑多につづっていきます)

 

90. 「変わらぬ想い」におけるought to

 

今回は、1984年にジョージ・ベンソンが歌い、1987年にはグレン・メディロスが、2006年にはウエストライフがカバーをした、Nothing's Gonna Change My Love For You(変わらぬ想い)を取り上げます(対訳はこちら)。

 

この曲のサビで何度も繰り返される、次の部分に注目しましょう(訳は筆者)。

 

Nothing's gonna change my love for you

(あなたへの愛は決して変わりません)

You ought to know by now how much I love you

(今までにあなたをどれほど愛したか、知ってくれたらいいな)

※ought toの発音は、「オラ」のように/t/の音が「ル」に変化するといういわゆる「フラップT」の現象が起こります。

 

このought to know は、「知ってくれたらいい」と意訳しましたが、直訳すると「知っていたほうがよい」という感じです。「~したほうがよい」というと、had betterを思い出す人も多いですが、had  betterは「~しないと大変なことになる」というかなり強いニュアンスが入っています。例えば、大けがをした人に対して、

 

・He had better go to the hospital!

(彼は、病院で治療か入院しないと大変だ) 

 

のように使うことは可能ですが、日本語の「~したほうがよい」というやわらかなアドバイスには適切ではありません。そこで登場するのが、should及び今回取り上げるought toです。shouldというと、「~するべきである」という意味で覚えている人が多く、確かにその意味でも使用されますが、「~したほうがよい」というやわらかなアドバイスにも使用されます(もちろん、口調にもよりますが)。

 

shouldとought toは交換して使用も可能ですが、ought toはshouldよりも客観性が強く、理由付けがあるというニュアンスです。この歌詞では相手への愛情をあえて抑えて客観的なought toを使用することで、内に秘めた強い思いを表現していると思われます。

 

筆者の演奏

 

 

(今回も、私小山田が感じたことを雑多につづっていきます)

 

89. The Long And Winding Roadにおける使役動詞keepとleave

 

2023年は、ビートルズが新曲を発売したことで話題になりました。ジョン・レノン(1940~80)のデモテープと1990年代にレコーディング済みだったジョージ・ハリスン(1943~2001)のギターをもとに、ポール・マッカートニーとリンゴ・スターが楽器とバックコーラスを付けて完成したNow And Thenです。それとともに、オリジナルが1973年発売のベストアルバム『ザ・ビートルズ 1962年~1966年(赤盤)』 と『ザ・ビートルズ 1967年~1970年(青盤)』の、それぞれ2023エディション)が収録曲を追加して発売され、話題を呼びました。

 

今回は、オリジナルが1970年発売のアルバム『Let It Be』及び上記の『青盤』に収録されている、The Long And Winding Roadを取り上げます。この曲は、ポール・マッカートニーの作曲及びヴォーカルで、心が離れて行ってしまった愛する人(ジョン・レノンという説があります)に向けての曲です(歌詞と和訳付きの映像はこちら。但し2009年のソロでのライブ音声のみ)(対訳はこちら)。

次の使役動詞の部分に注目しましょう(訳は筆者)。

 

(1)Why leave me standing here?(なぜ僕をここに立たせたままにしているの)

(Why do you leave me standing here?の省略)

(2)You left me standing here.(君は僕をここで立たせたままにした)

(3)Don't keep me waiting here.(僕をここに待たせたままにしないで)

(4)Don't leave me waiting here.(僕をここに待たせたままにしないで)

 

使役動詞と言えば、make, let, haveの目的語には動詞の原形が、getの目的語にはto不定詞が続きますが、keepとleaveは、目的語の直後に動詞のing形が来ます。どのフレーズも、「僕をひとりぼっちにしないで欲しい、置いてけぼりにしないで欲しい」という内容ですが、keepとleaveの動詞の使い方に違いはあるのでしょうか。

 

Longmanによると、keepは"to continue doing something or to do the same thing many times"(何かをやり続けたり同じことを何度も繰り返す)とあり、leaveは"to let something remain in a particular state, position, or condition"(ある特定の状況や位置や状態のままにしておく)とあります。

そうすると、ingを付けた形は次のように解釈が出来ます。上記の(3)(4)を対比してみます。

 

(3)keep~ing:繰り返し~し続ける

(4)leave~ing:放置して~させておく

 

(3)は「僕を待ち続けさせないで」、(4)は「僕を放置して待たせないで」、というニュアンスになると考えられます。いずれにしても、去って行った人への思いが強く出ている歌詞です。

 

筆者の演奏