今日は「秋の海外オーケストラ来日シリーズ」の3日目で、マケラ指揮・オスロフィルのシベリウス・プログラムです。


当ブログではご存知の方も多いと思いますが、従前から天才指揮者と評されているマケラを疑問視しており、日本のガラパゴス音楽評論家が絶賛した昨年の都響、ベルリンの各紙が酷評した今年5月のベルリン・フィルに続いて、3度目の正直の覚悟で今日のコンサートに行くことにしました(5月のベルリンでのコンサートではベルリンの現地紙では評価されてませんし、ベルリン・フィルの一部団員からもマケラについては否定的でした。このブログの最後には大巨匠によるマケラについての見解も書いてあります)。



今日の公演プログラムのマケラのプロフィールには、天下のベルリン・フィルに今年の4月に客演したことが書いてありませんが、マネジメント側からの事情で書いてないのでしょうか。ベルリン・フィルを指揮した経験は通常はプロフィールに書くと思います。


本来は先週の大巨匠のブロムシュテット指揮・N響のシベリウス2番の聴き比べのつもりでチケットを購入したのですが、ブロムシュテットが来日出来なかったため、高関さんのN響との比較になりますが、今日のマケラの指揮が素晴らしい場合は、本日はお詫びしたいと思っていました。


《以下、マケラ・ファンの方は読まれない方が良いと思います》


マケラ指揮のシベリウス2番を聴いて、まず思うのは、この指揮者は、オケを鳴らしまくるだけのお祭り的な指揮者であることが分かります。これまで実演で都響の「レニングラード」とベルリン・フィルの「悲愴」、録画でコンセルトヘボウのモーツァルト「レクイエム」を鑑賞しましたが、マケラは常に笑顔で楽天的に指揮します。上記の3曲はそのような楽天的な曲ではありません。今日のシベリウスも哀愁感溢れている曲で、シベリウス本人が「私の交響曲第2番は魂の告白である」と言ってましたが、マケラの演奏はその要素があまり感じられません。第1楽章から、金管はガンガン鳴らしまくり、オケとしてのまとまりのあるものではありませんでした。第2楽章は、シベリウスがフィレンツェ旅行で《キリスト》とインスピレーションを受けた曲ですが、その曲想は全く感じられません。ラストの弦楽パートによる運命の動機の音は金管の大爆音で消しされてしまいます。第3楽章を聴いていると、シベリウスの「フィンランディア」のような行進曲のような印象がありました。この指揮者はマーチのようなノリの良い曲なら得意なのかもしれません。最終楽章では、先週金曜の高関さん指揮・N響(↓のブログご参照)では落涙するレベルに感傷的でしたが、ここでも金管が鳴らしまくりで、心に響いてきません。この楽章の第2主題は自殺したシベリウスの義妹を追悼するものと聞いてますが、そのような背景やスコア分析が全くされていないため、今日のような行進曲的な演奏になってしまったのでしょう。この部分でも笑顔で指揮するマケラに疑問符がつきます。ベルリン・フィル奏者もマケラはスコア研究していないと指摘していましたが、今日のオスロ・フィルはただ大きな音を出させられた感があります。オケに関してもやや難があり、オスロ・フィルはN響と比べると楽器のクオリティ(特に木管)が良くないと思いました。弦のセクションも楽器の質のせいか、良い響が出ていませんでした。N響の楽器の方が高価なものだと推測されます。

と言うことで、マケラの指揮には3度目の正直でも裏切られまして、今日は休憩時間に帰宅することにしました。申し訳ありませんが、マケラのコンサートには今後、行かないことに致します。昨年秋に、ティーレマンさんと会話した時に「マケラは若い時からきちんと叩き上げとして指揮の勉強をしていないし、オペラを指揮できないから、俺は彼を認めないよ」と言っていたのを思い出しました。つまるところ、マケラはオケを鳴らしまくりのお祭り指揮者なんでしょう。


また、コンサートのチケット代金については、当ブログでは言及したことは無いのですが、今日のS席は28000円(ちなみに前回のオスロ・フィルはS席18000円)、先週のパーヴォ指揮・トーンハレ管(ブルース・リウ出演)のSS席が25000円・S席が22000円に対して、先週のトーンハレ来日公演の方が指揮者・オケ・ソリストのレベルが圧倒的に上なのに、今日のチケットの方が高いのが気になりました(ノルウェーの通貨はユーロではないし、トーンハレのあるスイスの方が明らかに物価が高いので、オーケストラの仕入れ値はトーンハレの方が高いはずです)。今日の公演はトーンハレ来日公演に比べて、音楽関係者と学生の招待者がかなり多く、エイベックスの主催者カウンターが忙しく対応されていましたが、今日の公演の有料入場率は低かったと思います。チケット代金が割高なのは、有料入場率が低いことに加えて、高額な宣伝費用(ぴあの特集雑誌や公演1週間前に「ぶらあぼの公式LINE」からオスロ・フィルの広告が何度か来ました)などを含めて税金のように払っている感覚になりましたので、エイベックス主催公演にも精査して、行く公演を絞ろうと思いました。


(評価)★ これほどバカバカしいシベリウスは聴いたことはありません!

*勝手ながら5段階評価でレビューしております

★★★★★: 一生の記憶に残るレベルの超名演 

★★★★:大満足、年間ベスト10ノミネート対象

★★★: 満足、行って良かった公演

★★: 不満足、行かなければ良かった公演 

★: 話にならない休憩中に帰りたくなる公演


指揮:クラウス・マケラ
オスロ・フィルハーモニー管弦楽団
曲目
シベリウス:交響曲第2番
シベリウス:交響曲第5番