ハン・ヒョジュに戻って、ほぼ最後の未見作品、でも…「愛を歌う花」

 

1991年。工事現場で古いレコードが見つかる。幻の曲と伝えられるソ・ヨニの「朝鮮の心」だ…ソユルがソニに出会ったのは、キーセン(妓生)養成所、大成(テソン)券番だ。幼いソユルは名人の母親の血を受け継いで既に正歌(チョンガ:貴族のための伝統歌、ちなみにパンソリは庶民向けという)の名手だ。そこへ父親の借金のカタにソニが預けられたのだ。時が経ち、日本統治下の1944年、親友となった二人はキーセンとして券番を卒業する。当時、大衆歌謡が人気を博し、二人も美声の歌手イ・ナニョン(李蘭影)「木浦の泪」に夢中になる。ソユルにはキム・ユヌという恋人がいたが、ある日、彼にとある豪邸へ招待される。そこは何とイ・ナニョンの家だ。そして、キム・ユヌは彼女に曲を作る作曲家チェ・チリムだという。ソユルはヨニも呼びたいと言う。こうして、三人の人生が交わり、朝鮮と同じように激動の中へと船出するのだ…

 

キーセン(妓生)チョン・ソユルに、ハン・ヒョジュ、チェ・チリムの名で人気の作曲家キム・ユヌに、「春の夢」にちょっと顔を出した二枚目ユ・ヨンソク、ソユルの幼馴染で親友キーセン、ソ・ヨニに、ここ数年主演作も多いチョン・ウヒ、総督府警務局長の平田清に、再開後のブログでも出ずっぱりパク・ソンウン、券番の女主(オンナアルジ)サンウォルに、大好きなチャン・ヨンナム、券番の番頭に、『冬のソナタ』から見続けるイ・ハヌィ、上達しないキーセン、オクヒャンに、妙に印象に残る伊藤沙莉を思い出したキュートなリュ・ヘヨン。特別出演では、実在の人気歌手イ・ナニョン(李蘭影)に、ミュージカル女優らしく歌は抜群チャ・ジヨン。

 

見終わって、分からないことが三つあります。一つはこの映画についての詳細なネット・レビューが余りにも多くて、Youtubeにメイキングもあり、実在のイ・ナニョン(李蘭影)や劇中歌われた楽曲「木浦の泪」や「春のお嬢さん」など普通なら調べないと分からないことが殆ど残らなかったこと。もう一つは、それにも関わらず、KOBIS統計では本国の観客動員数が50万人に満たず上映だけでは損益分岐点に恐らく達していないであろうこと。最後は、何故、ハン・ヒョジュにソユルの役をキャストしたか。それらの答えはよく分かりませんが、俳優や裏方の意気込みがしっかり感じられる良い映画だと思います。このパク・フンシク監督は、「私にも妻がいたらいいのに」「人魚姫」「愛してる、マルスンさん」と等身大の人情ものでの語り口が上手で反りの合う監督ですが、今回もやや激情が過ぎた感じはあるものの、エンディングの巧さなど相変わらず波長が合います。

 

ハン・ヒョジュについて、こっちの役かぁ、という恨み節は残るものの、女優の奥行の広さを感じさせる名演ですし、悲劇の香り高い文芸作品として充分評価に値する名編だといえるでしょう。

 

余談ですが、映画題名が"LOVE,LIES"なんですが、観る前はどうせ雰囲気で適当につけたタイトルだと思ったんですが、エピローグでその重要な意味を知り、不明を恥じました。邦題よりもよほど作品への愛情が感じられるタイトルです。

 

備忘録ですが、といってもあちこちで書かれていますが、原題の意味について…解語花(ヘオファ)は、「人の言葉が分かる花」の意味でキーセン(妓生)の別称。ちなみに何故「花」なのかは、券番の女主(オンナアルジ)サンウォルの言葉によれば、「男に手折(タオ)られるために咲く」からだそうです。セクハラ発言として糾弾は避けられないでしょう。

 

さて、この5年で気になった四人の女優を追っかけてきました。まだ1~2本未見作が残ってますが、男優にいきます。まずは文句なしでソル・ギョングとソン・ガンホですが、後は、キム・ユンソクとハ・ジョンウでしょうか。これまで同様、この四人で観れるものを片っ端から手に取ろうと思います…