(今回も、私小山田が感じたことを雑多につづっていきます)

 

79.5.be動詞はイコールではない5

 

これまで、Halliday(1967)と安井(1980)のbe動詞に関する論文をもとに、be動詞の多義性を見てきました。

 

1.The leader is John.

2.John is the leader.

 

それによると、この2文は、1が「形解き作用文(中身がわかって、形=レッテルがわからない文に対する答え)」「中身解き受容文(形=レッテルがわかって、中身が分からない文に対する答え)」となり、2が「形解き受容文(中身がわかって、形=レッテルがわからない文に対する答え)」「中身解き作用文(形=レッテルがわかって、中身が分からない文に対する答え)」となることでした。

 

このように、be動詞を挟んで主語と述語の語順を変えても意味が通じる文に関しては扱っていますが、次のように語順を変えると非文になる場合の文は扱っていません。

 

3.John is a leader.

4.*A leader is John.

 

ここでは、西山(2003)などの提唱した用語に従って、1から3までの文を、次のように分類します。

 

1.指定文(日本語で言えば、「リーダーはジョンだ」のように、形がわかって中身を説明する「中身解き文」)

2.倒置指定文(日本語で言えば、「ジョンがリーダーだ」のように、中身がわかって形を説明する「形解き文」)

3.措定文(日本語で言えば、「ジョンはリーダーだ」のように、ジョンという特定の人物に関して、その集団の1人すなわち属性を表わす)

 

 

 

参考

Halliday M.A.K. (1967) Notes on transitivity and theme in English, part 2. Journal of      Linguistics 3: 199-244.

西山佑司(2003)『日本語名詞句の意味論と語用論―指示的名詞句と非指示的』ひつじ書房

安井泉(1980)「英語のbe動詞の多義性-四つのbeの等質性と異質性」『英語学 (23)』 p40-67

 

(今回も、私小山田が感じたことを雑多につづっていきます)

 

79.4.be動詞はイコールではない4

 

前回、Halliday(1967)と安井(1980)による、

 

1.Which is John?

 

という疑問文で、Johnを主語にした場合とwhichを主語にした場合の違いを見ましたが、今回は、次の疑問文に対する答えの文の役割を見ます。

 

2.Which is the leader?

 

この疑問文に対する答えは、次の2文になります。

 

3.The leader is John.

4.John is the leader.

 

両者にthe leaderが主語となる“Which is the leader?”の疑問文が想定されると、3は中身解き作用文で、4は中身解き作用文となります。

また、Whichが主語となる“Which is the leader?”の疑問文が想定されると、3は形(レッテル)解き受容文で、4は中身解き作用文となります。

 

 

参考

Halliday M.A.K. (1967) Notes on transitivity and theme in English, part 2. Journal of      Linguistics 3: 199-244.

安井泉(1980)「英語のbe動詞の多義性-四つのbeの等質性と異質性」『英語学 (23)』 p40-67

 

 

(今回も、私小山田が感じたことを雑多につづっていきます)

 

79.3.be動詞はイコールではない3

 

前回、be動詞を挟んで主語と述語を交換しても通じる中身解き文(安井、1980:53)を扱いました。中身解き文は、レッテル(the leaderなど役割)がわかっていて、その具体的な人物や名称(中身)を述べる場合の文です。

 

では、中身が分かっていてレッテルが分からない場合はどうでしょう。

安井(1980)とHalliday(1967)に従うと、「形(レッテル)解き文(encoding)」となります。

 

1.Which is John?

 

この疑問文に対しては、次のように2通りの答え方が出来ます。(太字も原著者による)。

 

2.The leader is John.

3.John is the leader.

 

2は作用文(疑問詞の答えすなわち新情報を主語にした形)、3は受容文(疑問詞の答えすなわち新情報以外が主語)です。

 

これまでの議論をまとめると、“John is the leader.”という文は、次の4通りの役割を果たします。

 

(1)中身解き作用文

(2)中身解き受容文

(3)形(レッテル)解き作用文

(4)形(レッテル)解き受容

 

そうすると、そもそも次の2文の違いはどうなるでしょうか。

 

4.The leader is John.

5.John is the leader.

 

両者にJohnが主語となる“Which is John?”の疑問文が想定されると、4は中身解き受容文で、5は中身解き作用文となります。

また、Whichが主語となる“Which is John?”の疑問文が想定されると、4は形(レッテル)解き作用文で、5は中身解き受容文となります。

 

 

参考

Halliday M.A.K. (1967) Notes on transitivity and theme in English, part 2. Journal of      Linguistics 3: 199-244.

安井泉(1980)「英語のbe動詞の多義性-四つのbeの等質性と異質性」『英語学 (23)』 p40-67