暑中お見舞い申し上げます。
毎日暑い日が続きますが、みなさんいかがお過ごしでしょうか?
今年は観測史上最速の梅雨明けとなり、7月を前にして35度以上の暑い日が連発しました。
日本でも有数の酷暑地域となった熊谷や群馬県の伊勢崎、館林市などは40度を超える事も何だかそんなに珍しくなくなってきました。
こう暑くなると、テレビのニュースではしきりに節電を訴え、行政からの防災無線からは「外出を控えてください!」と放送していますが、僕たち造園業をはじめ、どんなに暑かろうが雨が降ろうが毎日屋外で働いている人はたくさんいます(笑)
一般の方は外出しないで、エアコンの効いた部屋にいるほうが確かに良いと思いますが、電気が止まったらどうするのでしょうか・・・
さて、今年僕は赤外線サーモグラフィという機器を手に入れました。
物体から放射される赤外線を分析し、画像として色分けしたものが、サーモグラフィです。
温度の違いを数字だけでなく、色分けして可視化できるので、前から欲しいなぁと思っていました。
まずは自分の手を測ってみます。
手が真っ赤です!
別にやけどをしたわけではありませんが・・・
色々と数字が出ていますが、
この画像の見方を説明します。
左上の35.6度という数字は、矢印のポイントの温度が表示され、
右側の温度はこの画像の中での温度の高いところと低いところが色分けされます。
事務所の横の居間にいた母を撮ってみました。
顔が赤くなり、猿?のようですが母親です(笑)
人の体温は36度くらいでしょうから、この部屋の中では体温が一番高く赤くなり、左の青い部分は仏壇があるところで、温度は低く青く表示されました。
次に、25度くらいの涼しい日に、弊社のモデルガーデンを計測してみます。
一面真っ青な色の中に、真っ赤な色が!
樹木の陰に隠れる弊社スタッフです。
気温より体温の方が高い時は、このように木の陰に隠れていてもサーモグラフィには赤く表示されます。
「隠れていても見えてるよ!」
すごい性能です。
お遊びはこのくらいにして、
これで真夏の外の温度を測ったらどうなるのでしょうか?
観測史上最速で梅雨明けした2日後の6月29日(水)のお昼前、
熊谷市内を移動中にいくつかの場所でサーモグラフィで温度を観測してみました。
車を走らせると、熊谷でも数少ない枝葉の茂るケヤキの街路樹の通りがありました。
熊谷の肥塚交差点からラグビー場のあるスポーツ公園への通り。
ちなみにこの日の熊谷の最高気温は39.1度で、写真はお昼ごろに撮ったものです。
まずはアツアツのアスファルト舗装の歩道から観測。
予想通り、真っ赤っか!
アスファルト舗装のポイント部分は59.9度、場所によっては62.3度を計測!
立っていられないほどの暑さです・・・
次にケヤキの街路樹の中へ入ってみると、
体感的にもひんやりと、涼しい!一気に温度が下がります。
一番温度の高いところが65度を記録していますが、おそらく右の建物の屋根が暑かったようです。
ケヤキの下は青い色が多くて、木陰の涼しさが見た目にもわかります。
先ほどは真っ赤っかだったアスファルト舗装の歩道の木陰側も撮ってみました。
今度は真っ青!
ポイント部分は33.4度と30度近くも低いことが判明!
