素人恋愛小説RISK -2ページ目

第21話

「尾藤君・・・?」慎也の裸の背中を見つめるリコ。

「わりぃ、朝から・・・」慎也は済まなそうにつぶやいた。


「俺の連絡先、まだ教えてなかったっけな・・・」慎也は話題を変えようとそう言った。

「じゃあ、あたしの携帯も・・・」

「いいよ、非通知設定になってないなら、電話番号出るだろ?」


帰りは慎也にバイクでアパートまで送ってもらった。


慎也とこんな関係になってしまった以上、和樹にいつまでも黙っているわけにいかない。和樹にはきちんと事実を話そうと思った。

しかし、どうやって言えばいいか・・・。

その時、リコの携帯電話が鳴った。

「もしもし」

「リコ?元気?」

聞きなれた女性の声が聞こえてきた。

「ママ・・・!」

今は、離れて住んでいる母からだった。

「最近連絡してこないけれど、一人暮らしは大丈夫なの?」

「うん、大丈夫よ、ゴメン。ママは元気?」

「ええ・・・。実はね、貴方に良いお話があるってお父さんが言っているの・・・」

「いい話し?」リコは少し嫌な予感がした。

「そんな、急に。私まだ結婚するきなんて・・・」

「お見合い話って程じゃないのよ。でもお父さんが是非にっていうから、お会いするだけでも・・・」

「でも・・・」リコは少し戸惑った。

「お父さんの顔を立ててほしいのよ・・・」


リコの父は自分の勤めるところとは別の銀行の、重役職についている。

銀行業界にはかなり顔が聞き、今リコが行っている銀行も、実は父の口利きが合ったのは事実だった。

そのことは友人のサエには黙っている。

父は自分の仕事に自信があるせいもあり、言い出したら聞かない性分である。

自分がこうと思ったら周りを押し切ってしまう、押しの強い人である。

この件も、恐らく断ってみたところでしつこく母を通して電話が来るに違いない。


(どうせ会うだけだし・・・)そうすれば父も大概満足してくれるだろう。

「じゃあ、会ってみるだけなら・・・」



「見合い」の場所は、横浜中区の中心街、伊勢佐木町にあるフレンチの高級店だった。

港町横浜にふさわしく、開港当事は多くの外国の要人たちが出入りした店である。

その高級店の伝統を受け継ぎ、現在も財界、著名人の多くが利用する事で知られる

店であった。

店にふさわしく、セミフォーマルスタイルで会場についてリコはあっと驚いた。


「新村さん!」

向かいのテーブルに座っていたのは和樹だった。

「何だ、君だったのか!」

ネクタイをきちんとしめ、仕立ての良い一目で良品と分かるスーツに身を包んだ和樹は驚いてリコの方を見た。

「M銀行の本城部長が、君のお父さんだったなんて!」

「おお、遅かったなリコ。」父親がリコの方を見て手招きした。


席に近づくとボーイが椅子を引き、リコが座ろうとする時にイスを差し出した。

全員がそろうと早速前菜とワインが出されてきた。

「新村さんと知り合いなのか?」父親が驚いて尋ねた。

「知り合いと言うか、リコさんにはお付き合いしてもらっているんです」

「お付き合い?」

「はい、言うなれば僕の方が一目ボレしたという感じです」

和樹は少し照れながら、リコの父親に答えた。

「いやあ、それはそれは!なんて偶然!」

父親はすっかり上機嫌だった。

「新村君はな、来月独自の会社を起こす事になり、私の方に投資の話を持ってきたんだよ。

有名私立大卒業の一流IT企業出身。おまけに仕事も人柄もいい。彼ならやれると思って

二つ返事で投資をオーケーさせてもらった。まさか彼とお前が付き合いが会ったとは!」

「お父さん、僕もなんて言っていいか・・・本当に身に余ります。」

和樹は礼儀正しく、父親に挨拶した。

「お前と新村さんが結婚する事になったら、私はこんな嬉しい事はない!」

「どうしたの?浮かない顔して」和樹に言われ、はっとなるリコ。

「ううん、何でもない」

「リコは少し大事に育て過ぎたところがあるから、男性の前だと緊張してしまうんだよ」と父親が言った。

リコは自分の本当の気持ちを父親と和樹に言う事が出来なかった。



第20話

リコはそのまま、慎也のマンションで夜を過ごしてしまった。

朝の光が差し込んで、リコは目を覚ました。昨夜慎也と激しく抱き合った事を思い出し、少し恥ずかしくなった。

いつもはそっけないくらいの慎也が、自分のうちに秘めた激しさを惜し気もなく、リコに注いだ事・・・。あの激しさをリコは忘れられないと思った。そして、そんな自分を誇らしくも思った。

