素人恋愛小説RISK -5ページ目

第7話

「ところで、『尾藤さん』なんていってるけど、俺そんな歳食ってみえる?」

慎也の唐突の問いにリコは戸惑った。

「そんな・・・あの・・・おいくつなんですか?」


「俺は11月まで25だけど?」

リコの顔がパット明るくなった。


「じゃあ、同い年じゃないですか!」

「え・・・?じゃあなおさら『さん』付けは無しだな・・」慎也は微笑んで見せた。


「アンタ・・・そうだ、名前、聞いてなかったっけ…」慎也は少し照れながら言った。

「本城梨子。本屋の本にお城で本城、梨に子どもの子でリコです」

「本城さん・・・俺はしっぽの尾に藤の花の藤、慎むって言う字の慎に『や』はえ・・・と・・・ひらがなの『や』見たいな漢字!」


慎也の言葉にリコはくすっと笑った。


「それ、『なり(也)』って字じゃない?」


「あ・・そうか」二人はおかしくてくすくす笑った。

和樹とはまた違う魅力を、リコは慎也に感じた。



バイクショップを出ようと、自動車のエンジンをかけたら上手くエンジンがかからない。


「あれ?」リコが戸惑っていると慎也が近づいてきた。


「どうした?」

「エンジン、上手くかからなくって・・・」

「ちょっとかしてみ」

慎也はエンジンキーを何度か回して試みたが上手く行かない。

慎也はボンネットを開けて、中を調べた。

「直せるの?」

「バイクも車も一通りいじった事あるからな」

そう言って慎也は内部を調べた。

リコは汗を流して真剣に直す彼の姿に男の魅力を感じた。

Tシャツが汗で貼りつき、たくましい慎也の体つきがくっきりと浮かび上がる。

引き締まった身体は、スーツなどではごまかしの効かない、男の身体的魅力であった。



「この車種、中古だろ?ちょっとした接触不良があったから、直しておいた。それと、冷却水、殆ど入ってなかったぞ。夏にこれじゃオーバーヒートするからな」


「ごめん、ありがとう。あの・・・お代は?」

「サービスにしておくよ。どうせ車のローンで金ねえんじゃネエ?」慎也のイタズラっぽい笑みにリコは頷かざるをえなかった。



第6話

慎也の存在が気になったリコは、助けてくれたお礼の為にバイクショップを訪れることにした。

2年前に買った中古の軽自動車に乗り、途中横浜駅でお礼の為のフェイスタオルを買った。


何をお礼しようか、男へのプレゼントというのは結構選択に困るのだが、

慎也の爽やかなイメージとバイクショップ勤務ということからフェイスタオルが一番よさそうだと思ったのである。


リコから見た彼のイメージに合いそうな、ブルーのブランド物、デザインはシンプルなものにした。


買い物を済ませて、リコは平沼橋に向かった。

平沼橋といえば、横浜駅の西方面、相模鉄道、通称相鉄の平沼橋の駅の辺りを探した。


あの辺でバイクショップと言えば何処だろうか?バイクショップというと、大通りに面しているというイメージだが。


・・・と、そんな時、車がキリキリと異常な音を立てた。

(やだ、どうしたんだろう!?)一気に不安が突き上げた。


そんな時、平沼橋駅近くに一軒のバイクショップを発見した。看板にHONDAの文字が見えた。


(もしかして・・・)期待と不安を胸に、速度を落として店の中を覗いて見た。


みると、慎也らしき若い男がバイクを磨いている姿が目に入った。


(ここかもしれない・・・!)


