(今回も、私小山田が感じたことを雑多につづっていきます)
80.1.「AはBだ」の英訳
「AはBだ」を訳そうとすると、うっかりbe動詞で訳そうとする学習者が多く見受けられます。
(1)私は学生です。
これを次のように訳すのは問題ありません。
(2)I am a student.(「私」について尋ねられた時の答え)
(3)I am the student.(「学生」が誰かについて尋ねられた時の答え)
ところが、次のような文にまでbe動詞を使って訳してしまう学習者もいます。
(4)私は早稲田大学です。→ *I am Waseda University.
(5)私はウナギ(料理)です。→ *I am eel.(注1)
(4)や(5)の場合、be動詞の代わりに一般動詞か、be動詞を使うにしても別の表現にする必要がなります。
(4)では、話者が学生として早稲田大学に通っているか、教職員で勤務している場合なので、
次のようにいろいろ考えられます。
(4a)I go to Waseda University.
(4b)I am a student at Waseda University.(注2)
(4c)I work for Waseda University.
(4d)I am a professor at Waseda University.
(5)は、いわゆる「ウナギ文」(奥津、1978)で、「ダ」に「~ヲ 注文スル」という表現が含まれていて、「ダ」に「述部代替機能」があると解釈されます。この文が使用される場面として考えられるのは、複数の話者が料理屋で料理を注文した時に、「君(の注文)はとんかつで、僕(の注文)はウナギ(料理)だ」というような場合なので、
(5a)I have (the) eel.
(5b)My order is (the) eel.
などとなります。
もっとも、友人同士などフランクな会話では、“I'm (the) eel.”などと言うこともあるようですが、あくまで「くだけた表現」として認識しておくべきでしょう。
(注1)不定冠詞のanをeelにつけると、生きたウナギを指します。これは、chicken(鳥料理)とa chicken(一羽の鶏)でも同じです。
(注2)studentの後に所属を表わす時にofではなくatなのは、“study at”(~で勉強している)という動詞の意味からの派生と考えられます。
参考
奥津敬一郎(1978)『「ボクハウナギダ」の文法―ダとノ』くろしお出版。