2023年の1月以来、更新していませんでしたアメブロですが、これからは中央園芸のブログ、発信等はnoteへ移行していきます。
長い間、ご愛顧いただきありがとうございました!
中央園芸 押田大助
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長い間、ご愛顧いただきありがとうございました!
中央園芸 押田大助
ようやくじっくり読むことができた、「古家リノベーション」。
寄居町の「種まき鳥」というチームで共に地域の環境再生活動をしている平山友子さんの著書。
平山さん自身が取材した古民家や昭和の家、空き家などのリノベーションの実例集。
インタビュー形式の文章と心温まる写真がたくさん。
パラパラと見ているだけでも楽しい内容です。
この本の中では、僕も関わった寄居町の大田邸の記事が取り上げられています。
地域おこし協力隊として活動する大田さんに、庭を見てほしいと相談を受けたのが、2020年の秋頃。
あまり予算をかけられないということもあり、2日間のワークショップ形式で庭づくりを行うことになりました。
ワークショップ1日目は、エントランス付近のスペースの土中環境改善を行い、数か所に植栽。ある程度水はけも改善されたところで、2回目は何をしようかと庭を見渡すと、もともとあった日本庭園風の石組みが目に入りました。
このスぺースをどう活用するか?以前から悩んでいたところではありました。
直感的に、ここは竹ドームしかない!
ということで、2回目のWSは初の竹ドームづくりを行うことに。
知人の竹林から真竹を調達し、WS参加者が竹割り初体験!
竹を割る道具「五ツ割り」を使い、皆さんに竹を割っていただきました。
そして、竹ドームの完成!
元々日本庭園風の流れと池の石組みがあり、円形の池の石組み部分のスペースを再利用しています。
これが意外に座りやすく、竹ドーム内のベンチ代わりに!
夏には、寄居の朝顔「団十郎」を竹に這わせて・・・
竹ドームに朝顔。
とても良い組み合わせですね!
結果的に、庭をリノベーションしたことで人も集まるようになり、水はけも改善されたという事例です。
古家リノベーションより↓
それから昨年の夏、同じく大田さんの空き家の物件にも関わることに。
こちらは寄居町の折原地区。
庭の木々を軽く剪定し、風通しを確保、駐車場は広めにして、あとは庭を周遊できるようにウッドチップを敷いて。
予算も限られている中、あまり手をかけないように、あるものを生かしつつ。
入り口には1箇所だけ、在来種の雑木の木立を植えて,駐車場は芝を植えて完成!
(人工芝ではありません)。
こちらは現在一棟貸しの宿泊施設、「帰宿穏坐(きしゅくおんざ)」として、宿泊できますので、是非!
庭のリノベーションで面白いのは、いざ庭に手を入れてみると、今まで住んでいた方の庭の景色が浮かびあがってくること。
それは、遺跡を発掘するような楽しみがあり、
長い年月の間に草や土に埋もれていた庭でも、以前つくられた庭師や住人の造作や想いが垣間見え、とても興味深いものがあります。
こちらの外水道の近くは、玉石を使用した枯山水風の石組みが出てきました。
飛び石の位置を多少変えたり、玉石も少し動かし、新たに化粧砂利を敷きなおして、リノベーション。
当時は当時で、気持ちを込めて作った庭でしょうから、そこをリセットして作りなおすことは極力避けます。
そこにある材料はできるだけ生かしつつ、現代の好みにあった庭園に形を変えていく方が、家主もその土地も喜ぶことと思います。
こちらは、寄居町末野にある古民家。
かつての養蚕農家の建物らしく、屋根の真ん中にある高窓と赤い屋根が印象的な古民家です。
大正6年に建てられたそうで、築100年以上経過しています。
こちらは同じ種まき鳥で活動する柴崎広美さんが借りた物件です。
建物の骨組みはしっかりしていますが、数十年放置されていましたので、周囲の庭や裏山も荒れ放題で・・・
僕も大地の再生として関わり、ここを地域に開かれた場所として再生することになりました。
建物内の修繕や片付けも何とか終わり、(柴崎さんは本当に大変だったと思いますが・・・)
種まき鳥主催の「里山文化祭」の中で、杜人の上映会をこの古民家で行いました。
庭に関しては、柴崎さんが前庭の草刈りをする程度で、あとは何もしていません。
裏山を抱える、典型的な里山の古民家の立地。
午前、午後の2回の上映会の後は、参加者と一緒に建物周辺の環境改善のWSを行うことになりました。
建物と裏山との間の空間。
裏庭の竹が建物際まで繁茂して奥が見渡せません・・
夏場に一度現地を見せていただきましたが、やぶ蚊がすごくて、ひどい状態でした・・・
そんな場所をみんなで改善していきます。
人が入れないくらいの竹やぶでしたが、少しずつ竹を切り開き奥に進んでいきます。
でも、すべての竹を切り払うのではなく、適度に「やりすぎない」事がポイント。
WSの時間は1時間半程度。
裏山も限られた時間の中で道をつくり、竹を間引く。
周囲の環境や植物にも少しずつ慣らしていく感じで。
裏庭部分から水が湧き出ているポイントを発見!
