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「Rポイント」のコン・スチャン監督が贈る、渾身のミステリー・サスペンス、「GP506」。

北朝鮮兵士と数百メートルの距離でにらみ合う最前線、21名の兵士が詰めるGP(Guard Post:最前方哨戒所)506。2007年5月29日、異常に気づいた本隊が調査隊を派遣すると、無数の丸腰で無惨な死体と、血まみれで斧を手にした上等兵を見つける。妻の通夜の最中に呼び出された軍で最高と云われる捜査官を筆頭としたやはり21名の捜査隊が派遣され翌朝6時までの期限付きの調査を開始するが、やがて、遺体の数が19体しかないことに気づく。迷路のようなGP内を捜索する内、発電室でもう一人の生存兵を発見するが、固く口を閉ざし、さらに、本隊に容疑者である上等兵と19体の遺体を運ぶトラックも豪雨による崖崩れで立ち往生し、GP内に戻ってきてしまう…

捜査隊の長に、「デイジー」とか重厚な演技が冴えるチョン・ホジン、謎の生存兵に、凡作「スキャンダル」以来の映画出演『薯童謡(ソドンヨ)』で爆発的な人気を博したチョ・ヒョンジェ、容疑者の上等兵に、「後悔しない」で強烈な同性愛演技を見せたイ・ヨンフン。特別出演には、本隊の大佐に、ソン・ビョンホ、最後にちらっと顔を出す復旧隊長に、パク・ウォンサン。

この映画を見る前に、知っておいた方が良いと思われるいくつかの事。一つ。GPは、広さ1000乃至1500平米程度で、非武装地帯(DMZ)の中にありながら何故か全員重武装をしており、3カ月の勤務を原則とし、その間一切出ることが許されない。一つ。2005年6月19日、京畿道のGPでキム某一等兵(22)が錯乱し手榴弾を投げ銃を乱射し、将校・兵士8人が死亡、4人がけがをするという惨事が起きた。ただし監督は、この事件は全く念頭になかった、とインタビューで答えている。一つ。GPの存在は、このキム某乱射事件までは機密扱いで、一般庶民には殆ど知られておらず、GOP(General Out Post:一般前哨)が最前線と思われていたらしい。この映画では、もっと近いGOPまで4Kmという台詞が出てくる。

とにかく、序盤・中盤は、完璧な五つ星レベルです。恐怖感溢れる最前線GP、無惨な丸腰の大虐殺、謎の生存者、何故か鍵のかけられた武器庫、と掴みの巧さが最上級な上、さらに、時間の制約、残された資料から少しずつ明らかになる恐ろしい事件の背景、やがてそれが少しずつ現在の21名の捜索隊にも暗い陰を落としていくあたりの展開も抜群、さらにさらに、チョン・ホジン、「スキャンダル」では貶してしまったチョ・ヒョンジェ、イ・ヨンフンの三人の重厚な熱演が輪をかけることで、「(初代)エイリアン」「惑星からの物体X」といった大傑作に比肩しうるサスペンスを醸しだしています。勿論、終盤も最後まで素晴らしい緊迫感を持続してはいるんですが、残念ながら話の中核部が多少期待外れだったので、結果的には惜しい四つ星になっています。

「Rポイント」を見て雰囲気作りが抜群の監督だとは思いましたが、思った以上に凄腕で、これはホラーではありませんが、チャラチャラしたコケ威しが多い中、これほどの腰の座ったサスペンス演出は絶賛に値するでしょう。暗い映画館で見ていれば、叫んで逃げだしていたに違いない、と思うと、DVDで見て良かった、とつくづく思ってしまった逸品です。ご覧になるとしたら、ご注意されることをお薦めします。