キム・ホンパつながりで、出演歴に見慣れないホラーがあるので…怪奇現象で有名なマンション(後述)を舞台に贈るホラー・オムニバスの佳編…「怪奇マンション (邦題:深夜の管理人)」

 

誰もいない部屋に落ちているマイクロカセットレコーダーから声が聞こえる。「ここクァンリム・マンションに来るべきではなかった」…【第1章 作家】古びたクァンリム・マンションを見上げる若者がいる。新作の題材に悩むウェブ漫画家ジウだ。ジウは管理人室を訪ね、このマンションで起きたと噂される不思議な現象について聞く。ジウがマイクロカセットレコーダーのスイッチを入れると、管理人が重い口を開く。ここには昔孤児院があって大火事によって多くの子供が亡くなったと言う。そして504号室に引っ越して来た作家について語り始める。作家は、誰もいない階下から聞こえる子供が騒ぐ声が煩いと文句を言っていたが…【第2章 薬師(薬剤師)】かつて908号室に女薬剤師が住んでいた。そして彼女が付き合っている男が悪運を持ち込んだと言う…【第3章 仲介人】ジウが管理人室を訪ねると誰もいない。すると流し台の下に身を隠すやつれた男を見つける。男は、かつて708号室に暮らす不動産仲介人だったが、ある日台所の流し台が詰まった、と話し始める…【第4章 留学生】編集者に好評なのでジウはまた管理人を訪ね、金を払うのでもっと教えてくれ、と懇願する。管理人が語るのは、604号室に住む学生を、しばらく泊めて欲しい、と訪ねてきたテフンという帰国留学生の話だ…【最終章 管理人】ジウの後輩ダヘはジウの取材カセットを聞いていて恐ろしいことに気付き、バイクを飛ばしてクァンリム・マンションに急ぐ。その頃ジウは管理人から、すべてが分かる場所、と1504号室の鍵を手渡され、その部屋に向かう…

 

マンションに取材に来るウェブ漫画家ジウに、「悪女」の二枚目ソンジュン、物語の語り部でマンションの管理人に、キム・ホンパ、ジウの後輩ダヘに、「オクス駅お化け」ヒロインのキュートなキム・ボラ。【第1章】小説家ヒョンフンに、芸歴の長いイ・チャンフン、【第2章】薬剤師ソンファに、見たことがあると思いきやガールズグループ<ガールズデイ>で一番のお気に入り美形パク・ソジン、刑事に、お馴染みヒョン・ボンシク、薬局オーナーに、ともかく笑えるキム・ジェファ、【第3章】不動産仲介人に、芸達者脇役大ファンのソ・ヒョヌ、【第4章】留学から帰ってきた学生テフンに、ドラマでは人気上昇中らしい映画では初めて見る二枚目カン・ユソク。

 

通信大手ktがVOD向けに作った8エピソードのホラー・ドラマを劇場公開用として全5章のオムニバスに再編したようです。それもあってか、最近流行りのド派手なVFXや毒々しいメイクアップで怖がらせる、というよりは、古びた運動靴、ラジオ、排水口、黴といった日常的な素材でじんわり怖がらせるという感じで、それはそれで新鮮な感じだったりします。一見章ごとバラバラのように見えて微妙に登場人物が交錯したりして、全体として統一の取れたオムニバスになっている所も魅力でしょう。役者陣は地味目ですが、薬剤師パク・ソジンと不動産屋ソ・ヒョヌ、狂言回し的キュートなキム・ボラがお気に入りです。

 

ドラマ向けに作られたとはいえ、舞台としてのマンション(後述)が雰囲気たっぷりな上、緻密に作り込まれた各部屋の映画美術は実に凝った映像美を生み出していて、B/C級と片付けられないクオリティを感じる観客も多いのではないかと思われます。有料配信の時代となって、ドラマの質ももの凄く高くなった、と思わざるを得なかったりします。

 

舞台となったクァンリム・マンションですが、ソウルのど真ん中ナムサン(南山)近く1970年に建てられた”フェヒョン(会賢)第2市民アパート”という知る人ぞ知るロケのメッカを使っています。崖沿いに建てられているので、何と崖側からは連絡橋でアパート6階に入れる、というとんでもない構造なので思い当たる方も多いでしょう。映画でも「親切なクムジャさん」「チェイサー」など山ほど登場していますが、最近では「偽りの隣人」で丸ごとこのアパートが舞台になってたりします。ネットによれば2023年解体予定とのことで、もうないかもしれませんが…