イメージ 1

 

もう一本、ナ・ムニ、チェ・ミンシクの出演作から、最高傑作「拳が泣く」。

2005年カンヌ国際映画祭で国際批評家連盟賞を獲ったそうですが、なるほど、文句なしの傑作です。私の中では韓国映画ベストに躍り出たんですが、見終わった感じは30年前に見た「カッコーの巣の上で」によく似ています。ただ残念ながら、この映画の底知れない力強さを、ネタバレなしに説明することは出来ません。映画の構成自体が、その魅力の大きな理由の一つになってるからなんですね。役者の魅力の一部だけお伝えします。

主人公は二人。ボクシングアジア大会銀メダルリストの経歴を持ちながら、落ちぶれ、道端で1分1万ウォン(女性は2分というのが泣かせます)で殴られながら生きている男にチェ・ミンシク。喧嘩しか知らず強盗で服役している、すぐキレる若者にリュ・スンボム。彼らには、絶え間なく人生の過酷さが襲い続けます。そしてある日、二人が希望のかけらを見つけた時、それが二人の出会いとなります。ともかくこの二人、半端じゃなく素晴らしいです。

チェ・ミンシクの傍らには、彼を食い物にする詐欺師に「面白い映画」のイム・ウォニ、つかず離れず彼を見守る食堂の主人に「私の生涯で最も美しい一週間」のチョン・ホジン・・・二人とも独特の風情で、彼の人生を浮き彫りにしていきます。

リュ・スンボムの方では、父に『オールイン』サンドゥ親分キ・ジュボン、祖母に名優ナ・ムニが扮し、今回は抑えた演技で胸に迫りますし、ボクシング師範役ピョン・ヒボンも好演です。

「序章」にあたる部分は例えようもなく辛いですし、ボクシング・シーンが凄まじい迫力だったりするので、決して美しい映画とは云えませんが、最後まで見て頂ければ、この映画の素晴らしさがきっと伝わると思います・・・