大地の再生ドキュメンタリー映画「杜人」公開! | 中央園芸のブログ

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大地の再生のドキュメンタリー映画、「杜人」、今月15日のアップリンク吉祥寺を皮切りに、現在公開中です。

https://lingkaranfilms.com

 

数年前から大地の再生の現場にカメラを持ち込み、主宰の矢野智徳さんを追いかける前田せつ子さんを、何度もお見かけしてきました。

 

「大地の再生」って何?

風の草刈りって?

風の剪定?

 

僕も普段の造園の仕事と同時に行っている大地の再生の活動を、多くの方に知ってもらう良い機会だということで、「大地の再生の映画ができる!」ということは我々にとっての大きな希望でした。

 

監督の前田さんとは、2014年頃の国立のサクラ通りの伐採問題の時にお会いして以来のお付き合いで、大地の再生のメンバーにも何度も試写会を行っていただきながら、念願の映画がようやく完成!

東京を皮切りに、大阪、京都にて公開、そしてようやく24日に僕も横浜シネマ ジャック&ベティにて初めて観覧して来ました。

 

しかもこの日は監督の前田せつ子さんとともに、舞台挨拶(アフタートーク)にも参加することになり、そのまま人生初の「パンフレットにサインをする」という何とも恥ずかしくも貴重な体験をさせていただきました・・・

 

↑ただ名前を書いただけのサイン(笑)

 

感想はというと、とてもいい映画でした!

 

自分も現場のスタッフとして関わってきたということもありますが、それだけではない、心に残る本当に感動する映画でした!!

 

詳しい内容は割愛しますが、矢野智徳さんや他のスタッフが災害現場を含む各現場での作業風景や自然が再生されていく様子が淡々と描かれています。

 

今や最も人が向き合わないといけないであろう環境問題に対するメッセージがこの映画の中にもたくさん込められていますが、それは劇中に大きなクライマックスシーンがあるわけではなく、映画は淡々と始まり、淡々と終わります。

それは、この大地の再生活動が、日々の積み重ねや日常化することが最も大事であり、そして今も問題は続いているのだ、ということもこの映画のメッセージとして読み取れます。    

 

 

 

 

 

 

 

 

2018年の7月に起きた西日本豪雨災害では、僕も広島県呉市の災害の現場に3tダンプで駆けつけました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

映画の中にも登場しますが、倒壊した家屋に住んでいたおばあちゃんの話では、列植していたカイズカイブキが土砂を食い止め家屋を守ってくれた、木が守ってくれた!

と話され、「樹木は家や人を守る」ということをこの時僕は確信しました。

 

 

 

 

 

 

また、土砂崩れにより滞っていた水脈を繋ぎ直すことで、水切れしていた田んぼを救い、地域の方にとても喜んでいただいたこともありました。

 

 

 

 

自分のやる仕事や行動が、世のため人のためになればとは誰もが思うところではありますが、大地の再生の現場では何度もそんな経験をさせていただきました。

 

 

でもそれよりも我々が泥にまみれ穴を掘ったり、大汗をかきながら草を刈り風を通したりという改善作業によって、弱っていた木々の樹勢が回復したり、大地が息を吹き返す場面に立ち会った時、人の社会を超越した何とも言えない清々しや喜びを感じることがあります。

 

 

この感覚は、23日の横浜での矢野さんの舞台挨拶の言葉にもありましたが(ブログの最後に記述)、

人が動植物と共に地球に生きる同志として、自然の摂理の中での役割を全うするような・・・

 

セミやイノシシと同じように、大地や生き物が循環する仕組みの中で無心で大地に向き合う時、そこに利害関係や効率性などは存在せず、お腹の底から湧き出るような、お金には換えられない充実感を感じる、そんな感覚だと思います。

 

 

 

 

 

 

 

僕は造園の仕事をしていますが、日々行う庭づくりの中では、普通に穴を掘って木を植えるだけならすぐ終わります。

でも、いちいち敷地の外周に水脈を掘り、植え穴の中には炭や有機物を入れたりとか、

根鉢の下に通気層を作るとか、

根杭の丸太をしっかりと焼いて使用したりとか、

 

現場はいつも手間のかかる事ばかりで・・・

 

ここに会社を経営するという現実的な事との共存は、とても難しく頭を悩ませることが多いというのが正直なところです。

 

でも樹木が活力を無くす姿を見たくはないし、毎年春に生き生きとした新緑を見るためには、現代の劣化した環境の中ではその手間を惜しんでいては実現できないと思っています。

 

 

 

僕も大地の再生の視点を初めて知った時は、大きな衝撃でした。

 

↑僕が初めて体験した「風の草刈り」の現場。山梨県大月市。

周りの山並みと同じように草を刈ることで、穏やかな風が流れる・・・

地面スレスレで草を刈り続けてきた僕にとっては本当に衝撃的な風景でした!

