ちょっと疲れたので、再び寄り道…5年前にキム・オクピンが殺し屋を演るとの噂でワクワクしていた…「悪女/AKUJO」 (2017) 악녀

 

古びたビルに入ると、スッキの前には子分たちが立ちはだかるが、はじめは銃で、弾が尽きると二本持ちのナイフで次々となぎ倒していく。奥の部屋に入ると、そこには荒くれどもに守られたパク親分がいるが、スッキは傷だらけになりながらも倒していき、最後にパクの首にロープを巻き付け、その端を持って自分はビルの窓から飛び降りる。地面に降り立つと、パトカーと警官たちに取り囲まれるが、スッキは不敵な笑みを浮かべる…気づくと十字架の掛かった白い部屋だ。防護服を着た監視人たちを殴り倒して部屋を逃げ出すが、厨房やバレエ教室や演劇舞台を通り抜け屋上に出るとそこは教会だ。敷地外に飛び降りた所で再び気を失う…クォン部長は、ここは国家情報院が殺人マシンを育てる訓練所で、10年任務を果たせば自由にすると言う。しかもスッキは妊娠しているというのだ。選択肢のないスッキは受け入れ、過酷な訓練の日々が始まる…

 

生きる殺人兵器キム・スッキ(偽名:チェ・ヨンス)に、アラフォーでますます魅力的キム・オクピン、ヨンビョン(延辺)地下組織のイ・ジュンサンに、今回は目茶目茶クールなシン・ハギュン、監視対象であるスッキに惚れてしまう国家情報院チョン・ヒョンスに、「ホラー・ストーリーズ2」の「絶壁」が印象的なソンジュン、国家情報院訓練所クォン部長に、『パリの恋人』からずっとファンの美形キム・ソヒョン、訓練所先輩キム・ソンに、同じく『パリの恋人』以来ファン変化球脇役チョ・ウンジ、訓練所後輩ミンジュに、キュートなソン・ミンジ。友情出演では、スッキの父に、光州生まれの名コメディアン、パク・チョルミン。

 

とにかく冒頭およそ7分間、一見ワンカット撮影に見える殺戮シーンに度肝を抜かれます。前半4分弱はPOV風に画面には自分の手しか見えない映像で敵を撃ち殺し、斬り殺すシーンが続き、後半3分強は接近カメラ撮影でキム・オクピンのド迫力アクションが見られる仕掛けです。数えてみましたが、前半でおよそ50人、後半でおよそ15人の敵をなぎ倒していて、どうやって撮影したのか全く想像のつかない凄まじいシーンとなっています。とにかく本作の演出・撮影技術はトビキリで、冒頭をはじめとして、バイクでチェイスしながらの斬り合いとか、主人公目線で崖やビルから飛び降りたり疾走するバスに飛び移ったり、その迫力には舌を巻きます。ストーリー的にはリュック・ベッソン「ニキータ」に因縁とか復讐とかのコリアン・スパイスをふんだんにまぶしたという感じですし、中盤はちょっと余計な甘目エピソードで緩んだりもしますが、エンディングの凄まじいラスボスとの死闘に向かって全力疾走する感じは、相当なクオリティだといえるでしょう。勿論「ニキータ」風のウェディング・ドレス姿での遠距離スナイプといったサービス精神でうっとりできたりもします。ヒロインを支える役者も良くって、育ての親シン・ハギュンの迫力、鬼の訓練部長キム・ソヒョンのクールビューティ、優しいソンジュン、嫌みな先輩チョ・ウンジなどが上手く脇を支えていると思います。

 

映画はバランスだと思ってますが、これだけ高品質なバトル・シーンを見せつけられれば、それだけで五つ星やむなしです。これまで、脚本だけ、役者だけ、はありましたが、演出だけでの五つ星は初めてで最後でしょう。勿論ですが、潤沢な殺戮とか湯水のような血しぶきとか苦手な方は、十分な距離を保つことが必要です。