(今回も、私小山田が感じたことを雑多につづっていきます)
次の日本語は、おそらく違和感が無いと思います。
1.私はその扉を閉めたが、閉まらなかった。
2.私は彼に帰宅するようを説得したが、帰らなかった。
3.その男性は川でおぼれたが、何とか助かった。
ところが、これを英語に直訳すると、おかしなことになります。
4.*I closed the door, but I couldn't.
5.*I persuaded him to go home, but he didin't go home.
6.*The man drowned in the river, but he was saved by the bell.
closeは、実際に閉めて閉め切るという動作が完結するので、「閉まらなかった」のはありえません。
peresuadeは、相手を説得してこの場合は「帰宅させる」ところまでの意味を含みます。
drownは、Longmanによると to die from being under water for too long(水中に長くいることで命を失う)なので、命が助かるのはおかしいのです。
日本語で言いたいことを英訳するなら、1~3はそれぞれ次のようにすれば良いでしょう。
7.I tried to close the door, but I couldn't.
8.I tried to persuade him to go home, but he didin't go home.
9.The man almost drowned in the river, but he was saved by the bell.
7と8の場合は、「試したが実現しなかった」を表すtried to~をつけます。実際、1はbut節が無くても扉が閉まらなかった意味になります。
9は、almostをつけて「おぼれて死にそうだった」とします。
なお、「何とか助かった」の、by the bellは、ボクシングで劣勢になったボクサーが、ゴングのベルによって救われる、というところから来ています。他にも、but had a close callなどとも言います。
このように、日本語では動作が完結していない動詞でも、英訳したら完結した動詞になることもあるので、注意が必要です。
参考:影山太郎(2002)『ケジメのない日本語』(岩波書店)