慎也は既に先に起きて、コーヒーを沸かしているようだった。コーヒーの深い香りが部屋を包む・・・。

リコは初めて気がついたが、慎也の部屋は、彼の収入からすると場違いに広かった。

20畳近いリビングはベッドとテーブル、あとはバイクのパーツやメンテナンス用品のようなものが転がっているだけだった。

「起きた?」慎也がリコに声をかけた。

「あたし・・・」まだ裸同然の恥ずかしい格好と昨日のことを思い出してしまった。

「まだゆっくりしてていいよ。コーヒー飲むか?」

「うん・・・」


「ピンポーン」

慎也がリコにコーヒーの入ったマグカップを渡そうとした時、誰かが呼び鈴をならした。

いったいこんな朝早く誰が?

「誰?」リコは不審そうに尋ねた。

「いいよ、そこにいて」

慎也は上半身裸の、スエットを下にはいたまま玄関に出た。

「慎也、元気か?」

外から男の声がした。

ドア越しに見た感じではスーツ姿の、身なりのきちんとした中年男性という風であった。中年男の顔を見るなり、慎也の顔が曇った。

「おやじかよ?もうくんなって言っただろ?」慎也は声を荒げて中年男性に言った。

「あんなバイクショップはやめたらどうだ?私ならお前にはもっといい社会的地位を用意してやれる・・・」

「断るって言ったはずだ!帰れ!!」慎也は乱暴に玄関のドアを閉めた。そして、ふうっとため息をついた。

あの人が、慎也の父なのか?