山と平地の境目(斜面変換線)に溝を掘っていきます。
そして、改善後(写真はWSの数日後)。
裏庭の奥まで見渡せるようになり、とても気持ちのいい風が吹きぬけるようになりました!
さらに、第二回目の環境改善WSは今年の1月7日。
色々と敷地内を見ていくと、裏山からの水脈がこの建物の右端の増築部分で停滞していることがわかってきました。
敷地の右側に水が溜まり、増築部分の建物内は、床が抜け湿気がひどい状況でした。
今回は、この古民家の湿気をさらに抜くような改善を行うことにしました。
建物裏に無造作に置かれていた既存物は、風通しを悪くします。
これを整理して、さらに建物際に溜まっている落ち葉や土を掘ります。
前回は、山と平地の境界部分の斜面変換線ラインに溝を掘りましたが、今回は建物際に溝を掘ります。
参加者による溝掘り。深さは15~20cm程度。
掘った土は周囲に盛ります。
こちらの建物増築部分は、湿気がひどく、掘ると水が湧き出るような状態。
これでは建物も傷みます。
溝が掘れたら、炭を入れて前回切った竹を溝に入れていきます。
この敷地内は、シホウチクが繁茂しており、前回切ったその竹を細かくして、大ハンマーで割り、水脈で使用しました。
建物際は、柱もところどころ腐っている状態でした。
点穴
掘った溝に、炭と竹、竹穂を入れて水脈の完成。
グランドカバーとして、竹の葉を敷き詰めました。
前回の竹穂や葉がここでも役に立ちます。捨てるものはありません。
建物の周囲に水脈が復活し、とりあえず一段落。
こちらの建物はコンクリートではなく束石の基礎ですので、縁の下を覗くと反対側まで見渡せます。
これで建物内にも空気が通ります!
この日は真冬にもかかわらず、良い天気でした。
冬の乾いた日差しが建物内に差し込みます。
建物の周囲に空気が通り出すと、建物内部も心地よい空間に変わっていきます。
人が心地よいと感じるのは、建物を直すことだけや、天気のせいだけではありません。
周囲の環境改善をやってこそ、本当に建物が生き返っていくように思います。
ちなみにこちらの古民家は柴崎広美さんの意向で、フランスのテイストを入れた庭園にしていく予定。
名前も「古民家クイジーヌうさぎのテーブル」と名付けられました。
どのような庭になっていくのか、僕自身も楽しみです。
こうした古民家はある意味地域の宝だと思います。
古民家で暮らしたことのない10代、20代もなぜか「懐かしい」と感じる。
もし今でも現存する古民家があるならば、色々な事情があるにせよ、是非残していってほしいと思います。
これから増える空き家をどうするか?
