【妄想Zone】「Mission」 #2 | ☆つっこのオモチャ箱☆

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少し間が空きましたが、『Mission #1』の続きです♪

(「#1」はコチラ⇒ 『Mission #1』)
 


(設定)

・レイナ(REINA)は、人気の女性歌手。

・ある日、怪文書が届いたのでボディーガードがつくことになった。

・ボディーガードの名前は『ケイ(K)』。
(名前のアルファベットを通称にしている)

・今は、コンサートツアーの名古屋公演を終え、打ち上げ会場に向かう車中。



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【Mission】#2

 


打ち解けてみると、ケイはとても接しやすい人だった。

普段は 影のように気配を消しているけれど、移動中や空き時間などには、私たちの世間話に付き合うこともある。
 

 

今も移動車の中で、マネージャーのシマさんと90年代の音楽について会話が弾んでいる。

会話に入れない私は、少し面白くない…。


「ケイさん、若いのに昔のことに詳しいのね~。なんだか嬉しくなっちゃう♪」

いつもはクールなシマさんが、高い声ではしゃいでいるように見えるのは、たぶん私の気のせいじゃないはず…。


「ケイさんを見てたら思い出したわ。昔『ボディーガード』って映画があったのよ。…誰だったかしら?ほら、あの主題歌が大ヒットしたヒロイン役の歌手…」

『歌は分かるのに名前が出てこないのよね…』と言って、シマさんは調子はずれな歌を、大きな声で歌い出した。

 


♪エンダ~~~♪


私は あやうく、ペットボトルのお茶を吹き出しそうになった。


「ホイットニー・ヒューストンですね。」

ケイは、シマさんの歌に動ずることなくサラッと答えた。


「そうそうっ!あ~、スッキリしたわ♪ケイさん、ありがとう。」

シマさんは、上機嫌でケイにお礼を言った。

 

「『ボディーガードが付いてる歌姫』ってことは、私と同じね。」

私が言うと、『ばーか、向こうとオマエじゃ格が違うんだよ』と、ケイは私のオデコを人差し指で軽く突いた。

(なんで私のことは子供扱いするのよ。ケイのバカ…)


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「ありがとう。もう大丈夫だから。ケイは打ち上げに戻って。…ね?」

私は、ケイに向かって小さくバイバイと手を振った。
心の中で『頼むから、早く行って』…と、願いながら。


打ち上げが始まって1時間ほど経った頃、私は『頭が痛いからホテルに戻って休みたい』とシマさんに耳打ちした。

関係者への挨拶は済んでいたので、『仕方ないわね…』と言いながらもシマさんは許可してくれた。
 

 

