9.三国時代以外の歴史人物が投影された好漢
ここまで『水滸伝』に登場する好漢の中で、三国志に登場する人物と共通する要素が見られる事例を確認しました。さらに『水滸伝』の好漢には、三国時代以外の人物と共通する要素が見られる場合があります。簡単ではありますが、以下にまとめます。
(宋江)
・北宋時代に山東で反乱を起こした宋江がモデルとされる
・モデルの宋江は名前だけでなく、反乱を起こした時代と場所が、水滸伝における梁山泊と一致している
(呼延灼)
・呼延灼は「河東の名将たりし呼延賛の嫡流の子孫」とされ、武器は「二本の銅の鞭」(※2)
・呼延賛は北宋建国時の人物で、呼延灼と同じ鞭の使い手
(花栄)
・花栄のあだ名は「小李広」で、弓の名手である
・「小李広」は前漢時代の李広になぞらえており、花栄と同じく弓の名手
(柴進)
・柴進は「大周国柴世宗陛下嫡流の御子孫」とされる(※3)
・世宗は後周の第2代皇帝柴栄の廟号で、五代一の名君と言われている
(楊志)
・楊志は「三代武将の家、五侯楊令公の孫」とされる(※4)
・楊令公とは、五代十国から北宋頃の武人楊業のことである
(史進)
・宋の時代に反乱を起こした史斌がモデルとされる
(張順)
・水滸伝の物語より後の時代、南宋の武将である張順がモデルとされる
(参考:歴史人物が投影された梁山泊の好漢が持つ共通性(九・同じ名前とあだ名))
(孫立、孫新)
・孫立のあだ名は「病尉遅」で、鞭と槍を使う
・孫新のあだ名は「小尉遅」で、兄である孫立から学んだ鞭と槍を使う
・2人のあだ名に共通する「尉遅」は、唐の凌煙閣二十四功臣の一人である尉遅敬徳(尉遅恭)になぞらえている
・尉遅敬徳は孫立、孫新と同じ鉄鞭を使い、後世信仰の対象にまでなった人物
(郭盛)
・郭盛のあだ名は「賽仁貴」で、白い装束をまとい、白い馬に乗っている
・「仁貴」は唐初期の名将薛仁貴を指し、白い装束で高句麗軍と戦ったとされる
(周通)
・あだ名は「小覇王」
・「小覇王」は、秦滅亡後に劉邦と争った項羽が号した「覇王」に由来し、項羽になぞらえている
・『三国志演義』では孫策も項羽になぞらえ「小覇王」と呼ばれており、周通のあだ名と同じである
・「項羽にたとえられた孫策のあだ名を引き継いだ周通」より、「孫策と同様、項羽にたとえられた周通」の方が自然に感じられ、項羽になぞらえた好漢として扱う
(参考:歴史人物が投影された梁山泊の好漢が持つ共通性(九・同じ名前とあだ名))
この一回の内、
反乱を起こした人物をモデルにしている好漢二名
宋江 史進
武人の後裔またはモデルにしている好漢八名
呼延灼 花栄 楊志 張順 孫立 孫新 郭盛 周通
皇帝の後裔である好漢一名
柴進
「歴史人物が投影された梁山泊の好漢が持つ共通性(十二・好漢の生存率 前編)」に続く
(関連ブログ)
「歴史人物が投影された梁山泊の好漢が持つ共通性(一・はじめに)」
「歴史人物が投影された梁山泊の好漢が持つ共通性(二・諸葛亮の投影)」
「歴史人物が投影された梁山泊の好漢が持つ共通性(三・関羽の投影 前編)」
「歴史人物が投影された梁山泊の好漢が持つ共通性(四・関羽の投影 後編)」
「歴史人物が投影された梁山泊の好漢が持つ共通性(五・張飛の投影 前編)」
「歴史人物が投影された梁山泊の好漢が持つ共通性(六・張飛の投影 後編)」
「歴史人物が投影された梁山泊の好漢が持つ共通性(七・関索の投影)」
「歴史人物が投影された梁山泊の好漢が持つ共通性(八・呂布の投影)」
「歴史人物が投影された梁山泊の好漢が持つ共通性(九・同じ名前とあだ名)」
「歴史人物が投影された梁山泊の好漢が持つ共通性(十・小括)」前回
「歴史人物が投影された梁山泊の好漢が持つ共通性(十一・三国時代以外の歴史人物の投影)」本ブログ
「歴史人物が投影された梁山泊の好漢が持つ共通性(十二・好漢の生存率 前編)」次回(続き)
(※1)
本稿ならびに一連の記事「歴史人物が投影された梁山泊の好漢が持つ共通性」において、「好漢」は36の天罡星[天コウ星]、72の地煞星[地サツ星]を宿星とする108人を指します。
(※2~4)
岩波文庫『完訳水滸伝』より抜粋、要約しています
2 巻の54/3 巻の9/4 巻の12