どこの町でも大きな問題となっていると思います。
古民家は比較的人気がありますが、実際の空き家は大田邸のような築30〜50年ほどの、古民家ともいえない、いわゆる昭和の古家が多いように思います。
しかしながらこのような家は、建材的には再利用が不可能、土にも還らない、廃棄物ばかり出てしまう、といういわゆる新建材(合板や樹脂シート、ビニールクロスなど)の家がほとんど。
でも、そこを嘆いていても仕方がありません。
必ず地域には腕の良い大工さんや協力してくれる人が少なからずいるものです。
建て直す方が安く済むからとこれを壊して廃棄物をたくさん出すよりも、今あるもので何とかしてみる。
庭づくりでも同様ですが、一度庭を更地にしようと樹木を切り、特に大きな木の根っこを抜いたりすると、途端に水はけが悪くなります。
今までの水脈や風土を繋いできたものを一度リセットしてしまうことは、自然に対してのインパクトが強く、その土地のポテンシャルを大きく下げることになりますので、注意したいところです。
今回紹介した事例のように、地域に開かれた場にしていくには、とてもエネルギーが要りますが、でも地域の方と関わりながら、建物を直し、周辺環境を再生させ、そしてコミュニティも作っていく。
そう考えると、空き家は地域の環境を含めた共有財産だと考える事もできます。
この土地の環境が良くなることで、その周辺にもプラスの連鎖が広がっていきます。
一人では途方に暮れることも、WSなどを開催したり、お互いに協力しながらその土地を傷めないよう活用していく。
これが現代の「結い」ということなのでしょう。
最後は、同じく寄居町の市街地、伊勢屋という和菓子屋をリノベーションした事例。
こちらは街中ということもあり、外には植栽スペースはありませんでした。
ということで、なんと店舗内に植栽することになりました。
事前に土間のコンクリートに植栽スペースを開けてもらい・・・
穴を掘り進めてみます。
少し深く掘ってみると、湿り気のある土も現れてきました。
植え穴の下は稲わらやもみ殻くんたんを入れて、地下の水脈と繋がるよう根を誘導します。
焼き杭を2,3本打ちこみ、土に落ち葉ともみ殻くんたんを混ぜ、排水性を保ちながらも、保水性のある土壌に仕上げます。
ということで、周りを大谷石で囲み完成!
ここに木を植える事で、この土地の水脈と繋がるように・・・
全くの室内に木を植えたのは初めてでしたが、昨年の夏に植えて以来約半年が経過、多少の試行錯誤はありましたが、まだまだ健在であります。
こういう室内の植栽も木々にとっては過酷な環境ですが、ただ鉢植えを床に置くよりは、根が大地と繋がることが大きな価値を生む事と思います。
こちらのお店はMujaqui(むじゃき)いう宿泊可能なオーガニックレストランとして昨年夏にオープン。
寄居の新たなスポットとなっています。
Mujapui | オトナもコドモも、無邪気な人が寄居町に集う。 (mujaqui.jp)
空き家のリノベーションは、お金がかかる、かからないという次元の話しよりも、とにかくその土地の環境を壊しては意味がありません。少しでも大地の水脈を繋ぎ、周辺環境を良くすることで、建物も人も心地よい空間として生まれ変わることができるのだと思います!
僕の役割は、大地の再生の担い手として環境再生の手法の学びを深め、そしてそれを実践し、多くの方に知っていただくこと。
「結の杜づくり」各地で広まることを願います。
2022年も残すところあとわずか、ここでひとつお知らせがあります。
長年中央園芸の番頭として活躍してきた濱田和之君ですが、2022年12月末を持ちまして退社しました。
弊社の仕事納めの12月29日、朝礼時に、お花の贈呈!
2009年の春に入社以来、なんと13年間も弊社社員として働いていただきました。
入社当時は植木屋として全くの素人でしたが、与えられた仕事を実直にこなし、またとても素直で人懐っこい性格からか、お客さんや多くの先輩方からとても可愛がられました。
僕も仕事以外の活動が増えてきた頃には、しっかりとに現場を仕切り、僕も安心して仕事を任せられるようになりました。
奄美大島出身、高校卒業後に大阪を経て埼玉の秩父に移住、23歳で弊社に入社しました。
「自分の故郷である奄美大島の自然を再生させたい!」と宣言したのが、2016年の山梨県大月市での大地の再生 関東甲信越支部の立ち上げの時。
中央園芸で庭づくりや日々大地の再生活動をする中ではありましたが、やはり地元の奄美大島の事を忘れたわけではありませんでした。
ここ数年は故郷での大規模な開発や自然環境が壊されていくニュースを耳にすると、もう行動せずにはいられなくなってきたようでした。
2021年の10月末、
奄美大島での護岸工事建設問題に対して、大地の再生の仲間とアダンの植樹活動を嘉徳海岸にて実施。
地元の新聞にも大きく取り上げられ、何とも頼もしいコメントを残しています。
地元紙の奄美新聞での記事
↓↓↓
↑↑
真ん中のヒゲが濱田君。 (なぜか3人ともよく似てます、、、)
さらに1年後の今年10月、
映画杜人の上映会の後、奄美大島2世の山梨で活動する藤井マキコさんと共に、奄美大島にて大地の再生講座の開催をついに実現しました!
