(今回も、私小山田が感じたことを雑多につづっていきます)

 

80.2.「AはBだ」の英訳2

 

「AはBだ」の英訳で、人が主語でない文は、英語の初級学習者には困難な傾向にあります。

 

(1)コンニャクは太らない。

 

これは、前回の「ウナギ文」に対して、「コンニャク文」と呼ばれています。

当然、次のような英訳は意味を成しません。

 

(2)*Konjaku doesn't get fat.

(3)*Konjaku will not make you fat.

 

(2)だとコンニャクが人間のように太ったりやせたりすることになりますし、

(3)だとコンニャクに意志があって、人を太らせることになります。

 

この場合は、「コンニャクを食べる人」を設定します。

 

(4)Even if  you eat Konjaku, you don't get fat.(あなたはコンニャクを食べても太りません)

(5)You can eat konjaku and not get fat.(佐藤、2011:132)

 

このように、主語に物が来た場合、無生物主語でも可能な場合はありますが、

それが難しければ、人を主語にして考えるといい場合が多くあります。

 

参考

佐藤洋一(2011)『BASIC800クイズで学ぶ! 理系英文 (サイエンス・アイ新書)』ソフトバンククリエイティブ。

 

 

(今回も、私小山田が感じたことを雑多につづっていきます)

 

80.1.「AはBだ」の英訳

 

「AはBだ」を訳そうとすると、うっかりbe動詞で訳そうとする学習者が多く見受けられます。

 

(1)私は学生です。

 

これを次のように訳すのは問題ありません。

 

(2)I am a student.(「私」について尋ねられた時の答え)

(3)I am the student.(「学生」が誰かについて尋ねられた時の答え)

 

ところが、次のような文にまでbe動詞を使って訳してしまう学習者もいます。

 

(4)私は早稲田大学です。→ *I am Waseda University.

(5)私はウナギ(料理)です。→ *I am eel.(注1)

 

(4)や(5)の場合、be動詞の代わりに一般動詞か、be動詞を使うにしても別の表現にする必要がなります。

 

(4)では、話者が学生として早稲田大学に通っているか、教職員で勤務している場合なので、

次のようにいろいろ考えられます。

 

(4a)I go to Waseda University.

(4b)I am a student at Waseda University.(注2)

(4c)I work for Waseda University.

(4d)I am a professor at Waseda University.

 

(5)は、いわゆる「ウナギ文」(奥津、1978)で、「ダ」に「~ヲ 注文スル」という表現が含まれていて、「ダ」に「述部代替機能」があると解釈されます。この文が使用される場面として考えられるのは、複数の話者が料理屋で料理を注文した時に、「君(の注文)はとんかつで、僕(の注文)はウナギ(料理)だ」というような場合なので、

 

(5a)I have (the) eel.

(5b)My order is (the) eel.

 

などとなります。

もっとも、友人同士などフランクな会話では、“I'm (the) eel.”などと言うこともあるようですが、あくまで「くだけた表現」として認識しておくべきでしょう。

 

(注1)不定冠詞のanをeelにつけると、生きたウナギを指します。これは、chicken(鳥料理)とa chicken(一羽の鶏)でも同じです。

 

(注2)studentの後に所属を表わす時にofではなくatなのは、“study at”(~で勉強している)という動詞の意味からの派生と考えられます。

 

参考

奥津敬一郎(1978)『「ボクハウナギダ」の文法―ダとノ』くろしお出版。

 

(今回も、私小山田が感じたことを雑多につづっていきます)

 

79.6.be動詞はイコールではない6

 

ここで、「措定文」「指定文」「倒置指文」をまとめます。元々、三上(1953)によって提唱され、上林(1988)や西山(2003)が発展させた「AはB」構文の分類です。

 

a.措定文(特定の指示対象が主語に来て、属性が述部に来る)

1.ジョンはリーダーだ。

2.John is a leader.

 

b.指定文(肩書きが主語に来て、それを持つ特定指示対象が述部に来る)

3.リーダーはジョンだ。

4.The leader is John.

 

c.倒置指定文(特定の指示対象が主語に来て、肩書き述部に来る)

5.ジョンがリーダーだ。

6.John is the leader.

 

aの場合、次のように倒置させることは出来ません。

 

*7.A leader is John.

 

これは、英語では、定義文(ある単語の概念を説明する)以外は、不定冠詞のaやanから始まる文は好ましくないということからも妥当です(「情報構造」の原則として、文は旧情報から新情報への流れが好ましいということがあります)。

 

日本語の場合、主語の後ろに来る助詞「は」と「が」の区別がありますが、英語の場合は、aとcで見られるように、不定冠詞か冠詞で区別が可能になります。

 

be動詞を使って英訳する際には、情報の新旧など伝えたい内容をふまえた形で冠詞など形式にも注意を払う必要があります。

 

 

※今回で、いったんbe動詞の話題を終了しますが、今後も気付いた点があればまた話題に載せます。

 

 

参考

上林洋二(1988)「措定文と指定文一ハとガの]面一」『文芸言語研究・言語篇(筑波大学文芸・言語学系 〔編〕)』14:57-74

三上章(1953)『現代語法叙説』刀江書院(1972、くろしお出版で復刊).

西山佑司(2003)『日本語名詞句の意味論と語用論―指示的名詞句と非指示的』ひつじ書房.