ブロムシュテットさんがドクターストップで先週火曜日に来日できないことが発表され、先週のAプロ定期は中止でしたが、今日のCプロは高関さんが代役を引き受けてくれました。代役決定からリハまで1週間強しかない中、レギュラーのお仕事に加えて、この定期のためにスコア研究された高関さんにまず、感謝したいと思います。高関さんのTwitterによると、ニルセンの「アラジン」組曲の指揮は初めてだそうで、頭が下がります。一方で、ブロムシュテットさんは昨年からの脚の怪我が改善していないようで(昨月のベルリン・フィル公演のライブ映像)、来年も来日予定とのことですが、予断を許さないですし、大マエストロには無理しないでいただきたいです。今日の曲目はブロムシュテットさんがお得意のニルセンとシベリウスですが、Cプロだからか、空席が目立ちます。


ニルセンの「アラジン」組曲は、5幕構成から抜粋された7曲から成る組曲ですが、今日はそのうちから4曲が選曲されています。第1曲目の「祝祭行進曲」はクラシックの名曲としてよく演奏される音楽です。その後は第3曲「ヒンドゥーの踊り」、第5曲「イスファハンの市場」、第7曲「黒人の踊り」とお祭りと踊りをテーマとした曲で展開します。ニルセンの明るい音楽から一転して、シベリウスの交響曲第2番の哀愁と悲壮感の漂う曲になります。高関さんは指揮者として作曲家に敬意を払い、スコアに忠実に謙虚に指揮をされる方です(N響正指揮者になられた下野さんもこのタイプであると思います)。

コロナ前の高関さんはメガネをかけていましたが、藤岡幸夫さんのBSテレ東の番組で、高関さんが「コロナで遠くを見ることが多くなったので、目が良くなったので、メガネが要らなくなった」と言ってました。今日の高関さんもスコアに忠実で、個性を主張しない演奏します(一昨日のパーヴォの指揮と正反対です)。N響も正統的なシベリウスをきちんと演奏していて、今日はブロムシュテット・ロスを補うかのように、ノーミスで安定していたものでした。特に第2楽章の「神曲」「キリスト」をモチーフにした部分は神秘的な祈りの世界が描かれていました。また第4楽章の金管と木管は秀逸で、この曲の主題を明確に演奏され、終結部では弦楽セクションも大きなうねりとなって長大なクライマックスとなりました。この楽章の感傷的な部分では、少し涙が出そうになるほど心に刺さりました。演奏後からには「ブラボー」が飛び交い、これは高関さんへの感謝のブラボーでしょう。今日は本当に高関さんとN響メンバーの方に感謝したいと思います。コロナ渦でオーケストラの定期演奏会を継続実施することの意義が問われましたが、今回のように全員の協力で定期演奏会を中止にしなかったのは素晴らしいことです。


(評価)★★★ 高関さんへの感謝に尽きます!

*勝手ながら5段階評価でレビューしております

★★★★★: 一生の記憶に残るレベルの超名演 

★★★★:大満足、年間ベスト10ノミネート対象

★★★: 満足、行って良かった公演

★★: 不満足、行かなければ良かった公演 

★: 話にならない休憩中に帰りたくなる公演

指揮 : 高関 健※

※当初出演予定のヘルベルト・ブロムシュテット(指揮)から変更

曲目
ニルセン/アラジン組曲 作品34 -「祝祭行進曲」「ヒンドゥーの踊り」「イスファハンの市場」「黒人の踊り」
シベリウス/交響曲 第2番 ニ長調 作品