この時の活動が認められたのか、奄美大島での仕事のオファーも受け、早速年明けの1月下旬には再び奄美大島を訪れることが決まっているようです。
全くの造園の素人だった青年も、今では二児の父となり、本庄市に緑溢れるマイホームを建てることもできました。
来年からは、「みどり縁(えん)」という屋号で、奥さんと共に会社を立ち上げます。
中央園芸として濱ちゃんを失うことはとても厳しいところはありますが、日本中の大地や環境が疲弊しているこんなご時世、中央園芸の力が削がれていては会社にとっても、いや地域にとっても、いや、日本にとっても大きな損失となります、、、
とにかく今の世の中は自然環境を再生する施工チームやどんな状況下でも現場を納められる現場力が世間からも求められています。
なので、出来るだけ早く濱ちゃんが現在住んでいる本庄地域で力をつけて施工チームをつくることが僕らの地域や奄美大島、そして日本にとっても大きなプラスになることと思っています。
これからも僕も濱ちゃんもお互いに現場での観察や技術を共有しながら、世のため人のために、協力しながら残された時間を使っていきます。
弊社も今ではやり切れないほどの造園工事や大地の再生のオファーをいただくようになり、多くの雑誌にも載せていただくようになりました。
本日届いた、造園専門雑誌「庭」と「住宅建築」。
濱田君の力があってこその掲載でした。
初々しい濱田君の姿も見られる、2016年のブログ記事、
当時入社8年目の濱田君の歩みも是非ご覧ください。
雑誌掲載のお知らせ(入社8年目、中央園芸濱田君の歩み。) | 中央園芸のブログ (ameblo.jp)
中央園芸としても、新たにスタッフを募集するとともに、共にこの環境再生の仕事をに協力してくれる仲間(バイト)も随時募集いたします。
色々とお世話になった皆様方へ、これからも濱田くんにご指導、ご鞭撻をよろしくお願いいたします!
暑中お見舞い申し上げます。
毎日暑い日が続きますが、みなさんいかがお過ごしでしょうか?
今年は観測史上最速の梅雨明けとなり、7月を前にして35度以上の暑い日が連発しました。
日本でも有数の酷暑地域となった熊谷や群馬県の伊勢崎、館林市などは40度を超える事も何だかそんなに珍しくなくなってきました。
こう暑くなると、テレビのニュースではしきりに節電を訴え、行政からの防災無線からは「外出を控えてください!」と放送していますが、僕たち造園業をはじめ、どんなに暑かろうが雨が降ろうが毎日屋外で働いている人はたくさんいます(笑)
一般の方は外出しないで、エアコンの効いた部屋にいるほうが確かに良いと思いますが、電気が止まったらどうするのでしょうか・・・
さて、今年僕は赤外線サーモグラフィという機器を手に入れました。
物体から放射される赤外線を分析し、画像として色分けしたものが、サーモグラフィです。
温度の違いを数字だけでなく、色分けして可視化できるので、前から欲しいなぁと思っていました。
まずは自分の手を測ってみます。
手が真っ赤です!
別にやけどをしたわけではありませんが・・・
色々と数字が出ていますが、
この画像の見方を説明します。
左上の35.6度という数字は、矢印のポイントの温度が表示され、
右側の温度はこの画像の中での温度の高いところと低いところが色分けされます。
事務所の横の居間にいた母を撮ってみました。
顔が赤くなり、猿?のようですが母親です(笑)
人の体温は36度くらいでしょうから、この部屋の中では体温が一番高く赤くなり、左の青い部分は仏壇があるところで、温度は低く青く表示されました。
次に、25度くらいの涼しい日に、弊社のモデルガーデンを計測してみます。
一面真っ青な色の中に、真っ赤な色が!