リコは車から降り、「すみません」と若い男に声をかけた。


顔を上げた、Tシャツにつなぎの下だけはき、キャップを逆さにかぶった男は、慎也だった。


「このあいだの・・・」

慎也の顔を見てリコはホッとした。


「先日は助けてくれて有難うございました。これ・・・」そう言ってリコはプレゼント用にキレイにラッピングされた、お礼のタオルを慎也に差し出した。


「わざわざ・・・サンキュ」彼はにこっと笑って受け取った。


リコは店内を見渡した。


はっきり言ってバイクの事はなにも分からない。パーツがところどころに陳列されていても


何がなんだかわからなかった。


分からないけれど、なんだか面白そうに思えた。


「バイク、好きなんですか?」

リコの問いに慎也はちょっと詰まった。


「うん、まあね・・・」


「へえ・・・この管みたいな部品って、なんですか?」

慎也はリコの問いにぷっと笑った。


「アンタ、バイクなんかに興味あんの?」おかしいそうに慎也は聞いた。


「へ・・へんですか?」笑われてリコは少し戸惑った。

「いや、そうじゃねえけど。意外だって思ってさ・・・」慎也はおかしそうに笑った。


リコはちょっぴり恥ずかしくて真っ赤になった。

「こいつはバイクにつけるマフラーってやつ。ヨシムラってメーカーで人気の奴だよ」

慎也は説明した。


「尾藤さん・・・のお気に入りのバイクってあるんですか?」

「俺?」


Tシャツの半袖を肩までたくし上げ、たくましい上腕は日に焼けている。

「俺のお気に入りはこれかな?高校ん時乗ってたHONDACB。これは中古だけどさ」


赤いオイルタンクの、スポーティな美しいシルエットのバイクである。慎也には良く似合いそうだった。


「へえー・・・」リコは感心したようにHONDACBに見入った。

そんなリコを可愛いと思いながら慎也は見つめた。



第5話

翌朝、リコのもとに和樹から早速電話が来た。

「もしもし、俺、和樹だけど」

「新村くん!」

「夕べは無事に帰れた?」

「う・・・うん・・・」リコは慎也に助けてもらって、送ってもらった事は言えなかった。

「そうか・・・あの後やっぱり無理にでも送っていけば良かったって後悔してたから・・・」

「うん、何にもなかったよ。心配してくれて有難う」

和樹には慎也の事は一切話さず電話を切った。


(心配してくれたんだ、でも・・・)

リコの思いは複雑だった。


和樹は仕事も恐らく優秀で、人柄も悪くない。でも・・・




第4話

「可愛いジャン、ちょっとつきあわねえ?」

「すいません、急いでますから・・・」

「いいじゃん、ちょっとだけ」

「スミマセン・・・!」リコは足を速めた。

「何だよ?可愛い顔して、冷たくない?」

男はリコの肩を掴んできた。


「やめてください!」

「なんだよ、ちょっとだけってんじゃん!」男はだんだん荒げてきた。

「やめて!!」


(やだ、誰か助けて!!)リコは心の中で叫んだ。


「やめてって言ってんだろ!」







突然、誰かが、酔っ払い男の腕を掴んだ。


万事休すと思っていたリコは呆気にとられた。


「なんだてめえ?やる気か?オイ!!」

酔っ払い男は荒げて自分の腕を掴んだ相手の方に向かっていった。

すると腕を掴んだ男は、はむかう酔っ払いの胸倉をぐいっと掴んだ。


「やる気なら相手になるぜ?」

すごんだ男に酔っ払いはひるみ、「チキショウ!」とぶつぶつ言いながら去っていった。



リコは呆然と立ち尽くした。



「怪我は?」

「大丈夫です・・・」

男の問いにリコは答えた。

「女一人でこんなトコ歩がねえ方がいいぜ。駅行くの?」

男の声は低く、ハスキーだった。

「はい・・・」

「途中まで送るよ」


結局、会ったばかりのこの男に、駅まで送ってもらう事になったリコだった。






道中、男は無言だった。




最初はおじさんかと思ったが、明かりのところで見ると、意外に若い男だった。年は20代か行って30代だろうか・・・。


少しシャギーの入ったショートヘア。整った顔のラインに目は切れ長。

背丈は170センチは超えてそうである。シンプルなTシャツ姿の下から、引き締まった逆三角形の体格がはっきり分かる。


下は腰で穿くタイプのダメージジーンズ・・・。

自分達とはいる世界の違う男だとリコは思った。


しかし・・・何故かとても気になった。


いったい何処の、誰なのか・・・?








駅には何事もなく、無事に着いた。




こんなことなら、最初から和樹に送ってもらえば良かったのかもしれないと、今更ながら思うリコだった。


「じゃ、気をつけろよ」乗り口の改札まで来ると、男は背中を向けて去っていこうとした。


「あの・・・!」


リコは去っていこうとする男に、思い切って背後から声をかけた。


男は歩みを止めた。


「名前と住んでいる所だけも、教えてくれませんか?」





「・・・」男は、リコの方に向き直った。


「名前は尾藤慎也。平沼橋のバイクショップにいるよ」


爽やかに笑顔を浮かべ、慎也は足早に去っていった。







(ビトウ シンヤ・・・)


リコの心は、何故かしら熱くなっていった。

第3話

合コンは思ったより盛り上がり、終わった時は10時を回ってしまった。

 サエと先輩、他の男たちは、このあと2次会にいくというが、リコは断った。

 「だいぶ遅くなっちゃったね。駅まで送るよ」と和樹は申し出てくれた。

 きちんと気を配れる人なんだなと、リコは感心した。

 しかし、いくらいい男とは言え、今日あったばかりの男に送ってもらうと言うのは少し気が引けた。

 

「ゴメンナサイ。今日あったばかりだし。信用してないって訳じゃないんだけど・・・」

 リコは済まなそうに言った。

 

「そう?じゃあ・・・でも、駅までは結構暗いんじゃ」

 「大丈夫です。ここからは慣れてるから。また連絡下さい」

 和樹は心残りそうだったが、リコは和樹と別れ、駅に向かっていった。

 

慣れているとは言ったものの、店から駅までは風俗店などが並ぶ、ちょっと物騒なところを通らねばならなかった。正直、かなり不安はあった。

 

「やっぱり・・・一緒に来てもらえば良かったかな・・・」今更ながらリコは後悔し始めた。

 

「ねえ、彼女一人?」突然、酔っ払った男がリコに声をかけてきた。


「あ・・・」

 

(まずい、どうしよう!)

 とうとう、恐れていた事が起きた。