慎也の過去はなにか訳ありそうだった・・・。




第19話

慎也は驚いてリコを見た。


「尾藤くん・・・私・・・このまま帰りたくない・・・!」


リコはとうとう言ってしまった。

慎也は信じられないといった顔をした。


この時、リコははっきり悟った。


自分は、慎也が好きだと・・・・。


「リコ・・・」慎也は低く小さくつぶやいた。


解こうとする慎也の腕をリコは力強く引きつけ、抱き寄せた。


「・・・・・」リコは真剣に慎也の顔を見詰めた。


もう、自分の気持ちにウソは付けなかった・・・・。


慎也自身も、もう自分を押さえる事に限界を感じていた。


驚いた表情は、次第に男の顔になっていった。そして、リコに掴まれている反対の手で、リコの腕を力強く掴み、見つめた。


これだけ強く、慎也に腕を掴まれても、リコは不思議と嫌な気持ちがしなかった。


リコは鋭く自分を見る慎也の顔を見つめた。


そして、慎也は激しく、リコに口付けをした。リコもまた慎也の唇を求めた。


二人は互いをきつく抱きしめあった。


リコにとって生まれて初めての、男とのキスだった・・・・。






その夜、リコは慎也のマンションに行き、二人は関係を持った。


互いに何一つまとわない姿になり、お互いを求め合う。


むさぼるようにリコの身体を求めてくる慎也は野生の雄そのものであった。


リコもまた、慎也の引き締まった肉体を惜しげなく求め、愛撫し、口付ける。


慎也の固いものがリコの名かに行こうとした時、リコは顔をしかめた。


「ゴメン、あたし、初めて・・・」


すると慎也は「ゆっくり、力抜いて・・・」とリコの髪の毛をなでながら、優しくささやいた。


少しずつ入って来る彼自身。「平気?」「うん・・」


リコの様子をうかがいながら慎重に慎也は進めていった。

痛みをさほど感じずに、根まで達すると、彼は突き上げた。


リコは初めて女としての気持ち良さを味わった気がした。


和樹に何も許していない自分が・・・・。


しかし、リコに後悔の念はなかった・・・・。

第18話

「暗くなったし、どっか店に入ろうか?あんたの好きなトコでいいよ」

と慎也が提案した。するとリコは、

「じゃあ、焼肉!」と答えた。

意外な答に慎也はぷっと噴出した。

「焼肉!?」

「へ・・・変・・・?」

リコは恥ずかしそうに聞いた。

慎也はくすくす笑った。

「アンタって、ホント面白い女だな・・・」




二人は近くの韓国料理店に行った。

慎也の話では店長やバイク仲間と良く来る店だそうである。

韓国料理なので野菜もたっぷり出てくるし、キムチも冷麺もあった。

暑い夏には韓国料理は食が進んだ。

「意外に食うんだな・・・」慎也はリコの食べっぷりに驚いた。

「そ・・そう?だって、美味しいんだもん・・・」リコはちょっと恥ずかしそうに答えた。それを見て慎也はクスッと笑って見せた。

慎也は辛味の強いビビン冷麺を頼んだ。この店は韓国人の駐在員も来るので、結構容赦なく辛いものを出してくる。


「平気なの?」驚くリコに慎也は「平気平気、楽勝!」などといって見せた。が、10秒もしないうちにぶっと噴出し水水と大騒ぎ仕出したので、リコはおかしくてたまらなかった。


「全然駄目じゃん!」「だって絶対食えると思ってさー!」顔を真っ赤にむせる慎也がおかしくてたまらなかった。


慎也とテーブルを囲んで一緒に食事をする時に、リコは和樹にはない幸せを感じていた。


すっかり満喫して、店を出る頃には10時を回っていた。

こんな時間まで慎也と居るのは、初めてだった。


「悪かったな、こんな遅くまで」

「ううん、楽しかった」リコは素直に答えた。

「カレシ、差し置いて?」慎也はイタズラっぽく言った。

「それは・・・」

「いいよ、わかってる。」慎也は笑顔で言った。


(確かに・・・和樹のこと断って、慎也と一緒にいるなんて・・・)

そんな自分がちょっと信じられなかった。


「家何処?送るよ」慎也が言った。


(もう、お別れ・・・?)


慎也にそう言われ、ふとリコは寂しさが突き上げてきた。


(私には新村くんがいる・・・でも・・・)


このまま慎也と別れるのが、急にイヤになってきた。


「どうした?」慎也は心配してリコの方を振りかえった。

するとリコは思わず、慎也の腕を取った。


第17話

慎也の仕事が終わるのを待ち、彼はリコ用にヘルメットをかぶらせた。


そして、仕事用のつなぎから、私服のジーンズ姿になり、自分の愛車である、通称ナナハンと呼ばれるホンダのCB750の後ろにリコを乗せた。


赤いオイルタンクのナナハンのボディーの美しさは、慎也に良く似合っていた。

力強いエンジン音を立てて、慎也はリコを乗せて大通りにバイクを走らせる。


バイクの後部に乗るのは初めてのリコだったが、風を切って走るのはとても気持ち良かった。いつもの日常生活では味わえない爽快さがリコを包んだ。


「バイクの後ろに乗ったの、初めて」リコは少し興奮気味に言った。

「疲れねえ?」

「ううん・・・気持ち良かった」そう言うリコに慎也は静かに微笑んだ。


連れてきてもらったのは、とある川のほとりだった。


慎也が行く方角には、美しい夕日があたりの景色をシルエットに包んでいた。

「わ・・・キレイ・・・」

リコは思わず声をあげた。

「あんた達がいるような、こじゃれたトコじゃネエかもしれないけど、ここから見る夕日が俺好きでさ・・・」

慎也は夕日を眺めた。

川辺には草が生い茂り、川にそって両側に樹木が植えられている。

「ずっと横浜に住んでいるけど、知らなかった。ここは緑が多いんだね。」

普段オフィス街にいるリコには新鮮な光景だった。

二人は暫く無言で夕日を眺めていた。


すると、ふとリコの携帯が鳴った。


和樹からだった。


「もしもし、リコちゃん?僕、和樹だけど。」

「新村君・・・」

慎也もリコの電話の主に気がついたようである。


「今日、これから会えない?」


リコは思わず慎也の視線を気にした。慎也もは不審そうにリコを見つめた。

「ゴメン、今日これから友達と会う約束しちゃったんだ」何とか明るくごまかした。

「そうか。わかった、またね」和樹はなにも疑わず、電話を切った。

「友達ね」

慎也はイタズラっぽく、リコに言った。

「そんな・・だって・・・」答に窮すると、

「いいよ、分かってるよ」と慎也はくすっと笑いながら答えた。

夕日も沈み、すっかり当たりは暗くなった。