樹木の陰に隠れる弊社スタッフです。
気温より体温の方が高い時は、このように木の陰に隠れていてもサーモグラフィには赤く表示されます。
「隠れていても見えてるよ!」
すごい性能です。
お遊びはこのくらいにして、
これで真夏の外の温度を測ったらどうなるのでしょうか?
観測史上最速で梅雨明けした2日後の6月29日(水)のお昼前、
熊谷市内を移動中にいくつかの場所でサーモグラフィで温度を観測してみました。
車を走らせると、熊谷でも数少ない枝葉の茂るケヤキの街路樹の通りがありました。
熊谷の肥塚交差点からラグビー場のあるスポーツ公園への通り。
ちなみにこの日の熊谷の最高気温は39.1度で、写真はお昼ごろに撮ったものです。
まずはアツアツのアスファルト舗装の歩道から観測。
予想通り、真っ赤っか!
アスファルト舗装のポイント部分は59.9度、場所によっては62.3度を計測!
立っていられないほどの暑さです・・・
次にケヤキの街路樹の中へ入ってみると、
体感的にもひんやりと、涼しい!一気に温度が下がります。
一番温度の高いところが65度を記録していますが、おそらく右の建物の屋根が暑かったようです。
ケヤキの下は青い色が多くて、木陰の涼しさが見た目にもわかります。
先ほどは真っ赤っかだったアスファルト舗装の歩道の木陰側も撮ってみました。
今度は真っ青!
ポイント部分は33.4度と30度近くも低いことが判明!
さすがケヤキの街路樹です。
この通りを北に上がると、熊谷のラグビー場のあるスポーツ文化公園の入口があります。
ここは公園内ですが、熊谷の中で一番街路樹の美しいと思われるケヤキ並木があります。
車を停めて涼んでいる方も多いケヤキ並木ですが、
こちらも木陰の涼しさがよくわかります。
日の当たる車道部分は赤く表示され60度近くありますが、ケヤキの木陰は30度くらいで、本当に涼しい。ちなみに一番温度が低いところはケヤキの木の幹のようで、濃い青色で表示されました。
それでは、別の日に今度は本庄市で計測しました。
本庄市北口にある銀座通り商店街。
実は昨年まで寄居町にあったGOOD PARKは、今年の春先に本庄市銀座通りの旧ポケットパークに一部を移設しました。(写真は2022年春の移設時)
あれから3か月が経過しました。
夏になり、地面の草も伸び、一面が草で覆われてきました。
7月22日、この日の熊谷市の最高気温は32.3度ほどでした。
車道部分は予想通り赤くなりましたが、GOOD PARK敷地内の草地部分は黄緑色に、そして木陰部分は青色で表示されました。
道路とGOOD PARKでは別世界です。
地面を計測してみると、
草があるところが温度が低く、土(山砂)部分は温度が高く表示されます。
今度は別方向から計測。
草に覆われる部分は温度が低い!そして木陰部分はさらに温度が低い!
雑草たちが、地面の温度をかなり下げてくれていることがわかります!
猛暑の日に、こんな畑を計測してみると・・
草のあるところとないところでくっきりと色分けされました。
しかもかなりの温度差があります!
こんな暑い日はキンキンに冷えた麦茶が一番!ということで、
またもや弊社スタッフの登場。
キンキンの麦茶は5.4度を表示!
おなかを壊さないで欲しいところです・・・
最近話題の空調服も青い色が付きました。
ということで、今回の計測で分かったことは、アスファルト舗装は酷暑期には60度近くになり、触れないほど熱くなるのですが、大きな木の下では温度が上がりません。
つまり、アスファルト舗装がヒートアイランドの原因というよりも、「木陰がない」ということが街を暑くしている原因だということです。
そして、真夏のヒートアイランド対策としてとても有効なのが、雑草や下草を生かすということです。
草を排除して土をむき出しにすると、気温も上がり、雨が降ると泥水が出ます。
泥水は団粒化した肥沃な土壌の空隙を塞ぎ、土の中の呼吸を停滞させます。また、泥水が流れ込んだ川は同様に川底の空隙を目詰まりさせ、生き物の呼吸にも悪い影響を与えます。
雑草などで地面を覆い、草地にしているだけでも温度は下がり、雨水を地中に浸透させます。
また特に夏場の朝は、冷えたビールのジョッキに水滴が付くように、草は結露(朝露)が発生し
地際の気温を冷やします。
草の管理は大変!と、この時期の雑草対策は皆さん苦労されている方が多いですが、これだけ温度を下げてくれて、しかも樹木と同じように水を吸ってくれる存在であれば、活用しない手はありません!