当然のことながら、宿泊先のホテルまではケイが同行してきた。


「頭痛のわりには顔色がいいな。」

ケイは、訝しげに私の顔を見つめながら言った。


「…そう?」

ギクッとしながらも 私は冷静を装い、カードキーで部屋のドアを開けた。

「どうもありがとう。…じゃあ、おやすみなさい。」

ケイの返事を待たず、私は素早く部屋に入ると静かにドアを閉めた。
 

 

~~~~~~~~~~~~~
 

 

タクシーの後部座席の窓ガラスには、髪を巻いた「ゆるふわ」な雰囲気の女の子が映っている。

この女の子が、勝ち気な歌姫の『REINA』だと気づく人間は、まず いないだろう。

きっと、ただ1人を除いては…。

その「ただ1人」の人に会うため、私はこうして仮病を使って抜け出してきた。


ケイをやや強引に閉め出した後、もはや変装に近いメイクを施し、私はホテルの部屋を出た。

注意深く廊下を見回したけれど、私を怪しんでいたケイの姿はなかった。

ホテルの入り口に連なっていた先頭のタクシーに乗り込み、私は今、『彼』のもとに向かっている。


ここ 名古屋は、私が生まれ育った場所。

そして『彼』は、高校時代のクラスメイト。
付き合い始めたのは 私がデビューする前だから、彼とは もう何年になるだろう?
 

会えるのは久しぶりなので、思わず鼻歌が出そうになる。

私は、浮き立つ心を抑えるのに必死だった。
 

 

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「遅いなぁ…」

昔よくデートをした公園に彼を呼び出したのに、彼の姿はまだない。

(LINEは『既読』になってるから、気づいてるはずなんだけど…)


待ち始めてから30分ほど経った頃、ようやく彼が現れた。

「遅~い!何してたの?私、あんまり時間ないのに…」

『でも、久しぶりに会えて嬉しい♪』…そう続けようとしたところで、彼の言葉にそれを遮られた。


「いい加減にしてくれよ。」

心底うんざりしたようなその言い方に、冗談の響きはない。


「…なに?怒ってるの?」


「いきなり人を呼び出しといて文句言うとか…。お前、何様なんだよ。」

「……」


「俺にだって、予定ってもんがあるんだからさ。忙しいのは自分だけとか思うの、やめてくれる?」

「……」

ヒドイ…と思いながらも、私は言葉が返せない。
言い方はキツいけど、彼の言ってることは、もっともだから…。


「お前のそういうとこ、もう ついていけないよ…」


(『別れ話』だ…)

彼は、私と別れようとしてる。
それが分かったから、試しに訊いてみた。
 

 

「他に好きな子でもできたの?」


「えっ…?」

図星だったようで、彼は言葉に詰まり、視線を泳がせた。


「そっか…。なら、ちょうどよかった。」

「…?」

私の言葉に、彼は不思議そうな顔をした。


「実はね、私も『終わりにしよう』って言いにきたの。やっぱり、会って言うのが最低限の礼儀かな?って思ったから。」

「…なんだ、そうだったのか。」

どこかホッとしたような彼の笑顔は、さっきの冷たい言葉よりも私の胸に深く刺さった。


「今までありがとう。…じゃあ、元気でね!」

私は、こみ上げてきそうな涙をこらえ、笑ってみせた。

 


みっともないところは見せられない。
だって私は『REINA』だから!

私は 彼に背を向けると、背筋を伸ばして歩き出した。


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(なんでだろう…?)

悲しいはずなのに涙が出てこない。

彼を失ったことが悲しいのか、それとも『素の自分』でいられる場所を失ったことが悲しいのか。

それすらも分からない私は、もしかしたら彼と同様、想いは冷めていたのかもしれない。


「きゃっ…」

考え事をしながら歩いていたせいか、足がもつれて転んだ。


「だっさ…」

早く立ち上がりたいのに、足に力が入らない。

惨めで、痛くて…。
今度こそ本当に泣きそうだった。


すると、目の前にスッと手が差し出された。
見上げると、そこに立っていたのはケイだった。


「なんで…?ホテルから尾けてきたの?」

ケイは それには答えず、私の手首を掴んで引っ張ると、私を立ち上がらせた。


「…バカだな」


ケイが、ポツリと呟いた。


「言わないでよ。自分でも分かってるから…」

私は、ケイの手を振りほどいた。


「バカなのは、あの男だ。こんな いい女と別れるなんて…」

「なにそれ?慰めるためのお世辞?」

らしくないケイの言葉に 私が眉をひそめると、ケイは首を横に振った。
 

 


「オマエは、いい女だよ。」



それは、今まで私に見せたことのない優しい笑顔だった。


「ずるい…、そんなこと言うなんて。」

私はケイの胸を叩いた。


「責任とって、ここで泣かせてよね。」

そのまま、私はケイの胸に頬を埋めた。


ケイが優しく私の背中をポンポンとしてくれるのと同時に、涙が一気に溢れてきた。

不思議と、ケイの前では素直に泣ける自分がいた。


「あっ…」

突然、ケイが私の背中をきつく抱き寄せた。


「俺が忘れさせてやるよ。」

ケイが、私の耳元で言った。


(どういうこと?)

その問いは、なぜか口にすることが出来なかった。


私はただ、『この胸の高鳴りをケイに聞かれませんように』…と、心の中で祈っていた。

 

 

 

(⇒ 「Mission」 #3 へ続く)

 

 

 

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今回は以上です。

 

レイナとケイの関係が、少し動き出しました♡

 

 

無意識のうちに、レイナにとってケイが気になる存在になりつつあることを序盤で匂わせてみたつもりです。

 

レイナが「素の自分」でいられる場所。

それも、いつしか「ケイといる時」になっていたようです。

 

 

個人的にお気に入りのキャラ、「シマ」さんも書けて満足です(笑)。

 

 

続きの「#3」は年を越しますが、よかったらまたお付き合いください♡