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さらにもう1本チョン・ウソン主演作、「デイジー」。

「猟奇的な彼女」「ラブストーリー」「僕の彼女を紹介します」天才ストーリー・テラー、クァク・ジェヨンが脚本を書き、「インファナル・アフェア」とか暗黒街ものを得意とするアンドリュー・ラウがメガホンを取った、高級感溢れるメロ・アクションの佳編。

異国オランダでどこか寂しげな25歳画家の卵に、チョン・ジヒョン、内向的な孤高の殺し屋に、チョン・ウソン、インターポールの刑事に、イ・ソンジェ、その先輩に、「拳が泣く」「私の生涯で最も美しい一週間」チョン・ホジン、チョン・ジヒョン祖父の骨董屋に、「猟奇的な彼女」にも顔を出した妙に存在感のあるユ・スンチョル。

シナリオは、いきなりチョン・ウソン全開のアナザー(韓国公開)バージョンと、いつまで経ってもチョン・ウソンが出ずチョン・ジヒョンとイ・ソンジェばっかりのインターナショナル・バージョンでかなり印象が違うものの、勘違い、丸木橋、植木鉢や読唇術といった小道具や伏線も冴え、メロな味付けのサスペンス・アクションとしてさすがと唸らせる流れを見せますし、演出も、さすがアンドリュー・ラウ、アムステルダム、ハーグの風景・街並みを活かし、静動・緩急・明暗を鮮やかに使い分けた絵づくりは職人芸です。役者も、「イルマーレ」以来久しぶりに癖のないストレートな演技チョン・ジヒョンはキュートですし、非現実的でロマンティックな殺し屋役はチョン・ウソンに適役ですし、実直そうなイ・ソンジェも見せ場は少ないもののその穏やかな存在感はさすがです。

ただエンターテインメントとして好感度満点だと思いますが、映画としては、誰に思い入れるか迷わせるような所がありますし、個々エピソードは上出来ではあるものの全体の流れは結局ありがちのように思えて、余韻が残らず、あっさりした感じが強い気がします。そんな映像も音楽も美しい超高級なMVを見たような後味が多少物足りなくはありますが、役者を含めた絵づくりの素晴らしさは傑出しているので、何度見ても飽きることはないでしょうし、折にふれて見たくなるような類の作品といった感じです。

余談ですが、インターナショナル・バージョン冒頭の雨宿りのシーンでは、右端にイ・ソンジェと煙草を吸うチョン・ホジンがちらっと映っていて、ニヤリとさせられたりします。