それと、暑さ対策としてひとつ付け加えるとしたら、建物の影や日よけのシェードなどでも日陰はできますが、日陰と木陰では質が違うということ。
今回計測したようなケヤキの街路樹などの高木樹木は1日に数百リットルもの水を地中から吸い上げ、葉から蒸散という形で放出され空気を冷やします。
だから、高木樹木は天然のミストであり、大きな木の下に入るとひんやりと涼しさを感じるのはそのためです。
しかも、雨が降れば大地に水を無尽蔵に浸透させ、猛暑時には蓄えた水を地中から吸い上げ、大気を冷やす。
植物というのは、人にとっても本当に尊い働きをしてくれています。
近頃の天候は、極端な猛暑が続いたり、ゲリラ豪雨があったりと、丁度いい具合の天候が少なくなりました。
大雨が降ると簡単に街中に水があふれてしまうのも、単純に森林や植栽地、草地など緑地が少なくなってしまったことは大きな原因と言えるでしょう。
樹木や草は管理が大変だから・・・
と、街中や住まいから緑を排除していく事は、さらに人が住みにくい環境を加速させていきます。
真夏の日中に暑くて街を歩けないのは、異常気象だけが原因でなく、我々自身が街を暑くしているということを認識する必要があります。
これを打破するためには、植物を生かす以外に方法はありません!
草の管理の仕方については、「風の草刈り」を参考に、上手に草と付き合いましょう!
矢野智徳 大地の再生の手法②風の草刈り - Bing video
映画「杜人」も絶賛公開中!深谷シネマでは30日土曜日まで!
大地の再生のドキュメンタリー映画、「杜人」、今月15日のアップリンク吉祥寺を皮切りに、現在公開中です。
数年前から大地の再生の現場にカメラを持ち込み、主宰の矢野智徳さんを追いかける前田せつ子さんを、何度もお見かけしてきました。
「大地の再生」って何?
風の草刈りって?
風の剪定?
僕も普段の造園の仕事と同時に行っている大地の再生の活動を、多くの方に知ってもらう良い機会だということで、「大地の再生の映画ができる!」ということは我々にとっての大きな希望でした。
監督の前田さんとは、2014年頃の国立のサクラ通りの伐採問題の時にお会いして以来のお付き合いで、大地の再生のメンバーにも何度も試写会を行っていただきながら、念願の映画がようやく完成!
東京を皮切りに、大阪、京都にて公開、そしてようやく24日に僕も横浜シネマ ジャック&ベティにて初めて観覧して来ました。
しかもこの日は監督の前田せつ子さんとともに、舞台挨拶(アフタートーク)にも参加することになり、そのまま人生初の「パンフレットにサインをする」という何とも恥ずかしくも貴重な体験をさせていただきました・・・
↑ただ名前を書いただけのサイン(笑)
感想はというと、とてもいい映画でした!
自分も現場のスタッフとして関わってきたということもありますが、それだけではない、心に残る本当に感動する映画でした!!
詳しい内容は割愛しますが、矢野智徳さんや他のスタッフが災害現場を含む各現場での作業風景や自然が再生されていく様子が淡々と描かれています。
今や最も人が向き合わないといけないであろう環境問題に対するメッセージがこの映画の中にもたくさん込められていますが、それは劇中に大きなクライマックスシーンがあるわけではなく、映画は淡々と始まり、淡々と終わります。
それは、この大地の再生活動が、日々の積み重ねや日常化することが最も大事であり、そして今も問題は続いているのだ、ということもこの映画のメッセージとして読み取れます。
2018年の7月に起きた西日本豪雨災害では、僕も広島県呉市の災害の現場に3tダンプで駆けつけました。
映画の中にも登場しますが、倒壊した家屋に住んでいたおばあちゃんの話では、列植していたカイズカイブキが土砂を食い止め家屋を守ってくれた、木が守ってくれた!