さすがケヤキの街路樹です。
この通りを北に上がると、熊谷のラグビー場のあるスポーツ文化公園の入口があります。
ここは公園内ですが、熊谷の中で一番街路樹の美しいと思われるケヤキ並木があります。
車を停めて涼んでいる方も多いケヤキ並木ですが、
こちらも木陰の涼しさがよくわかります。
日の当たる車道部分は赤く表示され60度近くありますが、ケヤキの木陰は30度くらいで、本当に涼しい。ちなみに一番温度が低いところはケヤキの木の幹のようで、濃い青色で表示されました。
それでは、別の日に今度は本庄市で計測しました。
本庄市北口にある銀座通り商店街。
実は昨年まで寄居町にあったGOOD PARKは、今年の春先に本庄市銀座通りの旧ポケットパークに一部を移設しました。(写真は2022年春の移設時)
あれから3か月が経過しました。
夏になり、地面の草も伸び、一面が草で覆われてきました。
7月22日、この日の熊谷市の最高気温は32.3度ほどでした。
車道部分は予想通り赤くなりましたが、GOOD PARK敷地内の草地部分は黄緑色に、そして木陰部分は青色で表示されました。
道路とGOOD PARKでは別世界です。
地面を計測してみると、
草があるところが温度が低く、土(山砂)部分は温度が高く表示されます。
今度は別方向から計測。
草に覆われる部分は温度が低い!そして木陰部分はさらに温度が低い!
雑草たちが、地面の温度をかなり下げてくれていることがわかります!
猛暑の日に、こんな畑を計測してみると・・
草のあるところとないところでくっきりと色分けされました。
しかもかなりの温度差があります!
こんな暑い日はキンキンに冷えた麦茶が一番!ということで、
またもや弊社スタッフの登場。
キンキンの麦茶は5.4度を表示!
おなかを壊さないで欲しいところです・・・
最近話題の空調服も青い色が付きました。
ということで、今回の計測で分かったことは、アスファルト舗装は酷暑期には60度近くになり、触れないほど熱くなるのですが、大きな木の下では温度が上がりません。
つまり、アスファルト舗装がヒートアイランドの原因というよりも、「木陰がない」ということが街を暑くしている原因だということです。
そして、真夏のヒートアイランド対策としてとても有効なのが、雑草や下草を生かすということです。
草を排除して土をむき出しにすると、気温も上がり、雨が降ると泥水が出ます。
泥水は団粒化した肥沃な土壌の空隙を塞ぎ、土の中の呼吸を停滞させます。また、泥水が流れ込んだ川は同様に川底の空隙を目詰まりさせ、生き物の呼吸にも悪い影響を与えます。
雑草などで地面を覆い、草地にしているだけでも温度は下がり、雨水を地中に浸透させます。
また特に夏場の朝は、冷えたビールのジョッキに水滴が付くように、草は結露(朝露)が発生し
地際の気温を冷やします。
草の管理は大変!と、この時期の雑草対策は皆さん苦労されている方が多いですが、これだけ温度を下げてくれて、しかも樹木と同じように水を吸ってくれる存在であれば、活用しない手はありません!
それと、暑さ対策としてひとつ付け加えるとしたら、建物の影や日よけのシェードなどでも日陰はできますが、日陰と木陰では質が違うということ。
今回計測したようなケヤキの街路樹などの高木樹木は1日に数百リットルもの水を地中から吸い上げ、葉から蒸散という形で放出され空気を冷やします。
だから、高木樹木は天然のミストであり、大きな木の下に入るとひんやりと涼しさを感じるのはそのためです。
しかも、雨が降れば大地に水を無尽蔵に浸透させ、猛暑時には蓄えた水を地中から吸い上げ、大気を冷やす。
植物というのは、人にとっても本当に尊い働きをしてくれています。
近頃の天候は、極端な猛暑が続いたり、ゲリラ豪雨があったりと、丁度いい具合の天候が少なくなりました。
大雨が降ると簡単に街中に水があふれてしまうのも、単純に森林や植栽地、草地など緑地が少なくなってしまったことは大きな原因と言えるでしょう。
樹木や草は管理が大変だから・・・
と、街中や住まいから緑を排除していく事は、さらに人が住みにくい環境を加速させていきます。
真夏の日中に暑くて街を歩けないのは、異常気象だけが原因でなく、我々自身が街を暑くしているということを認識する必要があります。
これを打破するためには、植物を生かす以外に方法はありません!
草の管理の仕方については、「風の草刈り」を参考に、上手に草と付き合いましょう!
矢野智徳 大地の再生の手法②風の草刈り - Bing video
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