 

 

本当に今までやってきた草刈りや木の植え方なども全然違うし、落ち葉や剪定枝はただのゴミとしか考えられませんでした。

でも自然界にゴミなどは存在せず、全ては循環しているという仕組みが腑に落ちてからは、庭の施工も変化しました。

 

「そこにあるものを使う」とか、「機能と美」という造園業界の言葉もありますが、大地の再生はやればやるほど本来の伝統的な造園や土木、建築など、かつての日本人が行ってきた優れた技術や考え方から学ぶことが本当に多く、その先にはこれからの街づくりや災害対策としてのキーポイントとなる、「グリーンインフラ」と大きく繋がるものだと確信しています。

 

 

 

映画の中でも、コンクリートの構造物が土の中の空気と水の循環を停滞させている、というお話がでてきますが、コンクリートが悪いというわけではなく、一部に穴を開けたり、形状や使い方を変えるだけで、それは素晴らしい素材となり得ます。

 

↓ コンクリート間知ブロックを解体し、石垣として再利用した施工例。神奈川県秦野市にて。

 

 

 

 

 

 

 

この映画を通して、普段は自然とかけ離れた生活をされている方も、流れる水の音とか、草の匂い、風の心地良さなど、何か子供の頃に感じていた感覚を思い出すきっかけになったり、自然災害のプロセスや改善方法、雑草の大切さも多くの方に知って欲しいと思います。

 

また、この活動の特徴は子供や女性でもできること。

移植ごてやノコギリ鎌を使い、点穴を開けたり、風の草刈りをしたり、本当に小さな積み重ねでも自然はプラスの方向にシフトしていきます。

 

 

 

 

 

誰もが矢野さんのようにはなれませんが、僕たち造園の世界からのアプローチもあれば、自分の庭先に木や花を植えたり、活動をサポートしたりと、その人なりのやり方や役割があるでしょう。

大地の再生は空気と水の循環が基軸であり、我々の足元にあること、ベースにあることなので、多くの方がこの考え方を知った時に世界中を悩ませる環境問題は大きく前進することでしょう。

 

そんなことに気付き、行動する人を増やすこと、そしてそれを日常化していくことが我々の切なる願いであります。

 

 

 

 

 

大地の再生 ドキュメンタリー映画 「杜人」。

矢野さんとしては、活動が加速していく事、ブームになることはあまり好んではいませんが、

上映館も草の根のようにじわじわと増えているようで、少しずつでも多くの方に見ていただきたい映画であります。

 

 

埼玉の本庄・児玉地区から応援に駆けつけてくれた、本氣プロジェクトの方と前田監督との記念撮影。

大きな花束もいただきました!

僕としても大地の再生活動を試行錯誤しながらも今までやってきたことが形になり、本当に嬉しく思いますし、矛盾なく日々大地に向き合い、仕事をさせていただくことに日々喜びを感じます。

 

 

 

 

横浜シネマ ジャック&ベティは23日は満員御礼で24日もほぼ満席でした。

23日は矢野智徳氏が舞台挨拶に登壇し、とても興味深いお話しをされました。

書き起こしをしてくれた方がいらっしゃいましたので、最後にシェアしたいと思います。

 

 

 

 

ーー「映画を撮らせて」と言われた時どう思いましたか?

あまり私は人前に出ることはありませんで、現場ばかり動き回っていました。

小さい時から人前に出るのは苦手なほうで、苦手を改善しようと思って生徒会をやったことはありますが……意を決して。

そうやっても、もともとあまり表は好きな方ではないので、前田さんに言われた時、気は乗らないけど、前田さんの熱意、想いを断る理由はない気はして、「大変でしょうけど、よかったらお願いします」と。

どこまでやってもらえるかわからなかったけど、前田さんも僕も同じ方向を向いているのはわかっていたので。成り行きだなと。

一緒に時間を刻んでいく、伝えていくというのは必要だと思ってら、「ぜひお願いします」と言いました。

 

ーー植物の声が聞こえているのですか?

正直言って聞こえはしません。

聞こえるという方にお会いしたことはあります。けど、僕自身は聞こえない。

ただ、映像の福聚寺の桜や仙台の桜を治療してるとき、声は聞こえないけど、嫌われてはいないだろうなと。

同じ動物として、苦しんでいる時、痛むようなことをやっているのではなく、息ができやすいことをやってくれているのが、生き物としてわかると思います。

桜の花が咲いている時、冬の雪の中で枝が体に触っていると「誰が触ってるのかな?」と振り向くと、動物じゃなく植物の枝が体を撫でていたことがありました。

そういう時、「あぁ、喜んでるかも。よくやってるって言ってくれている」と、そういう気持ちになれる。お互い様だなというか。

夜中まで大変な作業をそうやってやってると、同じ生き物同士、わかり合える、通ずるものはあるな、という実感はあります。

 

ーー「仕事ではできない」と言われていましたが、矢野さんにとって造園業とは?

生業というのは、数字的な突き合わせじゃなくて、生きる業、生かす業として、生き物同士の業とも言えます。

生業を踏まえていくということは、損得ではなくて、生き物同士、いのちの世界、いのちを通して関わるものだと思います。

造園を通して生き物の世界と関わると、生業とはいい言葉だなと。

おそらく昔の人がそういう方向の言葉として編み出したのだと。責任もある、損得だけじゃない。

「業ってこういう世界だな」と現場で体感させられます。

生業は、いい言葉、いい世界、それを背負えた時、やれてるなという実感がある。そういう世界だと思います。

 

ー次の世代へのバトンタッチということで、これからやってみたいことはありますか?

映画にもあったように、中学1年の頃、同級生と話していました。

「人と自然をつなぐ仕事」をしたい、と。

この歳になっても、ずっとそのまま来ちゃったなっていう思いがあるので、ずっとそのまま走っていくんだなと(笑)。

やれる範囲で自分の山登りができればと思っています。

 

 

 

以上、是非とも無理をしてでも見に行ってください!
 

↓取材記事も載せておきます。

風のように草を刈る…映画『杜人(もりびと) 環境再生医 矢野智徳の挑戦』 公開記念トークイベント | イベント・フェス 【BE-PAL】キャンプ、アウトドア、自然派生活の情報源ビーパル (bepal.net)