と話され、「樹木は家や人を守る」ということをこの時僕は確信しました。
また、土砂崩れにより滞っていた水脈を繋ぎ直すことで、水切れしていた田んぼを救い、地域の方にとても喜んでいただいたこともありました。
自分のやる仕事や行動が、世のため人のためになればとは誰もが思うところではありますが、大地の再生の現場では何度もそんな経験をさせていただきました。
でもそれよりも我々が泥にまみれ穴を掘ったり、大汗をかきながら草を刈り風を通したりという改善作業によって、弱っていた木々の樹勢が回復したり、大地が息を吹き返す場面に立ち会った時、人の社会を超越した何とも言えない清々しや喜びを感じることがあります。
この感覚は、23日の横浜での矢野さんの舞台挨拶の言葉にもありましたが(ブログの最後に記述)、
人が動植物と共に地球に生きる同志として、自然の摂理の中での役割を全うするような・・・
セミやイノシシと同じように、大地や生き物が循環する仕組みの中で無心で大地に向き合う時、そこに利害関係や効率性などは存在せず、お腹の底から湧き出るような、お金には換えられない充実感を感じる、そんな感覚だと思います。
僕は造園の仕事をしていますが、日々行う庭づくりの中では、普通に穴を掘って木を植えるだけならすぐ終わります。
でも、いちいち敷地の外周に水脈を掘り、植え穴の中には炭や有機物を入れたりとか、
根鉢の下に通気層を作るとか、
根杭の丸太をしっかりと焼いて使用したりとか、
現場はいつも手間のかかる事ばかりで・・・
ここに会社を経営するという現実的な事との共存は、とても難しく頭を悩ませることが多いというのが正直なところです。
でも樹木が活力を無くす姿を見たくはないし、毎年春に生き生きとした新緑を見るためには、現代の劣化した環境の中ではその手間を惜しんでいては実現できないと思っています。
僕も大地の再生の視点を初めて知った時は、大きな衝撃でした。
↑僕が初めて体験した「風の草刈り」の現場。山梨県大月市。
周りの山並みと同じように草を刈ることで、穏やかな風が流れる・・・
地面スレスレで草を刈り続けてきた僕にとっては本当に衝撃的な風景でした!
本当に今までやってきた草刈りや木の植え方なども全然違うし、落ち葉や剪定枝はただのゴミとしか考えられませんでした。
でも自然界にゴミなどは存在せず、全ては循環しているという仕組みが腑に落ちてからは、庭の施工も変化しました。
「そこにあるものを使う」とか、「機能と美」という造園業界の言葉もありますが、大地の再生はやればやるほど本来の伝統的な造園や土木、建築など、かつての日本人が行ってきた優れた技術や考え方から学ぶことが本当に多く、その先にはこれからの街づくりや災害対策としてのキーポイントとなる、「グリーンインフラ」と大きく繋がるものだと確信しています。
映画の中でも、コンクリートの構造物が土の中の空気と水の循環を停滞させている、というお話がでてきますが、コンクリートが悪いというわけではなく、一部に穴を開けたり、形状や使い方を変えるだけで、それは素晴らしい素材となり得ます。
↓ コンクリート間知ブロックを解体し、石垣として再利用した施工例。神奈川県秦野市にて。
この映画を通して、普段は自然とかけ離れた生活をされている方も、流れる水の音とか、草の匂い、風の心地良さなど、何か子供の頃に感じていた感覚を思い出すきっかけになったり、自然災害のプロセスや改善方法、雑草の大切さも多くの方に知って欲しいと思います。
また、この活動の特徴は子供や女性でもできること。
移植ごてやノコギリ鎌を使い、点穴を開けたり、風の草刈りをしたり、本当に小さな積み重ねでも自然はプラスの方向にシフトしていきます。
誰もが矢野さんのようにはなれませんが、僕たち造園の世界からのアプローチもあれば、自分の庭先に木や花を植えたり、活動をサポートしたりと、その人なりのやり方や役割があるでしょう。
大地の再生は空気と水の循環が基軸であり、我々の足元にあること、ベースにあることなので、多くの方がこの考え方を知った時に世界中を悩ませる環境問題は大きく前進することでしょう。
そんなことに気付き、行動する人を増やすこと、そしてそれを日常化していくことが我々の切なる願いであります。
大地の再生 ドキュメンタリー映画 「杜人」。
矢野さんとしては、活動が加速していく事、ブームになることはあまり好んではいませんが、
上映館も草の根のようにじわじわと増えているようで、少しずつでも多くの方に見ていただきたい映画であります。
埼玉の本庄・児玉地区から応援に駆けつけてくれた、本氣プロジェクトの方と前田監督との記念撮影。
大きな花束もいただきました!
僕としても大地の再生活動を試行錯誤しながらも今までやってきたことが形になり、本当に嬉しく思いますし、矛盾なく日々大地に向き合い、仕事をさせていただくことに日々喜びを感じます。
横浜シネマ ジャック&ベティは23日は満員御礼で24日もほぼ満席でした。
23日は矢野智徳氏が舞台挨拶に登壇し、とても興味深いお話しをされました。
書き起こしをしてくれた方がいらっしゃいましたので、最後にシェアしたいと思います。
ーー「映画を撮らせて」と言われた時どう思いましたか?
あまり私は人前に出ることはありませんで、現場ばかり動き回っていました。
小さい時から人前に出るのは苦手なほうで、苦手を改善しようと思って生徒会をやったことはありますが……意を決して。
そうやっても、もともとあまり表は好きな方ではないので、前田さんに言われた時、気は乗らないけど、前田さんの熱意、想いを断る理由はない気はして、「大変でしょうけど、よかったらお願いします」と。
どこまでやってもらえるかわからなかったけど、前田さんも僕も同じ方向を向いているのはわかっていたので。成り行きだなと。
一緒に時間を刻んでいく、伝えていくというのは必要だと思ってら、「ぜひお願いします」と言いました。
ーー植物の声が聞こえているのですか?
正直言って聞こえはしません。
聞こえるという方にお会いしたことはあります。けど、僕自身は聞こえない。
ただ、映像の福聚寺の桜や仙台の桜を治療してるとき、声は聞こえないけど、嫌われてはいないだろうなと。
同じ動物として、苦しんでいる時、痛むようなことをやっているのではなく、息ができやすいことをやってくれているのが、生き物としてわかると思います。
桜の花が咲いている時、冬の雪の中で枝が体に触っていると「誰が触ってるのかな?」と振り向くと、動物じゃなく植物の枝が体を撫でていたことがありました。
そういう時、「あぁ、喜んでるかも。よくやってるって言ってくれている」と、そういう気持ちになれる。お互い様だなというか。
夜中まで大変な作業をそうやってやってると、同じ生き物同士、わかり合える、通ずるものはあるな、という実感はあります。
ーー「仕事ではできない」と言われていましたが、矢野さんにとって造園業とは?
生業というのは、数字的な突き合わせじゃなくて、生きる業、生かす業として、生き物同士の業とも言えます。
生業を踏まえていくということは、損得ではなくて、生き物同士、いのちの世界、いのちを通して関わるものだと思います。
造園を通して生き物の世界と関わると、生業とはいい言葉だなと。
おそらく昔の人がそういう方向の言葉として編み出したのだと。責任もある、損得だけじゃない。
「業ってこういう世界だな」と現場で体感させられます。
生業は、いい言葉、いい世界、それを背負えた時、やれてるなという実感がある。そういう世界だと思います。
ー次の世代へのバトンタッチということで、これからやってみたいことはありますか?
映画にもあったように、中学1年の頃、同級生と話していました。
「人と自然をつなぐ仕事」をしたい、と。
この歳になっても、ずっとそのまま来ちゃったなっていう思いがあるので、ずっとそのまま走っていくんだなと(笑)。
やれる範囲で自分の山登りができればと思っています。
以上、是非とも無理をしてでも見に行ってください!
↓取材記事も載せておきます。